A&D GX-Z7100


 

 
 1988年、GX-Z7000の薄型デザインから一転して、厚みのある堅牢な容姿へとモデルチェンジしたのが、このGX-Z7100です。

 新たな機能として、録音レベル調整とバイアス調整を補助するキャリブレーション機能、16曲までの複数の曲を一度にスキップできる機能、1/2の速度で再生する機能、A地点とB地点を指定して区間再生する機能などの、便利な機能がされました。録音/再生ヘッドには、引き続き摩耗に非常に強いスーパーGXヘッドが採用されています。

 高さ15cmのデザインへと進化したのは、電子回路基板1枚1枚に個室を設けるレイアウトを採用したためで、「セパレートブロック・コンストラクション」といいます。特にアンプ部分はむき出し状態だと、外部から電磁波の影響を受けてノイズが混入します。身近なものでは蛍光灯が代表的です。そこでGX-Z7100からは、基板を密室に閉じ込めることで、外部からのノイズを抑制する工夫をしています。

 GX-Z7100と、前のGX-Z7000でどちらが良いですか?という場合は、薄型デザインが好きという方はGX-Z7000が、多機能高性能が良いという方はGX-Z7100がおススメです。

 一つ上の機種にあたるGX-Z9100は、キャプスタンの回転にクォーツロックを使用しているほか、基板の個室の仕切りを銅メッキにして、ノイズの抑制効果を高める工夫がされています。アンプも7100よりイイ回路になっており、ワンランク上の音質です。さらに、横に光沢のある木の板(サイドウッド)が付属し、高級カセットデッキに相応しいデザインになっています。

※スーパーGXヘッド = 摩耗にとても強いヘッドで、中古のデッキでも磨り減っているデッキは見かけません。
※クォーツロック = 常に正確な速度でテープを送ることができ、速度がずれたまま録音される心配がありません。

 

 

メカニズムをぜんぶ分解するとこうなります。


 この構造になっているのはGX-Z7100だけではありません。実は1982年発売のモデルから採用されていて、ヘッドとテープが接した状態で待機することにより、再生ボタンを押すと静かに素早く再生されるという、独特のシステムです。

 また、共通であることを利用すれば、何か部品が壊れていたときなどのトラブルがあっても、部品を移し替えること簡単にできるので、修理が不可能になる心配も少なくなります。

 

メカ部品を綺麗に洗います。


 ご依頼をいただいたデッキは、先ほどのように分解します。部品には、動きを良くするために潤滑油となるグリースが塗られており、これは多くのカセットデッキに当てはまりますが、年数がたつと、油は硬くなってしまいます。硬くなった油は動きを良くするための役割は、もう果たせませんので、洗浄してきれいに落とします。ぴかぴかの状態にしてから、新しい潤滑油・グリースを入れていくと、メンテナンスをする前の重たい動きが解消されて新品に近い動きを取り戻すことができます。これが音響店で徹底している「イチから組み上げる」修理です。

 

GX-Z7100のシャーシ


 上位機種のGX-Z9100で採用されている銅メッキシャーシが省略されていますので、普通の色のシャーシになっています。それでも、基板1枚1枚に個室を与える構造によって、先代のGX-Z7000よりも外部からのノイズは受けにくくなっています。カセットデッキは、磁気ヘッドで拾った微弱な信号を扱うので、ノイズ源となる電磁波は大敵です。ものによっては、携帯電話やスマートフォンの電波まで拾ってしまうこともあります。

 

こちらは上位機種のGX-Z9100のシャーシです。アンプが本体右側にあることから、右側だけ銅メッキになっています。また、写真にはありませんが、本体底部にあるカバーも銅メッキ仕様になります。

 

新たに追加されたスタビライザー


 GX-Z7100からは、扉(カセットホルダー)にカセットを抑えて、何らかで再生中にカセットが動いてしまうことを防ぐスタビライザーが装備されました。スタビライザーの無いデッキでは、カセットによって奥までしっかり装着されないこともあります。時には念を入れて手で扉をしっかり押え込む方もいらっしゃると思います。そこで、スタビライザーを装備したことにより、一発で奥まで装着させることができるようになりました。

 

GX-Z7100を下から覗いてみる。


 本体底部のフタを開けると、アンプの基板が姿を現します。これまでは天井方向に基板の表側がありましたが、GX-Z7100から逆さまに取り付けられています。基板と基板との間をつなぐ配線は、シャーシに開けられた小さな穴を通っていきます。少しややこしくなっていますが、ノイズ対策のためであれば複雑にせざるを得ません。

 

 GX-Z9100もレイアウトは大きく変わりませんが、シャーシが銅メッキ仕様になります。一見GX-Z9100は銅メッキをして差別化しただけに見えますが、実はアンプに差があります。

 

GX-Z7100とGX-Z9100の、アンプの差。


 再生ヘッドで拾った信号は、写真の部分に送られてくるわけですが、GX-Z7100とGX-Z9100では回路に使っている部品が違います。部品が違うのもありますし、そもそも回路も異なっています。GX-Z7100では、再生ヘッドの信号をオペアンプというICで増幅させる方法をとっていて、どちらかというと簡単な構成でコストも安いというメリットがあります。黄色の丸で囲んだ箇所にあるICが、再生ヘッドの信号を増幅するオペアンプです。


 一方でGX-Z9100は、再生ヘッドの信号の増幅にオペアンプを使っていません。正確に表現すると、1段目の増幅ではオペアンプを使っていないという形になるのですが、では何を使って増幅しているのかというと、FET(電界効果トランジスタ)です。ICではなく単体のトランジスタを使っているので、赤丸の部分のように、複雑そうな回路になっています。FETを使うと、入力インピーダンスを高く取ることができ、本当に微小な信号も取りこぼすことなく、僕たちの耳まで届けてくれます。ただし、GX-Z7100とは逆にコストが高いという欠点があり、FETを使ったアンプは低価格のカセットデッキでは採用されません。

※ 一般的なバイポーラトランジスタとFETは、広い意味ではどちらも同じトランジスタですが、構造は全く違うため、バイポーラトランジスタ=トランジスタ、電界効果トランジスタ=FETと呼んで区別します。