西村音響店

AKAI GX-93

最終更新:2021/12/11

 

概説

1986年に登場したAKAIのフラッグシップカセットデッキです。AKAIで初めてサイドウッドが装着されたモデルでもあります。薄型のボディにサイドウッドという組み合わせは、高級機としては重厚な雰囲気は抑えつつも、引き締まった格好になっていると思います。管理人自身もお気に入りのデザインです。

機能面では大幅に簡素化されました。キャリブレーション機能が無くなり、オーソドックスに録音レベル・バランス・バイアスが調整できるだけとなっています。その分、ボタンやスイッチの数も減り、AKAIのカセットデッキとしてはやや簡素な印象です。

ノイズリダクションは、ドルビーのBタイプ・Cタイプに加え、ヒスノイズが殆ど無くなるほど強力なdbxを搭載。実はこれまでAKAIのフラッグシップモデルにはdbxが搭載されていませんでした。その代わり、オートチューニングなどのハイテク機能を搭載していました。

メカニズムは、1982年のGX-F91やGX-F71などから採用されているものを搭載。テープを入れるとヘッドとテープが接触した状態で待機するので、再生ボタンを押すと一瞬で再生が始まります。録音/再生ヘッドはもちろんスーパーGXヘッド。

GX-93にはボディーカラーが2色あり、ブラックのほかにシャンパンゴールドが存在します。AKAIのシャンパンゴールドはとても希少です。確認している限り、このGX-93と、A&DのGX-W930しか存在しません。

1987年からはA&Dブランドへと変わり、外観は殆どそのままにGX-Z9000に名を改めて再登場します。しかし残念ながら、GX-Z9000になってからはシャンパンゴールドは無くなり、ブラックのみとなりました。電子回路にも若干の改良が施されていますが大差はありません。1つ大きな相違点としては背面のLINE-OUT端子のレベルを調整できるか否かです。GX-93では調整が可能です。

もう一つ違いを挙げるとしたらブランドのロゴでしょうか。AKAIが好きならGX-93、A&Dが好きならGX-Z9000です。

 



 

外観の詳細画像

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AKAI GX-93 カセットホルダ
【カセットホルダ】
開閉は電動式。クォーツロック搭載のGX-93は、リッドに「Quartz Lock」の文字が入ります。
AKAI GX-93 メーターとボリューム類
【メーターとボリューム類】
dbxを搭載するため、メーターは最大+12dBまでと範囲が広いです。GX-93はデッキ背面のライン出力のレベルもボリュームで変えることができます。(GX-Z9000では不可)
AKAI GX-93 操作ボタン
【操作ボタン】
ボタンは大きく操作しやすいです。今までオートチューニングを自慢げに搭載していたAKAIですが、非搭載となったGX-93ではボタンの数が大幅に減っています。
AKAI GX-93 デッキ背面
【デッキ背面】
入出力端子は1系統ずつ。型番と製造番号の表記が違うほかは、後継のGX-Z9000と同じ外観です。
AKAI GX-93 1987年製のサイドウッド
【サイドウッド(1987年製)】
このGX-93はGX-Z9000と同じダークブラウン調のウッドを装着していました。ただし、GX-Z9000と相互に付け替えができるため、真相は定かではありません。

AKAI GX-93 製造番号と製造年
【製造番号と製造年】
5桁-5桁の製造番号もこれで最後。電源コードに「1987」とあり、末期に製造されたGX-93である可能性があります。
AKAI GX-93 サイドウッド 1986年製
【サイドウッド(1986年製)】
1986年製のサイドウッドは色が若干淡いです。木目の柄もはっきりしたものとなっています。
AKAI GX-93 取扱説明書

【取扱説明書】
下位機種のGX-73と共通の取扱説明書です。

 

