AKAI GX-F95


 

 
 1981年ごろに発売された、赤井電機の最上位モデルにあたるカセットデッキです。

 GX-F95の特徴を一言で表すと「ハイテク」でしょうか。もちろん、今日のコンピューターの技術と比べたら話になりませんが、発売された当時は非常に賢い1台カセットデッキだったことでしょう。

 カセットテープの面白さの一つに、バイアス調整で好みの音にできる点があります。しかしGX-F95は、バイアス調整のほか、録音レベル、録音イコライザーの調整をすべて自動で行います。そのため、これらを調整するつまみが一切ないところが大きなポイントです。

 ハイテクな部分はもう一つあります。それが、「オートテープセレクター」です。1980年代初期は、テープの種類(ノーマル・ハイポジ・メタル)を手動で切り替えるデッキが多くありました。GX-F95は、いち早く自動式を取り入れている点にも、赤井電機はテープデッキの最先端を常に目指していることが窺えます。

 デザインも20万円クラスに相応しいものを感じさせます。前面の電動ドアは、仮に手動式であったとしても支障はありません。TEAC V-9000も前面にドアがある類似したデザインですが手動式です。電動式するだけで高級感を醸し出すことができることも、GX-F95から読み取れることだと思います。

 AKAIブランドのテープデッキへの拘りが表現されている歴史的な1台です。
 

 

 

 

故障事例1:再生してもすぐ止まる

 GX-F95の故障事例として、再生ボタンや早送りボタンを押してもすぐにテープが止まる症状がありました。この原因は、矢印の部分にある1本のゴムベルトです。

 右側リールの隣に、銀色の羽根があります。こちらはリールの回転をセンサーに認識させる役割を担う部品です。ゴムベルトを介して右側リールと連動させています。しかしベルトが悪くなってしまうと、羽根を回せなくなるため、テープが回っていないとセンサーが認識してしまうのです。したがって、ボタン操作をしてもすぐに停止します。

 交換するベルトは直径25mmです。直径の小さいものを使ってしまうと、回転に抵抗が掛かって巻戻し動作に支障が出ますから、適切な寸法のものを使います。

 GX-F95に使われているベルトは、この1本のみです。キャプスタンは直接駆動する方式のため、キャプスタン用のベルトが必要ありません。

 

故障事例2:ボタンが押せない

 GX-F95ではボタンが押せなくなるという、他のデッキでは見られない珍しい故障があります。これは導電性ゴムが経年で硬くなってしまうことが原因です。導電性ゴムは、リモコンや昔のファミコンのコントローラーに使われています。

 ボタンの修理は固まったゴムを再利用し、通常のボタンを使った回路に変更して行いました。

 

 ※ボタン修理は通常の修理料金とは別に、21,600円(税込)が必要です。

 

メカニズムを分解するには

 GX-F95の修理・メンテナンスで特に気を付けるべき点は、配線の管理です。

 多くはコネクタで基板に接続されているのに対し、1980年代初めまでは直接はんだ付けされているデッキが多く見られます。そこで、元々どこに接続されていたか確実に記録することが重要です。

 このようにインデックスシールやマーカーを使い、さらに写真にも記録します。

 分からなくなってしまうと、場合によっては二度と電源が入らなくなってしまう事態になりかねません。修理が終わって元通りに接続し直すときに、迷わず接続できるようにしておくことがポイントです。

 

 では、実際に分解していく様子を見てみましょう。どの部分から順に分解していくかがポイントです。

 古くて複雑そうに見えるカセットデッキでも、効率よく分解することで、短時間でオーバーホールを行えます。

 

ピンチローラーの軸に注油します

 古いカセットデッキは、ピンチローラーの回転が悪くなっていることがあります。

 これは長い年月をかけて少しずつ軸部分に蓄積した埃が原因です。GX-F95はピンチローラーを軸から外すことができますので、埃を取り除いてきれいにした上、油を1滴垂らします。すると、滑らかに回転するようになり、音揺れの少ない音質に戻ります。

 

アイドラー用ゴムを交換する


 GX-F95は、ゴムを使ってでリールを回転させる方式です。このゴムが経年で硬くなると滑ってしまい、テープの巻取りが難しくなってきます。分解して同形状のゴムに交換します。

 またGX-F95に限らず、ゴムを使うデッキは、不要なテープを再生してゴムを馴染ませておくと、より安定した録音・再生ができます。特にデッキ本体が冷え切っている場合には、是非お試しください。

 

交換する電解コンデンサーは170個以上。


 これまで多くのカセットデッキを見ると、電解コンデンサーの数は100~120個が平均といったところです。GX-F95は平均をはるかに上回る170個です。

 さらに配線も複雑であるため、作業の難易度も高くなります。多くは3~4時間程度で交換を終えますが、GX-F95は5~6時間かかります。

 交換は労力を要しますが、新品に交換することで音質が改善するメリットが期待できます。特に規格通りに処理を行う必要のあるドルビーノイズリダクションでは、改善が顕著にみられました。

 

 GX-F95の中身はこのようになっています。主に4枚の基板からなる構成です。

 写真では3枚しか写っていませんが、向かって左側の下にもう1枚大きな基板が隠れています。ここが修理における難所で、この基板に触ることができないと、メカニズムを本体から外すことができません。