西村音響店

A&D GX-R65CX

ページ作成:2022/10/22

 

概説

1987年にA&Dブランドが誕生した際に発売されたオートリバースデッキです。基本構造は1985年発売のGX-R60から変わらず、R60→R60EX→R65CXと改良して実質2回目のマイナーチェンジをしたような機種です。

上位機種GX-R75CXとの主な相違点として、電子式のRECレベルボリュームの非搭載、カウンターがリニア分数ではない、といった点があります。機能面でワンランク落とされた機種です。

しかし性能は一切落とされることなく、AKAI自慢のツインフィールドスーパーGXヘッドをしっかり搭載しています。再生音質は3ヘッド機に匹敵するほど。GXヘッドは非常にシャープな音質が特徴ですが、同価格帯のオートリバースでは最高の音質といっても過言ではないと思います。dbxも省略されることなく搭載され、再生面では十分すぎるほどのスペックです。

一方、録音面ではデメリットがやや目立ちます。特にバイアス調整のツマミが付いていない点です。使用テープに合わせてバイアスで音質を調整することができず、テープの磁気特性に任せることになります。

録音では不足感がありますが、再生メインで使用するサブデッキにはお勧めです。フルサイズのカセットデッキとしては小型・軽量なため、移動も容易です。

この機種の後にもGXヘッドを搭載したオートリバースデッキが登場しますが、残念ながら大幅にコストダウンされます。特にメカニズムは社外製に変わるため、内製のメカを採用したオートリバースデッキはこれで最後になってしまいました。

【上位機種】GX-R75CX

 

GX-R65CXの構造&搭載機能

ヘッド 回転2ヘッド方式(ツインフィールド・スーパーGXヘッド)
メカニズムの駆動 ロジックコントロール・カムモーター駆動
キャプスタンの回転 DCサーボモーター
テープの走行方式 オートリバース(クイックリバース機能付き)
カセットホルダの開閉 パワーローディング
スタビライザー なし
テープセレクター
自動
ノイズリダクション
ドルビーB・C,dbx
ドルビーHX-Pro
なし
選曲機能 あり
ライン入力 RCA端子1系統
ライン出力 RCA端子1系統(可変)
メーター ピークレベルメーター(-4dB=0VU)
キャリブレーション機能 なし(バイアス調整も不可) 400Hz・10kHz
カウンター 4デジットカウンター
その他の機能
  • RECキャンセル
    (ワンタッチで録音を開始した位置に戻る)

 

GX-R65CXの利点&欠点

◎ツインフィールドGXヘッド搭載で音質は3ヘッド機と肩を並べる
○電子ボリューム非搭載(利点としたのは不具合を起こすと修理が難しいため)
○dbxノイズリダクションを搭載
○Foward再生とReverse再生でテープスピードの差が少ない
△バイアス調整が不可能
△メーターのレンジが狭く、ピークホールド機能もない

 



 

音質参考動画

テープ:RECORDING THE MASTERS
ノイズリダクションOFF
音源:Nash Music Library

無圧縮音源はこちら

【フュージョン・ロック】容量53.3MB

【ファンキーポップ】容量59.0MB

【ジャズ(dbx録音)】容量23.7MB

96kHz-24bitのためデータ容量が多くなっています。ご注意ください。

 

外観の詳細画像

サムネイル画像をクリックすると拡大画像をご覧いただけます。


【前面左側・カセットホルダ】
A&Dのロゴに変わりました。それ以外に違いはなく、パワーローディングも変更はありません。正直なところ、ロゴがAKAIとA&Dどちらが良いか?という好みの問題になりそうです。

【前面中央・メーターとNRスイッチ】
メーターは-20dBから振れる仕様です。R75CXと殆ど同じですが、細かい違いを挙げるとR75CXはMOLとSOLの表示があります。

【前面右側・テープ操作ボタンとRECボリューム】
R65CXでは通常のスライドボリュームになります。電子式ボリュームは回路が不具合を起こすとほぼ修理不能ですが、ガリ(接点不良)であれば何とかなります。

【FLディスプレイの表示変化】

【本体背面】
背面パネルは木製。こちらもR75CXとR65CXのちょっとした特徴です。(R70/R60も同様)ちなみにキャビネットを開けるときは、先に背面パネルから外します。

【ヘッド部分】
ツインフィールドスーパーGXヘッドです。アジマス調整ネジには緩み防止用のナットが噛まされており、長年の仕様でも狂いにくいように工夫されています。

【製造番号と電源コードの西暦】
電源コードの西暦は『1987』です。A&Dになってからは製造番号の表記方法がJPxxxxxに変わります。番号からして比較的前期に製造された個体と思われます。

 

 

デッキの内部

オープン・ザ・キャビネット

画像にマウスオン(タップ)してください。


 

サムネイル画像をクリックすると拡大画像をご覧いただけます。


【メカニズム】
3モーター構成のメカです。左からカムモーター、リールモーター、キャプスタンモーター。

【モーター部分拡大】
カセットホルダの開閉はリールモーターで兼用しています。カムによって歯車の嚙み合わせを変えることにより、動力の断絶をします。トラックでいうPTO的な構造です。

【ロジック部】
2段構造になっているうちの上段の基板です。R75CXではがらんと空いている部分に電子部品が載ります。録音レベルの設定をメモリーする回路です。

【アンプ部】
黄色の電解コンデンサがぎっしり実装されていますが、これらは日本ケミコンの特注品です。A&Dブランドになってから全ての電解に特注品を使うようになっています。AKAIの時は標準品が混用されていました。

【電源部】
電源回路は少ない面積に凝縮しているためか、隙間なく部品が実装されています。

【再生アンプ】
増幅用のオペアンプは三菱製M5240Pです。最上級機のGX-Z9000やGX-93にも使われています。このICを使った機種は特に音が硬いように感じます。(40V/μsの超高スルーレートが要因…?)

【NR回路と電子ボリュームの跡地】
ノイズリダクション用ICは日立製HA12058です。録音と再生を兼用するため、実装は1個のみです。R75CXでは空き地にぎっしり電子部品が載ります。

【dbx回路】
ICは松下製AN6291です。こちらも録音再生兼用のため、実装は1個のみです。すぐ隣にdbx調整用のトリマーが付いています。

【録音アンプ・メーター回路】
黄色のトリマーはメーター調整用です。黒のトリマーが録音レベル調整用。うっかり目立つ黄色の方が録音レベルかと思っています…奥にバイアス発振回路が映っています。

 





 

参考周波数特性

画像にマウスオン(タップ)すると周波数軸が線形に変わります。

【TYPEⅠ】RECORDING THE MASTERS (現行テープ)


【TYPEⅡ】TDK SA (1987年)


【TYPEⅣ】TDK MA (1988年)


 

【再生特性】-20dBテストテープ使用

※ヘッドの状態やデッキの調整状態など個体差により、必ずしも同じ測定結果にはなりません。あくまで参考程度にお願いします。

 

 

撮影に協力してくださった方
・中国地方の某県 J様(2022年10月撮影)

 

 

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