西村音響店

SONY TC-K333ESJ

ページ作成:2022/10/22

 

概説

1993年頃に発売されたソニーの中堅モデル。ソニーでは初めてドルビーSを搭載した世代のデッキです。他社より2年ほど遅れてドルビーS搭載デッキが登場しました。

ドルビーSの回路は、ドルビーBやドルビーCと比べると倍ぐらいの面積を必要とします。そのため他社のデッキは、回路設計を大幅に変更したフルモデルチェンジさせた機種となっています。ドルビーS基板の搭載スペースを確保するためか、アンプ部の回路を簡素化した機種も見られます。

一方333ESJ/555ESJは、基本設計は1989年登場のESG世代を踏襲。手のひらサイズのドルビーS基板を開発して搭載することにより、従来の回路はそのままにドルビーSを追加搭載することが可能となっていると思います。

外観は、一つ前のESA世代と全くと言ってよいほど同じです。フロントにアール(曲線)を描いたサイドウッド、重厚なシャーシも顕在。しかし微妙な差ですが、相違点も幾つかあります。

操作関係では、ノイズリダクションとMPXフィルターが別々のスイッチになっています。また機能面は、CDダイレクト入力端子の廃止、ノイズリダクションインジケーターの省略がESJだけの違いです。特にインジケーター無しは、実際に使っていて少し不便に感じる箇所です。

次期モデルであるTC-KA7ESとTC-KA5ESでは、外観だけでなくアンプ基板の設計も大きく変わります。アンプ基板全体に表面実装部品が使われるようになり、音質も若干異なる味付けになっているように思います。外観の大幅な変化とともに、KA世代とESJ世代で好みが分かれるところかもしれません。

なお、上位モデルにはTC-K555ESJがあります。主な違いとして、銅メッキシャーシ、鋳鉄インシュレーターがありますが、外見は同じです。一応、555はもうワンランク上の機種ですが、既に333でこの風貌。

中堅機なのに最上級機の風貌、さらにドルビーSを追加搭載した、『333』の型番を名乗る最後デッキとして相応しい最高の中堅機と言えましょう。

【上位機種】TC-K555ESJ
【下位機種】TC-K222ESJ

 

TC-K333ESJの構造&搭載機能

ヘッド 3ヘッド方式(録音/再生コンビネーション型・レーザーアモルファスヘッド)
メカニズムの駆動 ロジックコントロール・カムモーター駆動
キャプスタンの回転 クォーツロック・ダイレクトドライブモーター
テープの走行方式 クローズドループデュアルキャプスタン
カセットホルダの開閉 パワーローディング
スタビライザー あり
テープセレクター
自動
ノイズリダクション
ドルビーB・C・S
ドルビーHX-Pro
ON/OFF切替可
選曲機能 あり
ライン入力 RCA端子1系統
ライン出力 RCA端子1系統(固定レベル)
メーター ピークレベルメーター(-4dB=0VU 0dB=250nWb/m)
キャリブレーション機能 あり(録音EQ切替付き) 400Hz・8kHz
カウンター リニア分数
その他の機能
  • クリーニングモード
    (開閉ボタンを押しながら電源を入れると、カセットホルダーが開いた状態でピンチローラーが上昇する)

 

TC-K333ESJの利点&欠点

◎中堅モデルなのに最上級モデルに匹敵する高級感
◎ドルビーSを搭載
◎録音EQ調整か可能
○アンプの設計をESG世代から踏襲している
(ドルビーS搭載のために回路の簡素化などもしていない)
○ゴールドとブラックの2色展開
△メカの動作を細いベルトで行うため信頼性が少々劣る
△ドルビーNRやMPXフィルターのインジケーターが無い

 



 

音質参考動画

テープ:RECORDING THE MASTERS
ノイズリダクションOFF
音源:Nash Music Library

無圧縮音源はこちら

【フュージョン・ロック】容量53.5MB

【ファンキーポップ】容量58.8MB

【ジャズ(ドルビーS録音)】容量30.1MB

96kHz-24bitのためデータ容量が多くなっています。ご注意ください。

 

外観の詳細画像

サムネイル画像をクリックすると拡大画像をご覧いただけます。


【前面左側・テープ操作ボタン・カウンター】
ESL代から続いているボタンレイアウトです。ESGだけは大きく異なりますが、ESL、ESA、ESJ、KA代は皆一緒です。

