SONY ベータマックス SL-HF507の修理

 

 今回は、SONYベータマックスのSL-HF507をご紹介します。SL-HF507は、Beta-Hifiを搭載したラインナップの中でもベーシックなクラスにあたるデッキです。1987年製のデッキになります。

 

 状態が悪く殆どボロボロな状態です。かなりの長期間、恐らく屋外の倉庫で眠っていたような様子です。

 


 テープが閉じこもっています。テープにもびっしりカビが生えており、放置期間は数年どころではなさそうです。

 


 まずは手動でテープを取り出します。ソレノイドを手で吸引させた状態にし、コックドベルトを手で送ってテープを出します。

 


 もの凄い埃(ほこり)です。この状態では、メカ部分に埃が混入していると予想されます。そうなるとメカの動作にも余計な負荷がかかり、部品などを痛めやすくする恐れがあります。

 


 電源部分にも埃がかなり溜まっています。特に大きな電力を扱う部分は熱が溜まりやすく、放熱が不十分になって故障するリスクもあるでしょう。このデッキはSTK5441レギュレータが故障しており通電が出来ませんでした。

 


 とにかく埃だらけのこちらのデッキですが、やはり分解して隅々まで掃除してやる必要があります。

 


 メカの取り外しに取り掛かります。始めにカセットホルダを取り外しておきます。

 


 次にフロントにある基板を外します。ネジを外して左へスライドすると取り外すことができます。基板を外すとメカを固定しているネジが1本ありますのでこれ外します。

 


 いずれ掃除をすることになる底部のパネルも外しておきました。こんなに埃が溜まっているのは初めてです。

 


 残り2本のネジがメカを固定していますので外しますが、その前にメカに繋がる配線を全部抜いておき結束も解いておきます。外しやすい状態にしてからネジを外します。

 


 ここからメカの分解に入っていきます。まずは回転ヘッドを取り外します。

 


 その次はリール台の取り外しです。このようにユニットごと外すことができます。


 全幅消去ヘッドのカビです。カビがある状態までになると、悲しいですが通常であればすぐ廃棄にしてしまうことでしょう。

 


 テープをスレッディングするモーター、ピンチローラーを圧着するソレノイドとその周辺の部品を取り外しました。

 


 こちらにある樹脂部品を外しました。テープを斜めにヘッドへ巻き付けるために必要な部品です。こちらの部品は一番割れやすい部品ですので慎重に取り扱います。さらにピンチローラー用のスライダギヤも取り外しておきました。

 


 固定ヘッド周辺の部品を取り外しました。固定ヘッドを外したことにより、後でアジマスの調整が必要になります。

 


 スレッディング用のギヤ、テープ終端検知用のセンサー、スレッディング完了検知用のスイッチを取り外しました。かなりすっきりしてきました。

 


 キャプスタンのユニットを取り外しました。上方向から3本のネジで固定されており、うち2本にはスプリングが入っています。キャプスタンの角度を調整することができます。

 


 裏側にバックテンション用のガイドポストを動かす部品があります。こちらを外して分解完了です。

 


 全部品を並べてみますと、凄く部品数が多いというわけではありませんが、特にテープが接触するガイドポストの周辺がとても細かい部分が多いです。それでは順に部品を清掃しながら、元通りに組み立てていきます。各部品にはシリコーンスプレーを塗り、埃が付きにくいように処理をします。

 






 日付の印字がありました。昭和62年5月15日とありますので、1987年製で間違いなさそうです。


 リール台、リールモーターの部分は元はこの様な状態ですが、

 


 全て部品を取り外し洗浄剤で清掃すると、このようにピカピカになります。見違えるように綺麗になりました。滑りも良くなり、ストレスのない動きを取り戻すことができます。

 


 回転ヘッドにもカビが付着していましたが、

 


 拭き取って綺麗な状態になりました。お気づきかもしれませんが、ネジ皿に掛かれた番号は取り外した部分と順番を示しています。このようにすることで、特に細かい部品やネジの厳重な管理が行えるようにしています。

 


 摺動する部分にはシリコーングリースを塗り、滑らかに動くようにします。汚れが付着していた部分についても綺麗な状態にしました。

 


 回転ヘッド以外の部品が組みあがりました。先ほど取り外しの時は回転ヘッドを一緒に取り外しましたが、取付けの際はメカを先に固定してから回転ヘッドを取り付けます。先にヘッドを取り付けてからでも問題なくメカの取付けができます。


