AKAI GX-F71

 

 
 1982年発売のアカイの3ヘッドカセットデッキです。1982年のデッキとはいえども、むしろ機能面では’90年代のデッキに勝っているところがあります。

この頃の赤井電機は、録音するときの調整(キャリブレーション)を自動にしたカセットデッキを多く発売していました。ボタンを押すだけで録音に使うテープの特性をデッキ自身が理解し、最適な調整をしてくれるという優れた機能です。これを「オートチューニング」と呼んだりしますが、残念ながら後の世代になっていくにつれて、この機能は搭載されなくなります。1986年のGX-93からは、オートチューニング機能が搭載されなくなりました。

 そのほかにも、曲をスキップと頭出しをする機能、ボタン一つで音をフェードアウトしてくれる機能が付いています。少しマニアックなところもあって、レベルメーターは、ピークレベルとVUを切り替えることが可能です。

 GX-F71のデザインは、銀色の薄型ボディが特徴で、操作ボタンも凹凸が少なく、横から眺めても非常にすっきりとしているのが見て取れます。ボリュームの操作つまみは、本体中央にあるカバーの中に隠れていて、表には大きなスイッチやボリュームがありません。

録音・再生ヘッドには、磨耗に非常に強いスーパーGXヘッドを搭載しています。このヘッドを使っているデッキは他にもありますが、30年以上経過しているにもかかわらず、すり減っているデッキはありません。

 当時最先端のオートチューニング機能と、3ヘッド方式のスーパーGXヘッドで、録音から再生まで万能にこなせる1台です。

 

 

 

メカニズムをぜんぶ分解するとこうなります。


 赤井電機の3ヘッドデッキ用のメカニズムです。テープを入れると、ヘッドがテープに接触した状態で待機して、すばやい再生動作を行う、独自のシステムになっています。実は、このメカニズムは途中で改良はされるもの、10年以上採用し続けられました。

 

オートテープセレクターの弱点?


 自動的にテープの種類(ノーマル・ハイポジ・メタル)を識別する、オートテープセレクターが付いています。前のモデルの実機をまだ見ていないので確証は持てませんが、恐らく1982年のGX-F91、F71、F51から付いた機能だと思います。先輩にあたるGX-F80は付いていませんでした。ただ、このオートセレクターの検出スイッチが経年で接触不良を起こすケースが多いです。もし、テープポジションの表示がピカピカ点滅している場合は、接触不良の可能性が高いでしょう。接点をエタノールや洗浄剤で、接点をきれいに掃除することで解決できます。ヤスリ掛けまでする必要はありません。

 

ボタン交換だけでも難易度は高め。


 ボタンが古くなると、押しても反応しにくくなることがあります。これはボタンを押したときにながれる電流が流れにくくなり、ボタンを押したとデッキが認識できにくくなるためです。これを予防するために、ボタンも新品に交換します。

 ただ、先ほどの配線の複雑さをご紹介しましたが、この基板を外すだけでも大変です。例えば、平成に入ってからの機種は、全部の基板を取り外すのに30~60分程度で済みますが、GX-F71は少なくとも倍の時間は掛かる気がします。

 

GX-F71のスーパーGXヘッド


 スーパーGXヘッドのGXは、Glass Xtalの略で、訳すとガラスの結晶です。このヘッドの長所は摩耗に非常に強いことで、製造から36年が経過しているにもかかわらず、ヘッド表面にすり減った痕跡がありません。

詳しい構造は分かりませんが、金属素材としてはフェライトがベースになっていて、表面にガラスのコーティングがされているといった具合でよいかと思います。フェライトは高周波の電流を流しても損失が少ないという特徴があって、高音域の信号もしっかり拾えることから、オーディオ用のヘッドには適しています。もともとフェライトはすり減りにくいですが、そこにガラスコーティングまで行って、ほぼ減らないヘッドを実現していると思います。

 

 ヘッドをきれいにする前はこのような状態でした。ジャンク品ではよく見かける光景です。これを2種類のヘッドクリーナーで掃除にすると、先ほどの画像のように輝いたスーパーGXヘッドになります。

 

マーキングしないと大変なことになります。


 GX-F71の最も厄介なところといってもよいかもしれません。修理をするときには、メカを本体から取り外さなくてはなりませんが、実はこれが難関です。画像を見ていただくと、コネクターが使われていないのです。つまり、1本1本、はんだを溶かして基板から抜いていかなくてはなりません。

 磁気ヘッドだけはコネクターが付いていますが、そのほかの配線は半田付けです。1本1本外すことになるので、どこに接続されていたか分かるように印をつけておきます。僕はこれをマーキングと呼んでいますが、これを忘れると元に戻せなくなります。もし忘れてしまった場合は、同じGX-F71をもう一台用意して、どの線がどこに接続されているかを確認しながら、戻していくしかありません。

 

 先ほどはメカの取り外しで行うマーキングでしたが、今度は電解コンデンサーを交換するときに基板を取り外すシーンです。こちらは、コネクターが使われていますが、本数も非常に多いため、やはりマーキングが必要です。メカの取り外しでは、A,B,C…と印をつけて、基板を取り外すときは、壱,弐,参…と漢数字を使いました。

 

アカイ3ヘッド用メカの初期型?


 メカニズムの基本構造は最終モデルまで踏襲されるのですが、モデルごとに見ていくと、わずかに違いがあります。GX-F71は、このタイプのメカを初採用したということで初期型と分類できます。例えば、上の写真を矢印の部分、ここは左側のリールですが、右側のリールと比べてみると形が違うのが分かるでしょうか。左は丸の形、右は凹凸の形をしています。

 

 1987年のGX-Z9000と比較してみましょう。こちらは左側のリールにも凹凸がつきました。この凹凸というのは、リールの回転をセンサーに認識させるためにあります。GX-F71ではセンサーは右側しかなかったのですが、GX-Z9000では両側にセンサーを設けているので、凹凸は両側とも必要になります。