西村音響店

Victor TD-V631

ページ作成:2022/10/22


 

概説

1988年に登場、ビクターの3ヘッド方式ではスタンダードクラスにあたる機種です。

上位機種のTD-V721から、ダイレクトドライブ、底部の重量ウッドパネル省略、銅メッキアンダーパネル、キャリブレーション機能を省略した仕様となっています。回路も簡略化されています。

キャプスタンの駆動はDCサーボモーターですが、2本のゴムベルトで駆動する構造がユニークです。DCサーボモーター+デュアルキャプスタンの方式としては、重量級のフライホイールが使われています。重量のあるフライホイールでも安定した駆動を行える工夫がされています。

ヘッドはTD-V721と同じく、録音再生ともにアモルファスヘッドです。ビクター仕様の独立懸架も顕在です。音質は他社のデッキに近づけたような味付けで、これまで若干強烈だったビクターサウンドの癖は抑えられていると思います。

それでもビクターの特徴的などっしりとした低音は残っていますので、多少なりともビクターサウンドを体験できると思います。さらに強烈なビクターサウンドを楽しみたい方は、ぜひメカが右側配置のデッキもお勧めです。

ノイズリダクションを使わない時に回路を切り離しバイパスさせる機能(NR-DEFEAT)、再生中に巻取り用のモーターを使わないメカなど、有害ノイズの低減対する拘りをTD-V631でも味わうことができます。

 

【上位機種】TD-V721

 

TD-V631の構造&搭載機能

ヘッド 3ヘッド方式(ディスクリート型・ファインアモルファスヘッド)
メカニズムの駆動 ロジックコントロール・カムモーター駆動
キャプスタンの回転 DCサーボモーター(ツインベルト駆動)
テープの走行方式 クローズドループデュアルキャプスタン
カセットホルダの開閉 手動(たるみ取り機能あり)
スタビライザー あり
テープセレクター
自動
ノイズリダクション
ドルビーB・C(OFF時は回路をバイパス)
ドルビーHX-Pro
ON/OFF切替可
選曲機能 あり
ライン入力 RCA端子3系統(LINE IN, DIRECT, CD DIRECT)
ライン出力 RCA端子1系統(固定レベル)
メーター ピークレベルメーター(0dB=0VU),デジタルピーク表示機能付き
キャリブレーション機能 なし(バイアス調整可) 400Hz・10kHz
カウンター 4デジットカウンター・テープ残量表示
その他の機能

 

TD-V631の利点&欠点

◎NR-OFF時は回路をバイパス(NR-DEFEAT機能)
◎再生時、モーターのスパークノイズが皆無
◎独立懸架型の3ヘッド
◎リアルタイムで変化するデジタルピーク表示(他社は最大値のみ記憶するタイプが多数)
○入力端子が3系統
○通常のDCサーボモーターの方が壊れにくい(V721のD.D.はトラブルの事例あり)
○2本のベルトによる安定したキャプスタン駆動
△アイドラーギヤが劣化しやすい
△ボタンの劣化による誤作動が多い

 



 

音質参考動画

テープ:RECORDING THE MASTERS
ノイズリダクションOFF
音源:Nash Music Library

無圧縮音源はこちら

【フュージョン・ロック】容量53.5MB

【ファンキーポップ】容量58.8MB

【ジャズ(ドルビーC録音)】容量30.1MB

96kHz-24bitのためデータ容量が多くなっています。ご注意ください。

 

外観の詳細画像

サムネイル画像をクリックすると拡大画像をご覧いただけます。


【前面左側・カセットホルダ】
ビクターといえば右側配置のメカでしたが、V631は一般的な左側配置になっています。1年先に登場したTD-V711から左側配置になりました。

【前面中央・FLディスプレイおよび操作部】
メーターの表示も大きく見やすいです。数値でもピークレベルが表示されるので、録音時の調整に大変便利です。ただし0dBが0VUで、ソニーやAKAIとは目盛が異なる点に注意です。

【ボリューム類】
とにかく大きいRECレベルのノブ。管理人自身は大きいノブの方が、細かな調整がしやすく好みです。しかしとにかく大きい。右下にはバイアス調整とバランス調整があります。

【FLディスプレイの表示変化】

【リッドを外した状態】
残量ランプの周りに幾つかの突起があります。リッド側にあるスタビライザーと併せて、カセットをホールドするための突起です。

【スタビライザー】
スタビライザーはリッド側に付いています。大抵はカセットホルダに装着されているため、ここは他社と少し異なる箇所です。ほどほどにバネが効いたスタビライザーです。

