ドルビーCには初期型と量産型がある。

カセットデッキのいろは 第54回
 

皆さん、こんにちは。西村音響店の西村です。

いつも音響店のブログをご覧くださり、ありがとうございます。


 

今回はノイズリダクションの中でも、ドルビーCについて深掘りしてみましょう。

1980年代のカセットデッキであれば、ドルビーCが搭載されていることが殆どです。ですが、同じドルビーCでも2種類存在するのはご存知ですか?

 

実は、ドルビーCが登場したばかりの1981~1982年ごろと、それ以降では、回路に大きな違いがあります。

 

 

初期型は、B+B=C。

 ドルビーCの登場から間もないころは、ドルビーB用のIC回路を2つ連結してドルビーCとしていました。

 B+B=Cと計算式で表現してみましたが、まさにその通りなんです。

 早速ですが、実際の回路の写真を見てみましょう。1982年のAKAI GX-F71です。

(画像をクリックすると拡大表示します)

 黄色で囲んでいる部分に、ドルビー用のICがあります。この機種は合計で8個です。

 再生用に4個、そしてGX-F71は3ヘッドデッキですので録音用にも4個、合計で8個ですね。

 さらに先ほどの、B+B=Cということから、左右の音声で2個ずつ必要ということがわかります。

 

 ノイズリダクションの回路だけでも、基板の面積をかなり使ってしまう構造になっているのが、この頃のデッキです。

 

 ドルビーCが登場したのは、1981年です。この年から、ドルビーCを新たに搭載したカセットデッキが各社から発売されました。

 それまでのドルビーBと比べて、ノイズ低減効果が2倍になり、ノーマルテープでも殆どノイズが無い状態になります。単純に考えれば、ドルビーBを2回掛けているということになるわけですね。

 

 

量産型は、B・C兼用のIC。

 ドルビーCの登場から年月が経つと、BとCが1個のICにまとまります

 実際に回路の写真を見てみましょう。1984年のSONY TC-K555ESⅡです。

 今度は、ICが4個しかありませんね。

 内訳は、再生用に2個、録音用に2個の、計4個です。
 
 

 BとCを兼用できたことによって、回路がコンパクトになっています。では、BとCの切り替えはどのようにしているかというと、ICの内部で行っています。

 OFF/B/Cを切り替える端子があり、この端子の電圧を変えることでモードが切り替わるという仕組みです。

 

 このように少ない個数のICで回路の構成ができるようなったことで、コストの削減にもつながったと思います。初期のころは、コスト削減のため、ドルビーCが省略されているモデルも存在しました。

 ですが、BとCの兼用ICが量産されたことにより、低価格のカセットデッキにもドルビーCが標準装備されることになったことでしょう。

 

 

最終型は、左右の信号まで1個のIC。

 初期型、量産型、最終型というのは、僕が勝手に読んでいるだけですが、実は量産型の次があります。

 ここでは最終型と呼ぶことにしましょう。

 

 この最終型は、ドルビー用ICの個数がさらに半分になります。つまり、2個です。

 実際に回路の例を見てみましょう。1995年のSONY TC-KA3ESです。

 たった2個しか使われていません。

この機種はドルビーSも搭載されていますが、ドルビーSは別な回路が必要ですので、ここでは数えないことにします。

 ということは、再生用と録音用にそれぞれある1個のICで、左右両方の信号を処理できてしまうというわけです。半導体技術の進歩は恐ろしいですね。

 

3つの世代間でやはり誤差はあるのか

 「ドルビーCは他のデッキでは上手くされない。互換性がとれない。」などという印象があります。

 

 録音する曲のジャンルにもよりますが、基本的には世代が離れると、互換性がとりにくくなります。

 どうやらカセットデッキにも、世代間ギャップというものがあるようです。

 

 互換性がとれない状態ですと、音が少し籠ったり、音の余韻が消されて聞き苦しい音になったりします。オーディオ用語でいうと、「ハイ落ち」と「ブリージング(息継ぎ)」です。

 

 このような現象が発生しやすいのがドルビーCの特徴で、録音したデッキと違うデッキで再生しようとすると難しい部分があります。

 解決方法としては、録音したデッキで再生する、ノイズ低減効果は薄くなるがドルビーBを使う、という手法があります。

 

 究極は、ノイズリダクション無しです。これが一番汎用性が高いでしょう。

 ノイズリダクションの精度は、どうしてもデッキの調整状態や、回路の差異に依存してしまいます。

 

 

まとめ

 今回は、3世代のドルビーCについて、お話ししてまいりました。

 カセットテープのヒスノイズを減らす量が増えるほど、処理が複雑になります。それに従って、互換性がとれず音がおかしくなる、という現象も顕著になってしまいます。

 

 そのような事もあって、今さら考えるようなテーマではありませんが、ノイズリダクションを使うべきか否か。使うのであれば、どのタイプを使うのか。

 それぞれ意見や方針があると思います。

 

 僕は、多種多様なデッキで再生するということが多いので、ドルビーBが主体です。ただ、ハイポジやメタルを使うのであれば、OFFが良さそうです。ハイポジは元々ノイズが少ない、メタルは録音レベルを大きく取れる、といこともあります。ですから、ノイズリダクションはノーマル用といった感じです。

 

 皆さんは、どのようにノイズリダクションを活用していますか?あるいは活用していましたか?