 電源部分は正常なものを流用しました。STK5441レギュレーターは故障が多いことでベータマックスの故障原因の一つでもあります。同部品は入手が出来ず、基本的には正常な物を移植する他はありません。しかし新しく回路を製作すれば電気的な修理として対応が可能になります。実用化に向けて開発予定ですが、現在は諸事情により滞っております。

 


 メカを取り付ける前に他の部分の清掃を済ませておきます。埃が付着しているのみで、しっかり拭き掃除をすると綺麗になります。

 


 メカを取り付け、配線も接続しました。ひとまずこの段階では仮付けの状態にしておきます。作業前と比べてかなり綺麗になりました。

 


 回転ヘッド、カセットホルダを取り付けて、メカが正常に動作するかを確認します。カセットホルダはこの後に整備を行いますので、まずメカの動作だけ確認しておきます。


スレッディングのテストです。しっかりメンテナンスをすると、ここまでスムーズな動作になります。

 


 続いてカセットホルダの整備になりますが、虫の死骸まで混入していました。

 


 カセットホルダも全て分解します。古いグリースが経年で硬化しているため全て拭き取って、新しいグリースを入れます。

 

 部品をアップで見てみると、ご覧のように汚い状態です。グリースが固まってくると当然のことながら、テープの出し入れがスムーズに出来なくなってしまいます。


 古いグリースを全て拭き取ると、このように新品のような状態に戻ります。

 


 先ほどの部分をアップで見てみると、一目瞭然かと思います。

 


 そして摺動部分とギヤにシリコーングリースを塗ります。シリコーングリースはブラスチック・ゴムにもダメージを与えず潤滑に使えます。

 


 カセットホルダの組み立てが終了し、タクトスイッチを新品に交換しました。取出しを押すと、テープリターンが押されたとマイコンが反応してしまう症状が発生していました。

 


 Beta-Hifi録音レベル用のボリュームが接点不良を起こしていたため、電子部品洗浄剤とエタノールで改善を図ります。

 


 底部のパネルの清掃ですが、直ぐに真っ黒になってしまうほど汚れが凄い状態です。


 拭き掃除が済むと少し光沢が出るようになりました。見えない部分もこのように綺麗にしておくことがデッキの状態を良くするためにも重要です。

 


 テープのスレッディングもスムーズに行えるようになりました。ヘッドの回転もOKです。

 


 基板に積もった埃も取り除きました。一番上のシステムコントロール基板だけでなく、下にある音声用、映像用の基板にも埃が積もっていました。廃棄物となってもおかしくない状態だったのが、綺麗な状態になって復活しました。外装だけは錆びついていて補修が厳しいですが、特に機械的な部分だけは徹底的にメンテナンスをしておきたいところです。

 


 無事に再生が出来るようになりました。外装はやはり難ありですが、バリバリ動く状態にまで復活させることができました。外装はぼろくても、動きは新品に近い状態と思います。

 ベータマックスについても、カセットデッキと同様に電気系のメンテナンスを行えるように準備を進めております。使われている電子部品を機種ごとに調査している段階です。とても部品数が多いですが、出来るだけ作業期間1カ月程度で対応できるようにしたいと思っております。
 

SONY TC-K555 の修理・オーバーホール

 

 今回は1981年製のSONY TC-K555のご紹介です。

 

 独立懸架型のS&F(センダスト・フェライト)ヘッドを搭載しています。後継の555ESから搭載されるレーザーアモルファスヘッドより、耐摩耗性に優れています。ノーマル・クローム・メタルだけでなく、フェリクロームにも対応しています。しかしバイアス調整はノーマルのみ可能という仕様となっています。ここが最高峰のTC-K777と差別を図った部分でしょうか。キャプスタンには、コンパクトなブラシレス方式である、BSLモーターを使用しています。

 

 さて、メンテナンスへ入っていきます。始めに作業前の動作確認を行います。通電、音声出力は正常でした。しかしメカが固着しているようで、再生が出来ませんでした。仮に再生出来たとしても、少なからずグリースの固着を起こしていますし、製造から36年経過していることもあって、メンテナンスは必須になります。私用の777と同い年ですね。

 