【ヘッド部分】
ビクターならではの独特なディスクリートヘッドです。録音、再生、共にアモルファスヘッドで、これまでの癖の強いビクターサウンドと比べると、他社のデッキに近い落ち着いた音になっていると思います。

【入出力端子】
入力端子は充実の3系統。レコード、CD、チューナー、すべて接続できてしまいます。3系統も不要かもしれませんが…

【製造番号と電源コードの西暦】
電源コードの西暦は『1988』です。

 

 

デッキの内部

オープン・ザ・キャビネット

画像にマウスオン(タップ)してください。


 

サムネイル画像をクリックすると拡大画像をご覧いただけます。


【メカニズム】
前面パネルにマウントされているメカです。

【メカニズム②】
斜めから見ると、特徴的な2本のキャプスタンベルトが見えます。V721になるとダイレクトドライブになりますが、故障の事例もあるとの事です。かえって普通のモーターの方が壊れにくいです。

【電源トランス・ロジック部】
ここの基板は逆さまにマウントされており、底部を開けて撮影しています。

【アンプ部】
右側の部屋一体がアンプ部になっています。入力端子付近のセレクターから長~い黒色のロッドが伸びています。RECレベルのボリュームからも長~い真鍮のロッドが伸びています。

【再生アンプ・NR回路】
再生アンプは右端にあります。EQ調整用のトリマーも付いています。NR用ICは日立製HA12088NTです。NRを使わないときにはICを通さずに直接バッファーアンプに音声が送られます。基板に「DEFEAT AMP」の表記があり、専用に回路が用意されているようです。

【録音アンプ・バイアス発振回路】

 



 

デッキの分解画像

 

サムネイル画像をクリックすると拡大画像をご覧いただけます。


【メカニズムを下ろした後】
メカを下ろすと、このようにカセットホルダが残ります。若干知恵の輪をするようにメカを脱着します。

【モーター部分の分解】
リールモーターとカムモーターの部分だけ取り外すことができます。ソニーのサイレントメカも若干構造が似ていますが、ダイレクトドライブも外す必要があり整備性は劣ります。

【アイドラーギヤの摩耗】
早送りと巻戻しができなくなる故障の原因です。このメカの持病とも言えます。ギヤに負担が大きく掛かるためか、擦り減るように歯が無くなってしまいます。

【アイドラーギヤの摩耗②】
歯の部分をアップで撮影してみると、ギヤが嚙み合っていない様子がよく分かります。

【アイドラーギヤの摩耗③】
交換のためにモーターから外しました。手で触った感触ではまだまだ硬さはあるようでしたが、機械的な負荷には弱いのでしょうか。動作音低減のために柔らかい樹脂素材を使っていることも一因としてありそうです。

【代替品のギヤ】
幸いにも海外に代替可能なギヤがあります。寸法も歯の形もオリジナルと殆ど同じです。汎用品ではなくデッキの交換部品用として作られており、それだけ症状が多発していることなのでしょう。

【キャプスタンベルト交換】
2本のゴムベルトを使うことで、比較的重いフライホイールでも安定した駆動を可能にしていると思われます。

【再生用アイドラーゴム交換】
ビクターのサイレントメカの特徴的な部分です。上述のギヤが破損しても、再生は別のアイドラーで駆動するので、再生だけはできるという変わった壊れ方をします。

【ピンチローラー交換】

【ピンチローラー交換②】

【FLディスプレイ基板】
タクトスイッチ(ボタン)の交換で外した状態です。フロントパネルに強く押し込まれいるため、外す時は難儀します。

【テープ操作ボタン交換】
こちらにあるタクトスイッチは簡単が交換です。デッキ底部を開けて、ツメではまっている細長い基板を外します。このデッキはタクトスイッチの劣化で操作が言う事聞かなく症状が出ます。

 

参考周波数特性

画像にマウスオン(タップ)すると周波数軸が線形に変わります。

【TYPEⅠ】RECORDING THE MASTERS (現行テープ)


【TYPEⅠ】SONY HF-S (1987年)


【TYPEⅡ】SONY UX-S (1989年)


【TYPEⅣ】TDK MA (1990年)


 

【再生特性】-20dBテストテープ使用

※ヘッドの状態やデッキの調整状態など個体差により、必ずしも同じ測定結果にはなりません。あくまで参考程度にお願いします。

 

YouTube動画でも紹介しました

 

撮影に協力してくださった方
・中国地方の某県 J様(2022年10月撮影)

 

 

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