SONY TC-K555 の修理・オーバーホール

 

 今回は1981年製のSONY TC-K555のご紹介です。

 

 独立懸架型のS&F(センダスト・フェライト)ヘッドを搭載しています。後継の555ESから搭載されるレーザーアモルファスヘッドより、耐摩耗性に優れています。ノーマル・クローム・メタルだけでなく、フェリクロームにも対応しています。しかしバイアス調整はノーマルのみ可能という仕様となっています。ここが最高峰のTC-K777と差別を図った部分でしょうか。キャプスタンには、コンパクトなブラシレス方式である、BSLモーターを使用しています。

 

 さて、メンテナンスへ入っていきます。始めに作業前の動作確認を行います。通電、音声出力は正常でした。しかしメカが固着しているようで、再生が出来ませんでした。仮に再生出来たとしても、少なからずグリースの固着を起こしていますし、製造から36年経過していることもあって、メンテナンスは必須になります。私用の777と同い年ですね。

 

 ヘッド部分です。長らく使っていないとこんな状態になっているのが通常です。

 

 メカを降ろすため、順番に部品を取り外していきます。TC-K555の場合、部品の取り外しは比較的簡単です。メカだけはケーブル類を上手く処理する必要があります。

 

 システムコントロール基板の固定を外し、ケーブルを抜きやすいように準備しておきます。

 

 本体を縦にして、本体底部からケーブルを抜きます。BSLモーター用、検出スイッチ用、モーター・ソレノイド用の3本です。

 

 再生ヘッドのケーブルは、本体右側の再生アンプ基板に繋がっています。

 

 録音ヘッドと消去ヘッドは、分かりにくいですが本体中央の奥側にあります。

 

 ケーブルが全て抜くと、いよいよメカの取り外しになります。メカを固定しているネジ(上部2つ、底部2つ)を外します。ここでメカを降ろす際のポイントは画像に見えている黄色のテープが巻かれたソレノイドです。これを手で下げた状態にしながら、メカを奥側へスライドさせます。言い換えると、ヘッドを上げた状態で取り外すということですが、ヘッドが本体の枠組みに干渉するのを避けるためです。

 

 このようにメカが外れます。あとは、上手に天井方向へ持ち上げてあげると取り外すことができます。

 

 メカの取り外しに成功しました。ちなみにこの方法は、同じ形のメカを採用している機種であれば殆ど同じ方法で可能です。

 

 それでは、本体は一旦別の場所に避けておき、メカのオーバーホールを行っていきます。

 

 まずはカセットホルダを取り外しました。シールドも一緒に外しておきます。

 

 続いて、背面からBSLモーターを外します。ここはプラスドライバーだけでなく、マイナスドライバーも必要になります。

 

 BSLモーターを外すと、キャプスタンを外すことができます。ベルトは現状でも問題なく使えますが、少しでも弾力が無くなっていれば劣化していると判断して新品に交換します。ベルトの劣化には、ゴムが硬化するパターンと、ゴムが伸びるパターンのどちらかが起きることが多いです。モーターも外すことになるため、半田を吸いとって基板も外しておきました。

 

 こちらはリール関係になります。リール台、リールモーター、リールブレーキ、バックテンション用ブレーキといった部品です。

 

 つづいて背面に回り、ヘッドを上下させるためのレバーとなる部品を外します。これをソレノイドで操作しヘッドを上下させることができます。初期のマイコン制御のメカではよく採られた設計かと思います。

 

その後、ピンチローラー、ヘッド、録音防止スイッチなど、残りの部品を外して分解完了です。ここから各部品を丁寧に清掃します。

 

 まずはメカの枠組みです。摺動部分には固まったグリースが付着しており、これを完全に取り除かなければ固着が取れません。また、シリコーンを塗っておくことで、潤滑のほか、埃を付着しにくくするなどの効果があります。

 

 ヘッドの部分、ピンチローラーが上下する軸の部分にグリースが付着しています。特にピンチローラーの部分は固着が激しくなりやすい部分です。

 

 こちらは、レバーの軸が来る部分にグリースが付着しています。ここも固着の原因となりやすい部分です。

 

 リール部分に関してはそれほど汚れる心配はありませんが、一通り拭き掃除を行います。モーターに関しては分解してブラシの清掃を行います。

 

 カセットホルダは、頻繁に開け閉めすることもあって埃が溜まります。また、オープン時にバネの力で飛び出さないようにゴムダンパーがありますが、こちらも劣化しており交換します。

 

 キャプスタンはなかなか質量のあるフライホイールです。左が供給側、右が巻取側のキャプスタンです。普段はキャプスタンの軸の部分を清掃しておくことが推奨されていますが、ベルトが掛かる部分にも劣化したゴム片が付着していることもあります。

 