【前面中央・カセットホルダ】
リッドの造りはESAとまったく一緒です。違うのは型番の表記と、小さい『DOLBY S NR』の文字。

【前面右側・メーターと録音関係の操作部】
ここも基本的にESLから変わりませんが、ノイズリダクション(NR)関係のスイッチが異なっている点に注意。MPXのスイッチが別体になっています。また、NRのインジケーターはありません。これがESJの少し不便な点です。

【キャリブレーション機能】
3段階(LOW/NORMAL/HIGH)で録音EQを切替可能。ソニーのESモデル最大の利点です。

【リッドを外した状態】
ESJのカセットホルダ本体はグレーですが、ファインセラミックが使われているそうです。ESA代では、如何にもセラミックであるかのような白いカセットホルダが大きな特徴でした。

【ヘッド部分】
録再ヘッドもESA代と同じです。パッドプレッシャーリダクション(青い点粒)もあります。画像はピンチローラー交換後に撮影したものです。

【本体背面】
CDダイレクト入力の端子が無くなった点もESJ代の特徴です。電源コードの西暦は『1994』とありました。

 

 

デッキの内部

オープン・ザ・キャビネット

画像にマウスオン(タップ)してください。


 

サムネイル画像をクリックすると拡大画像をご覧いただけます。


【ロジック部】
基板の左手前にある大きなICがマイコンです。

【電源部】
本体中央には漬物石のような巨大な電源トランスが居座ります。重量物を中央に配置する、ソニーの333と555で特徴的なレイアウトです。

【アンプ部・再生系】
ドルビーSを搭載した関係で、基板の奥行が先代よりも大きくなっています。ドルビーSを新たに搭載したものの、表面実装部品でコンパクトにまとめられた基板により、録音系と再生系を別々の基板にすることが可能になっていると思います。

【アンプ部・録音系】
ESJでは再生系の基板が大きくなっているため、録音系の基板が完全に覆われます。そのため、メカの脱着の際、録音ヘッドと消去ヘッドの配線を外すために一々再生系の基板を退かす必要がある点が少し手間です。

【バイアス発振回路】
この辺りの回路設計も先代とは少し異なります。再生系の基板はサイズアップしましたが、録音系はそのままのサイズのため、回路を若干キツキツに押し込んでいるような印象があります。

【メカニズム】
1989年のESG代で初採用されたサイレントメカニズム(TCM-200D型)。

 



 

デッキの分解画像

 

サムネイル画像をクリックすると拡大画像をご覧いただけます。


【メカニズムのマウント部分】
振動防止のため、分厚い金属板が付いています。222では省略されており、333と555のみに与えられる装備です。

【メカニズムのマウント部分②】
修理のためにメカニズムを下ろした直後ですが、なにやらネチョネチョした黒いものが…

【修理前のメカ】
ここまで埃をかぶっているのは初めて見たような気がします。

【分解前にミラーカセット】
ヘッドの位置や、テープガイドの位置を下調べしています。この時は特に問題はなさそうで、きちんと元通りに左側のピンチローラーを取り付ければ大丈夫と判断しました。

【溶けて巻き付いたモードベルト】
左側のモーターです。このメカでは定番のゴムベルト劣化です。この時はカセットホルダも開閉できない状態で、分解すると案の定このようになっていました。メカニズムのマウント部分に付着していた黒いネチョネチョもゴムベルトの残骸です。

【メカ組立て中】
この時はオーバーホールのご用命でしたので、グリースは完全に交換しました。飴色のグリースなので分かりにくいです。ちなみに白色のシリコングリスは、揮発したガスがスイッチ類の接点を汚しやすいため使っていません。万能グリスがメインです。

 

その他の画像

サムネイル画像をクリックすると拡大画像をご覧いただけます。


【清掃する前のデッキ内部①】

【清掃する前のデッキ内部②】

 

参考周波数特性

画像にマウスオン(タップ)すると周波数軸が線形に変わります。

【TYPEⅠ】RECORDING THE MASTERS (現行テープ)


【TYPEⅡ】SONY XⅡ (1993年)


【TYPEⅣ】SONY METAL-XR (1989年)


※ヘッドの状態やデッキの調整状態など個体差により、必ずしも同じ測定結果にはなりません。あくまで参考程度にお願いします。

 

YouTube動画でも紹介しました

 

撮影に協力してくださった方
・東京都 ユタP様(2022年8月~9月撮影)

 

 

Return Top