西村音響店

A&D GX-Z9100EX


 

 

概説

 1988年に登場したGX-Z9100が1回目のマイナーチェンジを行い、1989年にA&Dブランドの最上級モデルとして登場したのが、このGX-Z9100EXです。

 外観はほとんど変わらず、カセットホルダーのリッドが金属製に変更された程度です。それでも若干ではありますが、高級感を増した形となっていると思います。

 それ以外の変更ポイントは2つ。1つは、カセットホルダーのスタビライザーです。平らな形状から凸凹状に変更されました。凸凹状になったことでカセットへの圧力が強くなり、ホールド性も増していると思います。

 もう1つはアンプの小改良。回路自体は全く同じですが、アース(グランド)の取り方が改良されています。アンプの基板に、アース用の細長い基板が追加されています。

 それ以外はGX-Z9100と全く同じです。機能面も、減らされた機能もなければ新しい機能もありません。キャリブレーション機能、複数曲スキップする機能、再生ボタンを長押しすると1/2の速度で再生する機能、レックキャンセル、..etc、変わらず使えます。

 録音/再生ヘッドも変わらず、摩耗に非常に強いスーパーGXヘッドです。フラッグシップの9000番台ということで、クォーツロック制御も搭載されています。

 GX-Z9100からの変化は本当に小規模ですが、確実に改良を施された1台です。個人的には、A&Dのブランドの中では最も完成度が高いモデルだと思います。

残念ながら、最終モデルのGX-Z9100EVではコストダウン感が否めず、下位モデルとの差別化も薄れてしまいました。

 

 

GX-Z9100EXの音質

楽曲はフリー音源サイト「魔王魂」さまよりお借りしています。

 

きれいに部品を洗浄してイチから組み立てる。


 単に修理するだけではなく、部品は1つ1つきれいに脱脂洗浄します。

 部品には、動きを良くするために潤滑油となるグリースが塗られており、年数がたつと、油は硬くなってしまいます。すると、動きを良くするための役割はもう果たせません。

古い油(グリース)に継ぎ足すだけでも、動きはよくなりますが長い目で見て、再び年数がたったときに残ったままの古い油に何かあったらという心配があります。そこで、ぴかぴかの状態にしてから、新しい潤滑油・グリースを入れていく作業を行っているのです。

 

 洗浄する前はこんな状態です。部品に黒く塗られているのが、もうすぐ30年経過しようとしているグリースです。ゴム手袋をして作業をしますが、触ると手袋にしつこく付着してくる厄介ものです。

 ある程度グリースを落としたら、新しい手袋に換えて、きれいになった部品をまた汚してしまわないようにします。パーツクリーナーを使いますが、なかなか落ちないこともあり、グリースの硬化が進んでいるように思います。

 

 洗浄が終了した部品はポリ袋入れて保管します。組立の際に新しいグリースを塗っていきますが、埃が付着している状態は好ましくありません。

 

 新しいグリースは白色です。シリコーングリースという種類で、温度変化にも強く、プラスチック製の部品にも優しいという特徴があります。適度に粘度もあって、動作音も少し静かになるメリットがあります。

 

GX-Z9100EXのメカを上手に分解するには。


 メカを分解するのは誰にでも出来そうですが、上手に分解していくとなると少し難しい問題です。

 見えている部品を片っ端から外してもいいのですが、分解する時にできるだけまとまりで部品を外していくと効率がよいです。部品のまとまりをユニットやアセンブリーなどと呼びます。特にアセンブリーは略して「アッシー」とも呼ばれます。

アッシー単位で部品を外していくことを念頭に置いておくと、分解の難易度が下がります。ご自分で修理に挑戦される方は、ぜひご参考にしてみてください。

 GX-Z9100EXでの分解のポイントは、ヘッドがある前側と、キャプスタンのある後側を分離できるかです。以前は、前側から部品を1個1個外していっていましたが、前後に分離する方法にすると、作業の順番が整理しやすくて、アッシー単位で分解できることを知っておくと、万が一修理ができず他のデッキから移植するときも、アッシーごと丸々移植すれば短い時間で済ませることができます。

 

ピンチローラの軸にも注油が必要です


 回りの良いピンチローラーは、音揺れ(ワウフラッター)の低減にも寄与します。

 長年かけて少しずつ軸部分に埃がたまっていくと、やがて滑らかに回転しなくなってしまいます。すると、キャプスタンの回転に抵抗を掛ける格好となって、再生スピードが不安定になるなどの影響があります。

 そこで、GX-Z9100EXのピンチローラーは簡単に取り外せるので一旦軸から外し、埃を取り除きます。その後、オイルを1滴垂らしてから組立てます。一見修理とは関係なさそうに見える部分でも、実は音質にとても影響する部分です。

 

アイドラー用ゴムの交換


 アイドラーはモーターの動力をリールの回転に換える部品です。ゴムは外径16mmのものを使います。

 経年劣化でゴムが硬くなると、モーターが空回りしてやがて巻戻しや早送りが出来なくなります。同形状のゴムリングと交換しますが、交換する前に一度部品を脱脂洗浄します。特にゴムと接触する部分は、油分が付着していると交換しても改善はあまりないですので、念入りに洗浄することがポイントです。
 

 

GX-Z9100EXとGX-Z7100EX アンプの違い


 GX-Z9100EXはキャプスタンモーターがクォーツロックになっているだけではなく、アンプにも違いがあります。これも、改良前のGX-Z9100と同様です。

 GX-Z9100EXは、単体のFETを使った回路で、FETを使うと入力インピーダンスを高くすることできる、というと説明が難しいかもしれませんが、細かい音まで取りこぼさず音を拾うことができるという意味合いです。

 ピンクの丸で囲んだ垂直になっている基板が、GX-Z9100EXから追加されたものです。

※FET(電界効果トランジスタ)= 一般的に呼ばれるトランジスタとは構造が違うので、FETと呼んで区別します。 

 

 一方、下位機種のGX-Z7100EXはどうなっているのか見てみましょう。違うの黄色の〇で囲んだ部分です。

 9100EXと比べてみると、回路が簡単になっていて、こちらはオペアンプという集積回路(IC)1つを使った構成です。性能としてはもちろん9100EXの方が高いと思いますが、気にしなけば7100EXでも十分楽しめます。両者とも3ヘッドですから、基礎能力が高いです。

 



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