Victor TD-V631

 

 
 1988年ごろの3ヘッド方式のカセットデッキです。ビクターの中では、真ん中のグレードにあたります。

 TD-V631の高音質の秘訣が「ノイズリダクション・デフィート機能」です。ノイズリダクションを使わないときに、回路の一部をショートカットさせます。余計な回路を通さず、ノイズの混入や余計な音質の変化を防ぐことがこの機能の狙いです。

 通常は、ノイズリダクション用のICに「OFF/Bタイプ/Cタイプ」を切り替えるための端子があります。この端子にOFFの信号を送ればノイズリダクションは使われません。ただこれですと、OFFであってもICの中を信号が通るので、やはり余計な道を辿ることになってしまいます。

 TD-V631の音の特徴は、心に響く低音です。一世代前のTD-V711や、少し古いTD-V66も聴いたことがありますが、バブル期のビクターは低音の響きに良さがあります。他のメーカーに比べて、低音がずっしり迫ってくるので、非常に個性のある音です。

 カセットデッキの音は十人十色であることを教えてくれる1台です。

 


 

故障事例 <再生できないor音が低い・遅い>


 もし、テープの音が極端に低かったり、遅かったりした場合は、ベルトの劣化が疑われます。

 伸びてしまったことで、テープを送るキャプスタンを回せなくなることが原因です。
この時のTD-V631はベルトが伸びていて、再生するとどんどん音が低くなっていく現象が出ていました。

 TD-V631は面白いことに、2本とも同じベルトのかけ方になっているのです。普通はベルト1本で間に合います。あえて2本にすることで、音揺れ(ワウ・フラッター)の対策をしているものだと考えられます。

 

 TD-V631を下から撮影した写真です。矢印の部分が、キャプスタンを回す2本のベルトです。

 メカを取り外すときは、本体の底を露出した状態から始めます。カセットホルダーとフロントパネルが一体型になっている機種ではコツが必要かもしれません。ビクターに限らず、A&DやTEACでも、似たような形をしている機種があります。

 

 同じクローズドループデュアルキャプスタンの、ヤマハK-1xwの画像をお持ちしました。

 矢印の部分にベルトが掛かっていますが、普通はこのように1本しかベルトが使われていません。オートリバースでも、ベルトの掛け方が違うだけなので1本で済みます。2本のベルトを使っている機種は、他だとソニーのTC-K555ESがそうです。ただ2本使われていても、TD-V631のように2本とも同じ掛け方をしていないので、同じ仲間とは言えません。

 

不具合の事例 <ボタンが間違って反応する。>


 ボタンが古くなると、押しても違うボタンが反応するようになります。TD-V631に限らず、他のデッキでも起こりえる不具合です。

 原因は、ボタンの中に電気が流れにくくなってしまったことによるもので、コンピューターが間違って操作を認識します。深刻な故障ではなくボタンが悪くなっているだけですので、新品に交換すれば問題ありません。TD-V631の場合、ボタンの部分を露出させる工程中に、複雑な配線が立ちはだかります。これを攻略するのに少々手間が必要です。

 

再生中のノイズを抑える工夫


 ビクターのカセットデッキで特徴的なのが、再生するときに巻取り用のモーターを使わないことです。多くは再生するときも、巻取り用のモーターが回っています。

 この方法を採る理由は、ノイズへの対策です。ブラシ付きの一般的なDCモーターを回転させると「プチッ、プチッ、プチッ、・・・」という音が混入します。詳しくは直流モーターの仕組みを調べてみるとよく分かると思いますが、中で回転するたびに散っている火花が原因です。

メカをぜんぶ分解するとこうなります。


 机に並べた限りでは、さほど部品の数は多くなさそうです。

 ビクターは、扉(カセットホルダー)がフロントパネルと一体になっているものが多く、取り外しにやや時間がかかります。

 

TD-V631のキャプスタンモーター


 TD-V631のキャプスタン用モーターは、ブラシ付きのDCサーボモーターが使われています。

 DCサーボモーターは、通常のDCモーターに回転速度を維持するための回路が内蔵されているモーターです。安いグレードにはよく使われています。フタを開けると写真のように基板を取り出すことができます。この基板が回転速度を維持するための回路です。ここに電解コンデンサーが1つあるので交換します。

 

ビクター自慢のディスクリートヘッド


 録音再生ヘッドは、録音用と再生用のヘッドが分離している「ディスクリートヘッド」です。他では見ない、ビクターだけのディスクリートヘッドです。

 1988年ごろは、録音ヘッドと再生ヘッドが一体になったコンビネーションヘッドの採用が主になっている頃です。いままでディスクリートヘッドを使っていたSONYは、1989年で採用をやめました。一方で、アカイは1990年からディスクリート型のスーパーGXヘッドを採用します。