SONY TC-K75


 

 

 1980年ごろの、3ヘッド方式のカセットデッキです。後継にはスリーセブンことTC-K777やTC-K555が登場するので、その先祖とも言えます。

 TC-K75の特徴的なところは、古い機種ながらキャリブレーション機能がついていることです。それだけではなく、録音レベルの調整(テープ感度の補正)は、左と右を独立して行えます。この機能は、同じ1980年に登場するTC-K777に受け継がれますが、残念ながらTC-K555には付いていません。

 録音用のカセットデッキというと、やはり良い音で録音できる機種が欲しいものです。特にキャリブレーション機能は、やはり欠かせないものではないでしょうか。TC-K75は、年季が入っていながらも、1990年台の高性能なカセットデッキについて行ける、そんな素晴らしい1台だと思います。

 


 

故障事例 <ヘッドが上がず再生できない>


 再生ボタンを押してもヘッドが上がらず、再生できないという故障がありました。

 原因は、単に固まってしまった油(グリース)かと思ったら違いました。原因は矢印の部分で、プラスチックが割れてしまっていたのです。多くの場合は、グリースが年月を経て徐々に固まっていき、やがて動かなくなって故障します。特に30年以上前のデッキにはとても多いです。分解してしっかり洗ってあげれば解決できますが、プラスチックの破損は補修するしか方法がありません。幸いにも、破片がデッキの中にありましたので、修理することができました。

 

 矢印の青っぽい部品が破片です。これがもし見つからなかったら、同じTC-K75から正常なメカを移さなければなりません。

 

TC-K75のベルトは4本。


 キャプスタン用に平らのベルトが2本、再生のときに使う小さいベルトが1本、そしてカウンター回転用に細長いベルトが1本の、合計4本です。

 どのベルトも欠かしてはいけませんが、少し気をつけたいのが再生に使うベルトです。このベルトだけは少し強めに掛ける必要があります。ベルトの張力を使って、リール台のふちに押し当てて回転させる仕組みになっているからです。掛け方が弱いと、空回りして再生中にテープを巻き取ることができません。この仕組みは、実はTC-K777でも使われています。

 

メカの動作は歯車を使うタイプ。

 TC-K75は、回転しているキャプスタンから動力を得て歯車を回し、ヘッドの作動などを行う仕組みです。

 何も操作していないときは、キャプスタンと歯車は離れています。再生や巻戻しなどのボタンを押すと、かみ合って「がっちゃん。」という音とともにメカが動きます。

 カセットデッキが動作する仕組みは多種多様です。歯車を使うものもあれば、使わないものもあります。ベルトを使うものもあれば、使わないものもあります。

 

2つのアイドラーギヤ


 モーターの回転をリールの回転に変える部品をアイドラーと呼びます。

 普通は1つだけで間に合いますが、工夫が凝らされたものだと2つにしている機種もあります。TC-K75もその仲間です。リール台とリール台の間にあるのが、早送りと巻戻しで使うアイドラー、右側にあるのが再生用のアイドラーです。

 単に用途を分けているのではありません。両者で何が違うかというと、動力源です。

 早送りと巻戻しの時は、専用のDCモーターから動力を得て高速でテープを巻き取ります。一方で再生のときは、キャプスタン用のモーターから動力を得てテープを巻き取ります。

 DCモーターは回転するとスパークノイズを発する特性があり、ケーブルや磁気ヘッドから混入してくることがあります。さらに回転が遅くなると大きな電流を流す特性もあって、ノイズをより増大させてしまいます。再生中がまさにこの状態です。その対策として動力源を変えることにより、この問題をクリアしているのです。

 4本のベルトについてのご紹介の中にある小さいベルトは、ここの再生用のアイドラーで使います。

 

磁気ヘッドの線は全部はんだ付けです。


 1980年初期のころであれば、配線のはんだ付けはまだまだ一般的です。

 ほかには、コネクタが一切なく1本1本基板から外していく作業を強いられるものもあります。1981年のTC-K555になると、コネクターの着脱だけで配線を扱えるようになります。最上位モデルのTC-K777は、消去ヘッドと録音ヘッドがコネクターの着脱で、再生ヘッドだけは何故かはんだ付けです。

 はんだを吸い取って線を外す前には、どこにどの線が接続されていたか、はっきり分かるように写真を撮っておきます。しっかりと写っているか、はんだごてを当てる前にもう一度確認です。

 

 TC-K75の再生ヘッドにつながるケーブルは、青矢印の部分に接続されています。

 ただ接続されているだけではありません。ノイズ混入を防ぐために、接続する部分をシールドとなる金属板で覆っています。シールドは、はんだ付けして固定されているだけですので、取り外しは簡単です。取り付けるときは、グランド(0ボルト)に接続されるようにはんだ付けします。

 

TC-K555に受け継がれるブラシレスモーター。


 キャプスタンの回転には、ブラシレスモーターを採用しています。モーター専用の電子回路が回転をコントロールするので、安定した回転をするモーターです。

 カセットデッキのグレードによって、キャプスタン用のモーターは変わります。安い機種では整流子とブラシのついたDCモーターで、コストが抑えられています。一方、高級な機種では、安定性がとても高いダイレクトドライブが多く使われています。その間をとったのが、TC-K75のキャプスタン用モーターです。BSLモーターとも呼びます。

 

磨耗に強く耳に優しいS&Fヘッド


 S&Fヘッドは音の輪郭がはっきり聞こえてくるような硬い音ではなく、滑らかでやわらかい音が特徴だと思います。

 S&Fというのは、センダストとフェライトの略で、両方の素材をバランスよく配合することで、磨耗に強くて音が良いヘッドに仕上げています。同じヘッドを搭載するTC-K777も似た音質です。