SONY TC-K555ESR

 

 1988年に登場した、3ヘッド方式のカセットデッキで、TC-K555ESXの後継モデルです。

 大幅な変更点はないものの、新たにサイドウッドが装着された点は、とても魅力です。ESXかESRを選ぶのであれば、やはりサイドウッドの有無で選ばれるのではないでしょうか。

 機能面もTC-K555ESXと変わりません。録音レベルとバイアスの調整だけではなく、録音イコライザーを低・中・高と3段階で切り替えできます。この3つが揃っていると、バイアス調整だけでは難しい癖のあるテープでも、難なく録音できるので非常に便利です。

 録音/再生ヘッドには引き続き、録音ヘッドと再生ヘッドが分離している独立懸架型のレーザーアモルファスヘッドを採用しています。音の輪郭がくっきり聞こえるので、楽器中心の曲にはよく合います。

 一つ下のモデルでもよければ、TC-K333ESRがラインアップされています。一部の機能が付いていないという部分がありますが、立派なサイドウッドだけはしっかり装備しています。テープの再生を中心に楽しむのでしたら、TC-K333ESRでも十分楽しめますし、お値打ちです。

 

 

よくある故障 <ヘッドが上がらず再生できない>


 ヘッドが上がらなくなって再生ができなくなる故障が多くあります。

 原因は、年月が経って固まってしまった潤滑用の油(グリース)です。これによって、ヘッドを上げ下げするレバーが動かなくなってしまい、ヘッドが上がらなくなるという仕組みです。この状態を固着しているとも呼んだりします。

 動くようにするには、固着をほどかなくてはなりません。そのためには、分解して部品を1つ1つ洗い、固まったグリースを落とします。安心して使えるようにするには、分解メンテナンスが欠かせません。
 

 

よくある不具合 <ボタンが間違って反応する>

 ボタンが古くなると、押したボタンと違うボタンが反応する症状が出ます。こうなったときは、新品に交換しましょう。

 ボタンは劣化しないと思ったら、実は何回も電気のON/OFFを繰り返しているうちに、ボタンの中にある接触部分が悪くなっていきます。ボタンを押した瞬間に目に見えない火花が散って、接触部分を徐々に劣化させていき、いつの間にか押しても電気が流れにくくなっている、というのがこの不具合のメカニズムです。

 幸いにもまだ同じ形のボタンが製造されているので、修理できます。

 

洗ってぴかぴかにしましょう。


 古いグリースをそのままにしておくと、硬化がさらに進んでしまう恐れがあるので、この機会にしっかり洗って落とします。綺麗な状態にしてから、新しいグリースを塗り直せば、再び動かなくなってしまう心配はありません。

 

 綺麗に洗浄しなくとも、スプレーの油を差すという方法もあります。しかし、古いグリースが残っているので再び固着する可能性があるので、その場しのぎの処置になってしまいます。やはり応急処置ではなく、しっかりとメンテナンスをするのであれば、洗浄したほうが安心です。

 

メカニズムをぜんぶ分解するとこうなります。


 一つ下のモデルであるTC-K333ESRと、全く一緒の構造です。

 全く一緒のことを利用すると、万が一部品が壊れていた場合に、双方で部品を移し替えることもできます。人間の手術でいう移植です。移植ができると、このままでは復活は難しいといったデッキも、復活する可能性が高くなります。カセットデッキを長生きさせるうえで、移植ができるかどうかは重要なポイントです。

 

故障ではないが、早送り・巻戻しがちょっと遅い?


 デッキに疲れがたまっているせいか、早送りや巻戻しに少し時間が掛かるようになっているものがあります。

 この症状も改善できます。原因は、再生ができない故障と同じ、グリースです。完全には固まっていないので辛うじて回ってはくれますが、硬くなったグリースが回転を邪魔してくるので、スピードが上がりません。

 これも、古いグリースを洗い流して、新しいグリースを塗ることで、巻戻しが再び快適になります。

 

基板までぜんぶ外すとこうなります。


 お預かり中は一時的にこのような状態になります。古くなった電解コンデンサーを交換するには、基板を取り外さなくてはなりません。

 せっかくこの状態になったのですから、中まできれいな状態にしてお客様へお返しします。

 

摩耗には少々弱いが、音質は一流のヘッド。


 TC-K555ESRの録音/再生ヘッドは、録音用と再生用が分離している、独立懸架構造のレーザーアモルファスヘッドです。TC-K555ESXから引き続き採用されています。

 愛好家の中では摩耗しやすいという評判で有名なヘッドですが、音質は非常に良く、20kHzまで鋭い音で鳴ってくれます。画像はお客様のTC-K555ESXですが、とても状態が良いです。もしこのような綺麗な状態でしたら、ぜひ大事にしていきましょう。

 後継である1989年のTC-K555ESGは、新しいヘッドに変更されるので音質も変わります。以降は新型のヘッドが使われていくのですが、新型ヘッドのほうがやや音の輪郭が丸くなっているように感じます。個人的な好みはあるにしても、サイドウッドと旧型のヘッドの組み合わせは、TC-K555ESRもしくはTC-K333ESRしか選択肢がありません。