 ヘッド部分です。長らく使っていないとこんな状態になっているのが通常です。

 

 メカを降ろすため、順番に部品を取り外していきます。TC-K555の場合、部品の取り外しは比較的簡単です。メカだけはケーブル類を上手く処理する必要があります。

 

 システムコントロール基板の固定を外し、ケーブルを抜きやすいように準備しておきます。

 

 本体を縦にして、本体底部からケーブルを抜きます。BSLモーター用、検出スイッチ用、モーター・ソレノイド用の3本です。

 

 再生ヘッドのケーブルは、本体右側の再生アンプ基板に繋がっています。

 

 録音ヘッドと消去ヘッドは、分かりにくいですが本体中央の奥側にあります。

 

 ケーブルが全て抜くと、いよいよメカの取り外しになります。メカを固定しているネジ(上部2つ、底部2つ)を外します。ここでメカを降ろす際のポイントは画像に見えている黄色のテープが巻かれたソレノイドです。これを手で下げた状態にしながら、メカを奥側へスライドさせます。言い換えると、ヘッドを上げた状態で取り外すということですが、ヘッドが本体の枠組みに干渉するのを避けるためです。

 

 このようにメカが外れます。あとは、上手に天井方向へ持ち上げてあげると取り外すことができます。

 

 メカの取り外しに成功しました。ちなみにこの方法は、同じ形のメカを採用している機種であれば殆ど同じ方法で可能です。

 

 それでは、本体は一旦別の場所に避けておき、メカのオーバーホールを行っていきます。

 

 まずはカセットホルダを取り外しました。シールドも一緒に外しておきます。

 

 続いて、背面からBSLモーターを外します。ここはプラスドライバーだけでなく、マイナスドライバーも必要になります。

 

 BSLモーターを外すと、キャプスタンを外すことができます。ベルトは現状でも問題なく使えますが、少しでも弾力が無くなっていれば劣化していると判断して新品に交換します。ベルトの劣化には、ゴムが硬化するパターンと、ゴムが伸びるパターンのどちらかが起きることが多いです。モーターも外すことになるため、半田を吸いとって基板も外しておきました。

 

 こちらはリール関係になります。リール台、リールモーター、リールブレーキ、バックテンション用ブレーキといった部品です。

 

 つづいて背面に回り、ヘッドを上下させるためのレバーとなる部品を外します。これをソレノイドで操作しヘッドを上下させることができます。初期のマイコン制御のメカではよく採られた設計かと思います。

 

その後、ピンチローラー、ヘッド、録音防止スイッチなど、残りの部品を外して分解完了です。ここから各部品を丁寧に清掃します。

 

 まずはメカの枠組みです。摺動部分には固まったグリースが付着しており、これを完全に取り除かなければ固着が取れません。また、シリコーンを塗っておくことで、潤滑のほか、埃を付着しにくくするなどの効果があります。

 

 ヘッドの部分、ピンチローラーが上下する軸の部分にグリースが付着しています。特にピンチローラーの部分は固着が激しくなりやすい部分です。

 

 こちらは、レバーの軸が来る部分にグリースが付着しています。ここも固着の原因となりやすい部分です。

 

 リール部分に関してはそれほど汚れる心配はありませんが、一通り拭き掃除を行います。モーターに関しては分解してブラシの清掃を行います。

 

 カセットホルダは、頻繁に開け閉めすることもあって埃が溜まります。また、オープン時にバネの力で飛び出さないようにゴムダンパーがありますが、こちらも劣化しており交換します。

 

 キャプスタンはなかなか質量のあるフライホイールです。左が供給側、右が巻取側のキャプスタンです。普段はキャプスタンの軸の部分を清掃しておくことが推奨されていますが、ベルトが掛かる部分にも劣化したゴム片が付着していることもあります。

 

 リールモーターの点検です。特にブラシと整流子が黒くなります。綿棒等にエタノールを付けて慎重に拭き取ります。ブラシは繊細な部分ですので、折り曲げたりしないように注意します。

 

 モーターの組み立ての時は、元の向きで取り付けます。最初にマーキングしておくと確実です。

 

 それでは、順番に組み立てをしていきます。まずはキャプスタンの軸が来るこちら部品を取り付けます。ネジは3か所です。

 

 ソレノイド、ヘッド用のレバーを取り付けました。ソレノイドは前面からネジ2つで固定されています。

 

