SONY TC-KA7ES

 

 1995年ごろに登場した、最上位モデルのカセットデッキです。

 TC-KA7ESの印象を漢字二文字で表すと、「豪華」でしょうか。まず本体を持ち上げたときの感触が違いました。本体の側面を分厚い金属で固めていて、冷たい感触があります。これだけでも「おっ、違うな。」と思わされました。ほかにも、他では見かけない金色のヘッドが搭載されており、ずば抜けた高級感に圧倒されました。

 音質は1980年のTC-K777を思い出すような音で、高音域まで透き通ってように感じました。それに加えて、厚みのある低音をミックスしており、聴いていて心地よい音です。

 デザインから音まで最高である分、人気が非常にあり高値で売買されています。5万円でもジャンク品すら買えないかもしれません。カセットデッキの人気ランキングを作ったら、間違いなく上位に入ってくると思います。

 皆さんが憧れを抱く1台ではないでしょうか。

 幸いにも、TC-KA7ESをご依頼くださったお客様のおかげで、生でその凄さを体感することができました。心から感謝しております。カセットデッキの持つ喜びがどういう事かを改めて学びました。

 

 

 

TC-KA7ESの証である金色ヘッド


 TC-KA7ESの録音/再生ヘッドは、画像の矢印の部分を見ていただくと、なんと金色です。

 説明によると、金メッキがされているそうで、他では見かけません。ヘッド自体は1989年から継続して採用されている、コンビネーション型のアモルファスヘッドです。

 

 

TC-KA7ESを下から覗いてみる。


 本体底部のカバーを開けると、所狭しと銅メッキのシャーシで武装している様子を見ることができます。フラッグシップモデルだけあって抜かりありません。

美しい銅メッキシャーシ。


 TC-KA7ESの骨組み(シャーシ)には銅メッキが施されています。

 各社とも最上位モデルには、銅メッキのシャーシが採用されています。銅色の輝きがとても美しいのですが、美しくあることは二の次です。本来の目的は、ノイズ源となりゆる有害な電磁波を、外部から遮断する効果を高めるためにあります。ただ、銅メッキを見ると高級感を覚えさせるのは確かでしょう。

 

最高級デッキのメカを分解する。


 最高級デッキとはいえども、メカニズムは下のランクの機種と同じです。

 一つ下のTC-KA5ESも、二つ下のTC-KA3ESも、同じ方法で分解できます。

 

プリント基板は両面です。


 TC-KA7ESのアンプ回路は、画像のような緑色の基板です。これはただの基板ではなく、両面に回路があります。

 表は電解コンデンサーなどの電子部品が乱立していますが、裏は表面実装型の部品がぎっしりです。高音質のための回路が濃縮されているように思います。

 黄色の〇で囲んだ、直立している基板がドルビーS用の基板です。ドルビーSが搭載されてからは電解コンデンサーの数も多くなりました。そのため、全て新品に変えるのに少し時間がかかります。

 さらにTC-KA7ESは両面プリントの基板ですから、よく注意しなければなりません。うっかりすると、表面実装されている部品にダメージを与えることになります。仮にやってしまうと、正常な基板を移すためのドナーが必要です。これを調達するのであれば5~6万円は消えていくでしょう。

 

 基板の裏面は、このように米粒サイズの電子部品がずらりと並んでいます。これを何らかで引っかいて、部品をはがしてしまうと回路を壊してしまいます。

 画像のように電子部品を配置することを表面実装と言います。今、私たちがスマートフォンを使えるのも、この表面実装の技術があってこそです。

 

 再生アンプも同じで、両面に回路がある基板です。

 もう一点驚いた部分が、電源部分にある高級な電解コンデンサーです。エルナー製の「シルミック」という、オーディオ用の中でもグレードの高いものを使用しています。高い機種でも、ここまで良い部品を使っていることは少ないです。

 カセットデッキの多くは、オーディオ用でも真ん中のグレードが使われています。安い機種であれば黒色の汎用コンデンサーしか使っていないものもあります。

 

無事に交換終了。


 電解コンデンサーの交換が終わって、再び組み立てたTC-KA7ESです。

 古い部品に倣って、新品もグレードの高いものを使いました。右側に写っているカップの中は、取り外したコンデンサーの数々です。数としてはさほど多くありません。しかし、先述の表面実装の部分は、電動のはんだ吸い取り器がないと困難です。手動の吸い取り器や、吸い取り線(ウィック)で強行すると、部品を痛める危険があります。

 

念のためボタンも交換します。


 ボタンが古くなると、押しても違うボタンが反応する、または全く反応しなくなる症状が出ます。

 TC-KA7ESは比較的新しい機種ですので、ボタンが原因の不具合は少ないかもしれませんが、後に発生することも考えられます。1991年のTC-K333ESAで、間違って反応する不具合がありましたので、早めに交換しておいて損はないでしょう。

 ボタンを交換するときに注意しなければならないのが、薄いフレキシブルケーブルです。ボタンのある基板とマイコンのある制御系の基板をつなぐ配線で、切り離す必要があります。力余って断線させないように、着脱するときには慎重に行います。

 

最上位モデルにしかないキャプスタン。


 最上位モデルであるTC-KA7ESには、音揺れ(ワウフラッター)をさらに抑制するため工夫があります。

 画像中の矢印の部分をご覧ください。この部分はキャプスタンの重り(フライホイール)です。TC-KA7ESでは、慣性力を高めるために、おもりが1つ余分についています。キャプスタンの重りも、カセットデッキの性能を決める要素の1つです。重りが重いほど回転が安定するため、音揺れの少ない再生が実現できます。

 他にも、年は違えども同じ最上位モデルであるTC-K555ESLも、同じように余分の重りが付いていました。

 

 比較のために、ワンランク下の機種にあたるTC-K333ESAの同じ部分を写した画像をお持ちいたしました。少し見比べてみてください。重りが付いていないことが確認できると思います。

 

修理実績

東京都 W.さま

作業内容:フルメンテナンス

動作に関しては特に異常は無かったものの、テープにしわが入るとのことでした。ミラーカセットで確認すると、テープが斜めに送られていたので、調整をし直しました。またフルメンテナンスのメニューをご希望でしたので、メカ部分と電解コンデンサーの交換まで行いました。