概説
回転ヘッドを使用する一般的なオートリバースの方式で、レーザーアモルファスヘッドが搭載されています。強いてマニアックな事を挙げると、停止するとヘッドが必ず元の向きに戻ります。(上位機種はヘッドの向きがそのままになる)
唯一、高級機種に無い装備がドルビーHX-Proです。カセットホルダにもHX-PROの表記があるほか、回路基板を見るとHX-PRO用のICがしっかり実装されています。ON/OFFスイッチが無い事から、録音中は常にONになっています。
特徴的な機能としては、ブランクスキップ付きの選曲機能とキャリブレーション機能があります。TAPE OPERATIONボタンで選曲機能をONにすると、再生中に無音部分を検知したら自動的に早送りモードになり、音がある部分まで飛ばします。もちろん、早送りor巻戻しボタンを押せばいつでも曲の頭出しも可能です。しかし、通常の早送り/巻戻しと頭出しモードを切替えるために、TAPE OPERATIONボタンで一々ON/OFFする必要がある点が少し面倒です。
キャリブレーション機能は、「2ヘッド方式でキャリブレーション機能」と聞くだけでも少数派で珍しいです。例としてはAKAIのGX-F51があります。また、1990年代中盤の廉価モデルにも搭載されていることが多いです。しかしTC-R502のキャリブレーション機能は独特で、録音感度の補正だけを行うキャリブレーションとなっています。バイアス調整は不可能で、ツマミも付いていません。
類似の機種にTC-K501ESがあります。こちらはワンランク上のオートリバースデッキで、独特なキャリブレーション機能とバイアス調整不可という点は同じです。しかし中身は大きく異なっており、アンプの回路はもちろん、メカは555ESⅡや333ESで使われている高級モデル用の物が搭載されています。一方、R502は廉価モデル用のメカが使われており、音質だけでなく動作音でも高級感に大きな差があります。
TC-R502の構造&搭載機能
ヘッド | 回転式2ヘッド(レーザーアモルファスヘッド) |
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メカニズムの駆動 |
ロジックコントロール・ソレノイド+フライホイールギヤによるカム駆動 |
キャプスタンの回転 | DCサーボモーター |
テープの走行方式 | オートリバース |
カセットホルダの開閉 | 手動 |
スタビライザー | なし |
テープセレクター | 自動 |
ノイズリダクション | ドルビーB・C |
ドルビーHX-Pro | 常にON |
選曲機能 | あり |
メーター | ピークレベルメーター(-4dB=0VU) |
キャリブレーション機能 | あり(録音感度補正のみ) 400Hz |
カウンター | リニア分数 |
その他の機能 |
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TC-R502の利点欠点
◎録音感度キャリブレーション(左右で独立調整可能・ドルビー録音で効果を発揮)
○同時期の高級機にはない選曲機能&ドルビーHX-PROを搭載
○同クラス帯のデッキでリニア分数カウンター搭載(多くは3桁or4桁カウンター)
△バイアス調整ができない
△メカの構造が弱い(調子悪くなって選曲機能が働くなることがある)
音質参考動画
テープ:RECORDING THE MASTERS
ノイズリダクションOFF
音源:Nash Music Library
無圧縮音源はこちら
【フュージョン・ロック】容量53.6MB
【ファンキーポップ】容量59.2MB
96kHz-24bitのためデータ容量が多くなっています。ご注意ください。
外観の詳細画像
録音感度キャリブレーション
TC-R502には、一般的なオートリバースデッキでありながら、キャリブレーション機能が搭載されています。しかし調整できるのは録音感度のみ。他のデッキでバイアス調整のみ可能なものは多いですが、このデッキはバイアス調整ができません。ノイズリダクションの動作をより正確にするための機能ですが…なんとも中途半端なキャリブレーションです。
次の動画のように行います。
【手順】
- 再生方向がフォワード(►)になっている状態で、〔REC CAL〕を押す。
- メーターの表示が変わるので〔REC]を押す。
- 信号音が10秒間録音された後、自動的に巻き戻される。
- 自動的に再生モードになり、メーターが振れる。
- 10秒以内にメーターの▲に合うようにLとRのツマミを回す。
【注意ポイント】
- 録音防止ツメが折れている場合はもちろん行えません。
- 再生方向がリバース(◄)になっていると何故か行えません。一度、再生ボタンを押して方向をフォワード(►)にします。
- ⑤の調整で、信号音の記録が終わる10秒が経過すると、強制的にキャリブレーション機能が終了します。素早く調整するのがコツです。
デッキの内部
オープン・ザ・キャビネット
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デッキの分解画像
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その他の画像
参考周波数特性
・長野県 オニヅカ様(2022年8月撮影)