Victor TD-V631

 

 
 ビクターの3ヘッド方式のカセットデッキでは真ん中のグレードに位置するモデルです。手軽にビクターの音を楽しめる1台だと思います。

 テープの走行は、上級機種のTD-V721と同じクローズドループデュアルキャプスタンで、キャプスタンのモーターが安定したダイレクトドライブではなく普通のDCサーボモーターが使われている点で差がありますが、それでもクローズドループ方式であれば、テープと再生ヘッドをしっかり密着させることができますので、TD-V721と殆ど変わらない音質を楽しめます。

 TD-V631の高音質の秘訣がもう1つ。それが「ノイズリダクション・デフィート機能」です。何かというと、ノイズリダクション(ドルビー)を使わないときに、その回路を切り離して音の信号を余計な道に行かせないというもので、ショートカットさせて邪魔者となるノイズの混入や余計な音質の変化を防ぐ狙いです。普通だと、ノイズリダクション用のICに「OFF/Bタイプ/Cタイプ」を切り替えるための端子があって、OFFにすれば無効にできます。ただ、これですとOFFであってもICの中を信号が通るので、やはり余計な道を辿ることになってしまいます。

 僕が聴いてみた感想ですが TD-V631の音の特徴は、心に響く低音だと思います。一世代前のTD-V711や、少し古いTD-V66も聴いたことがありますが、バブル期のビクターは低音の響きに良さがある傾向です。他のメーカーに比べて、低音がずっしり迫ってくるので、非常に個性のある音だと思います。やっぱり、カセットデッキは十人十色ですね。

 


 

メカをぜんぶ分解するとこうなります。


 机に並べた限りではそれほど部品数は多くなさそうです。ビクターは、扉(カセットホルダー)がフロントパネルと一体になっているものが多く、取り外しにやや時間がかかります。

 

ベルトが伸びて再生が不安定になる故障。


 TD-V631は、キャプスタンの回転に2本のベルトを使っています。面白いことに、2本とも同じベルトのかけ方になっているのです。別にこだわらなければベルト1本でも間に合います。そこを2本にして、音揺れ(ワウ・フラッター)の対策をしているものだと思います。残念なことに、この時のTD-V631はベルトが伸びていて、再生するとどんどん音が低くなっていく現象が出ていました。

 

 TD-V631を下から撮影した写真です。矢印の部分が、キャプスタンを回す2本のベルトです。メカを取り外すときは、本体の底を露出したこの状態から始めます。他のメーカーのデッキだと、普通に本体を置いた状態で上からメカを取り出せることが多いですが、カセットホルダーとフロントパネルが一体型になっている機種では、やり方にコツが必要かもしれません。ビクターに限らず、A&DやTEACでも、似たような形をしているデッキがあります。

 

 同じクローズドループデュアルキャプスタンの、ヤマハK-1xwの画像をお持ちしました。矢印の部分にベルトが掛かっていますが、普通はこのように1本しかベルトが使われていません。オートリバースでも、ベルトの掛け方を変えるだけなので1本で済みます。2本のベルトを使っている機種は、他だとソニーのTC-K555ESがそうですね。ただ2本使われていても、TD-V631のように2本とも同じ掛け方をしていないので、同じ仲間にするのは難しいです。

 

ボタンが間違って反応する。


 TD-V631に限らず、他のデッキでも起こりゆる不具合です。ボタンが古くなって、信号となる電流の通りが悪くなったため、デッキのコンピューターが間違って操作を認識するのが原因です。ボタンを新品にすれば解決できます。TD-V631の場合、ボタンの部分を露出させるのに、複雑な配線を攻略する必要があるので少し手間がかかります。

 

TD-V631のキャプスタンモーター


 上位機種のTD-V721では、安定したダイレクトドライブなのに対し、TD-V631は普通のDCサーボモーターになっています。DCサーボモーターは、通常のDCモーターに回転速度を維持するための回路が内蔵されているモーターで、フタを開けると写真のように基板を取り出すことができます。ここに電解コンデンサーが1つあるので交換です。

 

ビクター自慢のディスクリートヘッド


 ビクターもアカイと似たところがあるんでしょうか。ヘッドだけは自慢のものを搭載しています。他では見ないようなディスクリートヘッドです。

 ディスクリートヘッドの良い点は、録音ヘッドと再生ヘッドの調整を別々に行えるところにあり、ヘッドが持つ録音/再生能力を最大限に引き出すことができます。録音するときであれば大レベルの信号でも歪まずに録音できたり、再生ではテープに記録された音を余すことなく拾うことができたりと、高音質を得るためには欠かせない利点をもっています。ヘッドの利点が生きるのは生産して出荷する前の段階で、調整をしてどれだけデッキの性能を引き出せるかにあると思います。

 TD-V631が登場した1988年ごろは、録音ヘッドと再生ヘッドが一体になったコンビネーションヘッドの採用が徐々に増えている頃で、1989年からはソニーも同ヘッドに変わります。アカイは年月が進もうが自慢のスーパーGXヘッドを使い続け、1990年からはディスクリート型のスーパーGXヘッドにまで進化します。

 

再生中、キャプスタンモーター以外は動かしません。


 ビクターのカセットデッキで特徴的なのが、この部品です。これは再生するときに使う部品で、再生モードではキャプスタンの回転力をこの部品が貰って、
右側のリールを回すという仕組みになっています。

 

 メカを組み立てた状態で見てみましょう。黄色の矢印が、先ほどの部品です。再生モードにすると、緑の矢印の部分とくっつきます。緑矢印の部分はキャプスタンの軸なので常に回転しています。そこから動力を貰って、右側のリール台のふちに動力を伝達させます。そうすると、巻き取り用のリールモーターを使わなくても、テープの再生ができるのです。

 この方式を採ることによって何が良いかというと、モーターのスパークノイズが全く入らなくなるのです。整流子やブラシのついた一般的なDCモーターを回転させると「プチッ、プチッ、プチッ、…」という音が混入します。詳しくは直流モーターの仕組みを調べてみるとよく分かると思いますが、中で回転するたびに散っている火花がノイズの原因です。