デッキの内部

オープン・ザ・キャビネット

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AKAI GX-93 電源トランス
【電源トランス】
左奥に付いています。ソニーの同い年の機種である555ESXと比べると少し小振りです。
AKAI GX-93 電源回路
【電源回路】
電源回路は大きな電解コンデンサーと放熱板がついたトランジスタの部分。すぐ近くの黄色の配線が出ている部分はヘッドホンアンプの回路です。
AKAI GX-93 再生ヘッドアンプ
【再生ヘッドのアンプ】
画像右半分の部分が再生ヘッドのアンプです。後継のGX-Z9000になると銅メッキのシールドが付いて、この部分が表から見えなくなります。銅箔のフィルムコンデンサが特徴的なパーツです。
AKAI GX-93 dbx回路基板
【dbx回路基板】
垂直に取り付けられています。コネクタで接続されているだけで、脱着が容易です。
AKAI GX-93 制御系回路
【制御系回路】
後継のGX-Z9000も回路は同じですが、使われている電解コンデンサが異なります。93では黒色のコンデンサがメインですが、9000ではすべて金色のコンデンサに変わります。
AKAI GX-93 メカニズム部
【メカニズム部】
ヘッドが接触した状態でスタンバイする、AKAIの3ヘッド方式ではお馴染みのメカニズムです。半固定抵抗が2つ付いていますが、これはメカニズムの動作を調節するためのものです。
AKAI GX-93 アンプ基板
【アンプ基板】
ノイズリダクション用ICは、日立のHA12090NT。GX-Z9100EXの世代まで使われました。
AKAI GX-93 バイアス発振回路
【録音ヘッドの配線】
GX-93ではグランドが1本で3ピンのコネクタだが、GX-Z9000ではグランド2本の4ピンコネクタに変わります。93と9000でヘッドやメカの移植は可能ですが、唯一録音ヘッドの配線は移植できません。

 

デッキの分解画像

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AKAI GX-93 メカニズム
【メカニズム】
AKAIの3ヘッド方式でお馴染みのメカです。経年劣化したモーターが原因で動作音がうるさくなる現象も、このメカでは日常茶飯事。
GX-93 メカニズム分離
【ヘッド部分とダイレクトドライブを分離】
GX-F71の世代から構造は全く変わっていません。GX-93はリニア分数カウンターではなく、シンプルな4桁カウンターですが、回転センサーは両側についています。
AKAI GX-93 分解したパーツ
【カム関係の部品】
汚いグリース塗れになっていた部品が、洗浄で綺麗な状態になりました。
AKAI GX-93 dbx基板
【dbx基板】
メインのアンプ基板にコネクタで接続されているだけなので、簡単に脱着ができます。dbxの用のICには松下電器のマークがあります。
AKAI GX-93 スーパーGXヘッド
【スーパーGXヘッド】
コンビネーションタイプを搭載。摩耗しているものを見かけないほど耐久性に優れていますが、稀にハズレにあたることがあるので注意。
ご臨終スーパーGXヘッド
【ご臨終スーパーGXヘッド】
自然に生じたのか人の手によって生じたかは不明ですが、稀にヘッドの表面に段差ができているものがある。ただ、過去にこのような状態になっているものは、全て手が加えられた跡がありました。真相は未だ不明です。
AKAI GX-93 制御系回路基板
【制御系回路基板】
ダイレクトドライブの回路が異なるほかは、下位モデルのGX-73と同じ。移植も可能で、例えばGX-93をFGサーボ仕様にすることもできます。(メリットはあまりないですが…)

 

ゴールドモデル

 

撮影に協力してくださった方
・埼玉県 カワダ様 (1986年製の外観画像・不良ヘッドの画像 2019年2月,2021年8月撮影)
・兵庫県 「モモゾウ」さん (1987年製の画像・デッキ分解画像 2020年5月撮影)

※ゴールドモデルは当方所有デッキです。レンタルも行っています。
 ⇒https://nishimurasound.jp/blog/rent-gx93

 

 

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