概説
1986年に登場したAKAIのフラッグシップカセットデッキです。AKAIで初めてサイドウッドが装着されたモデルでもあります。薄型のボディにサイドウッドが付いているので、横幅が広く見えます。
機能面では大幅に簡素化されました。キャリブーレション機能が無くなり、オーソドックスに録音レベル・バランス・バイアスが調整できるだけとなっています。その分、ボタンやスイッチの数も減り、AKAIのチャームポイントであるごちゃごちゃ感が無くなっています。
ノイズリダクションは、ドルビー方式のBタイプ・Cタイプに加え、ヒスノイズを皆無にできるdbxを搭載。実は、これまでAKAIのフラッグシップモデルにはdbxが搭載されませんでした。その代わり、オートチューニングなどのハイテク機能を搭載していましたが、このGX-93からは路線変更がなされているようです。
メカニズムは、1982年から採用されているものを搭載。テープを入れるとヘッドとテープが接触した状態で待機するので、再生ボタンを押すと一瞬で再生が始まります。録音/再生ヘッドはもちろんスーパーGXヘッド。
GX-93にはボディーカラーが2色あり、ブラックのほかにシャンパンゴールドが存在します。AKAIのシャンパンゴールドはとても希少です。確認している限り、このGX-93と、A&DのGX-W930しか存在しません。
1987年からはA&Dブランドへと変わり、外観そのままにGX-Z9000に名を改めて再登場します。しかし残念ながら、GX-Z9000になってからはシャンパンゴールドは無くなり、ブラックのみとなりました。電子回路に若干の改良が施されていますが大差はありません。極論を言うと、GX-93とGX-Z9000の違いはブランドのロゴだけです。
AKAIが好きならGX-93、A&Dが好きならGX-Z9000です。
GX-93の音質
○電子部品交換前
○電子部品交換後
マクロレンズで診るスーパーGXヘッド
スマートフォンのレンズに外付けできる、簡易的なマクロレンズを使って撮影しました。ヘッドの状態チェックにも大変有効で、しかも手軽にできます。ぜひお試しあれ。
dbxの回路基板
GX-93のdbx基板は、コネクタで差さっているだけなので簡単に脱着ができます。
下位機種のGX-73は、dbxが省略されているので基板はありません。仮にGX-73に移し替えようとしても、メインの基板にコネクタが無いため、残念ながら移植は不可能です。
dbx基板は垂直に接続されています。外したままでも、dbxが使えなくなるだけで、デッキは普通に動きます。GX-73でdbxを引き算しているだけなので、問題ありません。
システムコントロール基板
本体のキャビネットを開けて始めに見えてくるのが、このシステムコントロール基板。メカニズムを脱着する際は、この基板につながっているケーブルを外すことになります。
同じピン数のコネクタが2組あるため、組み立てる際に間違えないようにマーキングが必要です。
徹底的に分解洗浄する。
GX-93は、部品が固着して動かなくなり、故障することが最も多いです。
油を差すなどして応急処置も可能ですが、再び動かなくなる原因となります。ですから、一度すべての部品を取り外して綺麗に洗浄し、イチから組み立てることが大切です。
電子部品交換の前と後
音響店のフルメンテナンスコースでは、電解コンデンサーを中心に電子部品の交換を行います。GX-93では、音の信号が通る回路にも電解コンデンサ-が使われています。新品に交換すると、信号の通りが良くなり、ずっしりとした太い音に変わります。
特に電解コンデンサーは、寿命が最長でも15年とされているため、既に寿命を迎えています。回路にもよりますが、劣化によって信号の通りが悪くなったり、ノイズが増えたりします。末永く使うには、交換がおすすめです。
ここまでやる。埃まみれの状態からの大掃除。
フルメンテナンスコースでは、基板を取り外してしまうので、デッキの大掃除が可能です。埃まみれだったGX-93が、美品にランクアップします。
GXヘッドが研磨されている事例が稀にあります。
摩耗知らずのスーパーGXヘッドですが、稀に研磨によって録音ヘッドの表面に段差が生じたものがあります。
GX-93以外に、GX-Z9100でも同じ事例がありました。この状態では、段差によってテープとヘッドが密着しないため、録音ができません。頂いた情報によれば、「わざわざ研磨した事が災いとなった」との事だそうです。
このような状態のヘッドは、正常なものとの交換しか手段がありません。