 時間がありましたら、少し教えていただけると嬉しいです。

 

 最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

 

 

カセットテープ再生中に取出しボタンを押すとノイズが入るかも…

 

どうもこんにちは、こんばんは。西村音響店の西村です。

音響店のブログをご覧くださり、ありがとうございます。


 

今回の話題は、当たり前の事かもしれません。

 

皆さんは、カセットテープを取り出すときは、必ず停止してから取り出しますよね。

が、もし録音or再生中に取出しボタンを押してしまったら…というテーマでお話しします。

 

どうなるのかというと、

  • 扉がロックされておらず、開いてしまう。
  • ノイズが入ってしまう。

の2種類があります。

 

 

取出しボタンがロックされておらず、
開いてしまう。

1970年後半ごろの機種には、再生中も取出しボタンがロックされないものが存在します。

カセットデッキの中でも、扉の開け閉めが手動のタイプは、再生中に取出しボタンを物理的にロックするものが多いです。このようなデッキは、押そうとしても押せません。


 

では、ロックされないタイプのデッキは、一体どのようなものでしょうか。

例えば、Lo-D D-E90。この機種は、再生中もロックされていません。



 

このようなデッキは、マイコンを搭載した初期のデッキに多く存在します。

マイコン搭載のデッキは、ボタンがロックされない代わりに扉の状態を検知するスイッチが付いています。開いている時は操作を受け付ず、ボタンを押しても反応しません。また、扉が開いた状態になると、即座に停止状態にする動作をします。

つまり、再生中にも即座にテープを取り出すことが可能なのです。

ですが、ロックされていないので、例えば、一生に一度しかないラジオ番組を録音している最中に誤って取出しボタンを押したらどうなるでしょうか?

恐らく、悲惨な事になるでしょう(苦笑)


 

さて、ここでなぜロック機構が付いていなかったのか、考察してみます。

鍵盤状のレバーではなく、マイコンを組み込んで小さなボタンで操作するようになったのが、1970年代後半です。

元々、鍵盤レバーで操作するタイプは、再生中はヘッドが上がっているため、取り出そうと思っても物理的に取り出せません。したがって、ロック機構は必要ありません。

そしてマイコンを搭載したカセットデッキが登場するのですが、なぜかロック機構が付いていないデッキが発売されました。

 

なぜこのような経緯になっているのか、僕もあまり見当がつきません。

もともとカセットデッキには取出しボタンのロック機構が無かったので、マイコンを搭載した初期の頃は想定外だったのかもしれません。

むしろ、素早くテープを取り出せる利点を追求したのかもしれません。

 

ただ、後になってロック機構が取り付けられたのは、誤って操作する危険があったからではないかと思います。録音が途中で切れてしまうのは誰しも怖いですね。

1本1,000円以上するメタルテープの録音は、出来れば一発で成功させたいと、皆さんお思いのはずです。

 

ノイズが入ってしまう。

この現象が少し厄介です。

再生中は取出しボタンがロックされているのですが、無理に押すと、「プツッ、プツッ」というクリックノイズが混入することがあります。

この原因は、テープのポジションを自動で切り替えるための検出用スイッチが関係しています。

1980年代に入って、カセットテープにある穴の数から、ノーマル・ハイポジ・メタルを自動で切り替えるものが登場しました。いわゆる、オートテープセレクターです。煩わしい操作が減って、利便性が非常によくなりました。

 

しかし、再生中に何らかによってポジション選択が変わってしまうと、ノイズを発します。考えられる原因としては2つです。

 

  • スイッチの接点から電磁波が出て、磁気ヘッドを経由して混入する。
  • 回路が切り替わる瞬間に、電圧の変動で混入する。

 

実際にその現象を再現させてみました。

 

 

しかも厄介なことに、再生中にも関わらずノイズがテープに記録されてしまいます。録音状態ではなく、再生中です。

これがもし、某アルミダイキャストのメタルテープだったり、某全身セラミックのメタルテープだったりしたら…

またまた悲惨な事になりそうです(苦笑)

 

さいごに

今回は、カセットデッキのイジェクト(取出し)についてのテーマでした。

再生はイジェクトボタンを押さない。

当たり前のことですが、かといって、ロックされているから大丈夫と油断するのは禁物です。

必ずしもすべてのカセットデッキに当てはまる事ではありませんが、中には痛い目にあうデッキもあります。

 

最も確実なのは、電動開閉のパワーローディングです。

しっかり停止状態になってから扉が開くので安全ですし、録音中はボタンが反応しないという仕様なら完璧です。

でもなぜか、早送り・巻戻しのボタンは録音中も反応するので、僕としては大丈夫かな?と感じるところです。録音が途切れるのは痛手ですからね。

 

最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

 

ノイズ混入を動画で解説しています。