 リールモーターの点検です。特にブラシと整流子が黒くなります。綿棒等にエタノールを付けて慎重に拭き取ります。ブラシは繊細な部分ですので、折り曲げたりしないように注意します。

 

 モーターの組み立ての時は、元の向きで取り付けます。最初にマーキングしておくと確実です。

 

 それでは、順番に組み立てをしていきます。まずはキャプスタンの軸が来るこちら部品を取り付けます。ネジは3か所です。

 

 ソレノイド、ヘッド用のレバーを取り付けました。ソレノイドは前面からネジ2つで固定されています。

 

 続いてヘッドの取付けです。先ほど取り外しの際の画像が撮影しておりませんでしたが、外す場合は中央のヘッドを固定している金属板を取り外すだけです。ただしその下にベアリングがありますので、紛失しないように注意します。取付けは逆の手順でOKですが、ベアリングを挟んだ状態で金属板を取り付ける時に少し力が要ります。

 

 ヘッド部分の下を覗くとベアリングが入っていることが確認できます。このベアリングが非常に重要です。しっかり左右に入っているか確認します。そして先ほどの金属板の下にも1つ入っています。計3つです。

 

 まだグリースが残っていました。エタノールもしくはパーツクリーナーを使えば落とせますが、樹脂・ゴムにも対応したものが推奨です。

 

 ピンチローラーは、スプリングによって常に天井方向に引っ張られた状態でセットされています。そしてヘッドブロックはキックバネによって常に下方向に押し付けている状態にします。この段階で、ヘッドとローラーを上下したときに弾力が効いていれば正常です。

 

 リール停止用のブレーキも交換しました。劣化すると滑りが多くなって惰性でリールが回ってしまうようになります。

 

 先にブレーキを取付け、その上からモーターを取り付けます。画像左にある緑のソレノイドがブレーキの操作を行います。

 

 リール台、バックテンション用ブレーキを取り付けました。クローズドループ方式では、必ず供給側にもテンションを掛ける必要があります。省略しても再生出来ますが、テープの走行が不安定になる原因になります。

 

 新しいベルトに張り換えて、キャプスタンとBSLモーターを取り付けます。

 

 BSLモーターについては、電解コンデンサ、オペアンプ、トランジスタを新品に交換しました。劣化するとワウ・フラッターが発生する恐れがあります。

 

 以上でメカの組み立ては完成ですが、この段階ではカセットホルダは取り付けません。取り付けるとテープパスの調整が出来なくなるためです。

 

 ミラーテープの使用が推奨されますが、残念ながら現在は入手困難であり、現在まで導入に至っていません。その代替策として、再生中に供給側のピンチローラーを手で下げてシングルキャプスタンの状態にした時の走行状態と、通常のクローズドループの状態で、音質が同じになるように調整する方法を採っています。

 

 ホワイトノイズを自己録再して周波数特性を測ってみると、ノーマルテープですが18kHzまでフラットに出ているようです。レベルはメーターで-20dBに設定しています。

 

 この部分のカバーと操作ボタンは、ただ爪で固定されているだけで簡単に外すことができます。ここのポジションやノイズリダクションのスイッチが接点不良を起こしますので清掃しました。

 

 メカ部分の調整が完了したら再度メカを降ろし、カセットホルダを取り付けて再び取り付けます。

 

 無事に組みあがり、メカ動作の検査も合格しました。しかし、長時間の再生動作中に突然停止しました。これはリールモーターに不調がある場合によくある現象で、ブラシが著しく汚れたりするとこの様な現象が起きることがあります。ですが先ほどモーターは点検したばかりです。

 

 こういった場合は寿命と判断して、モーターを新品に交換します。結果的に3回メカの脱着をすることになりました。カセットホルダを外しておかないとテープパスを調整できないのが難点です。ケーブルを上手く伸ばして基板に届かせれば、本体に搭載しなくても動作自体は出来たかもしれません。

 

 システムコントロールに後付けされたような半固定抵抗がありますが、こちらは再生時にリールの巻取り力を調整するものです。

 

 モーターを新品に交換したことで突然停止する現象は発生しなくなりました。ですがこの555、再生中何故か反対サイドの音が僅かに右chに混入してくる現象があります。レベルを測ると数dB程度でしたので、スピーカーで聴く分には問題ありませんが、ヘッドホンで聴くと聞こえます。

 

 以上で完成です。先ほどの音が混入する症状についてはサウンドサンプルを聴いていただいて、ご判断をお願いいたします。再生音自体は非常に良いと思います。個人的にTC-K777とはやはり音の性格が違うように感じますが、いかがでしょうか。

♪ TC-K555 サウンドサンプル ( 60sec , 16.4MB )

 キャビネットに錆などがありますが、フロントはなかなか綺麗な状態です。現在、ホームページで当商品を販売しております。詳しくは こちらをご覧ください。

 

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