 続いてヘッドの取付けです。先ほど取り外しの際の画像が撮影しておりませんでしたが、外す場合は中央のヘッドを固定している金属板を取り外すだけです。ただしその下にベアリングがありますので、紛失しないように注意します。取付けは逆の手順でOKですが、ベアリングを挟んだ状態で金属板を取り付ける時に少し力が要ります。

 

 ヘッド部分の下を覗くとベアリングが入っていることが確認できます。このベアリングが非常に重要です。しっかり左右に入っているか確認します。そして先ほどの金属板の下にも1つ入っています。計3つです。

 

 まだグリースが残っていました。エタノールもしくはパーツクリーナーを使えば落とせますが、樹脂・ゴムにも対応したものが推奨です。

 

 ピンチローラーは、スプリングによって常に天井方向に引っ張られた状態でセットされています。そしてヘッドブロックはキックバネによって常に下方向に押し付けている状態にします。この段階で、ヘッドとローラーを上下したときに弾力が効いていれば正常です。

 

 リール停止用のブレーキも交換しました。劣化すると滑りが多くなって惰性でリールが回ってしまうようになります。

 

 先にブレーキを取付け、その上からモーターを取り付けます。画像左にある緑のソレノイドがブレーキの操作を行います。

 

 リール台、バックテンション用ブレーキを取り付けました。クローズドループ方式では、必ず供給側にもテンションを掛ける必要があります。省略しても再生出来ますが、テープの走行が不安定になる原因になります。

 

 新しいベルトに張り換えて、キャプスタンとBSLモーターを取り付けます。

 

 BSLモーターについては、電解コンデンサ、オペアンプ、トランジスタを新品に交換しました。劣化するとワウ・フラッターが発生する恐れがあります。

 

 以上でメカの組み立ては完成ですが、この段階ではカセットホルダは取り付けません。取り付けるとテープパスの調整が出来なくなるためです。

 

 ミラーテープの使用が推奨されますが、残念ながら現在は入手困難であり、現在まで導入に至っていません。その代替策として、再生中に供給側のピンチローラーを手で下げてシングルキャプスタンの状態にした時の走行状態と、通常のクローズドループの状態で、音質が同じになるように調整する方法を採っています。

 

 ホワイトノイズを自己録再して周波数特性を測ってみると、ノーマルテープですが18kHzまでフラットに出ているようです。レベルはメーターで-20dBに設定しています。

 

 この部分のカバーと操作ボタンは、ただ爪で固定されているだけで簡単に外すことができます。ここのポジションやノイズリダクションのスイッチが接点不良を起こしますので清掃しました。

 

 メカ部分の調整が完了したら再度メカを降ろし、カセットホルダを取り付けて再び取り付けます。

 

 無事に組みあがり、メカ動作の検査も合格しました。しかし、長時間の再生動作中に突然停止しました。これはリールモーターに不調がある場合によくある現象で、ブラシが著しく汚れたりするとこの様な現象が起きることがあります。ですが先ほどモーターは点検したばかりです。

 

 こういった場合は寿命と判断して、モーターを新品に交換します。結果的に3回メカの脱着をすることになりました。カセットホルダを外しておかないとテープパスを調整できないのが難点です。ケーブルを上手く伸ばして基板に届かせれば、本体に搭載しなくても動作自体は出来たかもしれません。

 

 システムコントロールに後付けされたような半固定抵抗がありますが、こちらは再生時にリールの巻取り力を調整するものです。

 

 モーターを新品に交換したことで突然停止する現象は発生しなくなりました。ですがこの555、再生中何故か反対サイドの音が僅かに右chに混入してくる現象があります。レベルを測ると数dB程度でしたので、スピーカーで聴く分には問題ありませんが、ヘッドホンで聴くと聞こえます。

 

 以上で完成です。先ほどの音が混入する症状についてはサウンドサンプルを聴いていただいて、ご判断をお願いいたします。再生音自体は非常に良いと思います。個人的にTC-K777とはやはり音の性格が違うように感じますが、いかがでしょうか。

♪ TC-K555 サウンドサンプル ( 60sec , 16.4MB )

 キャビネットに錆などがありますが、フロントはなかなか綺麗な状態です。現在、ホームページで当商品を販売しております。詳しくは こちらをご覧ください。