西村音響店

AKAI GX-F71

  • AKAI GX-F71

 

概説

1982年に発売された3ヘッド方式の中堅モデルです。これまではごつごつした印象だったAKAIのカセットデッキですが、一転スタイリッシュな容姿になっています。

シルバーの薄型ボディが特徴で、操作ボタンも凹凸が少なく、横から眺めても非常にすっきりとしています。光る電源ボタンもポイントです。触る頻度が少ないスイッチやボリュームは、本体中央にあるカバーの中に隠れています。

この世代からメカニズムの設計が一新されました。ソレノイドを使用した「ガチャン!」というやかましい設計から、モーターで動作を行う設計に変更されています。これにより、カセットを入れるとテープとヘッドが接触した状態で待機するという動作が実現可能になりました。再生ボタンを押すと間を置かず演奏が始まる動きは、AKAIのカセットデッキの大きな特徴です。なおこのメカニズムは、赤井電機が最後に世に送り出したGX-Z9100EVの生産終了まで、約12年も継続して採用されることになります。

録音/再生ヘッドには、磨耗に非常に強いスーパーGXヘッドを搭載しています。しかし、先代のGX-F90などと比較すると若干形状が異なっており、小改良がされていると思われます。また、メカニズムの一新で、テープの走行方式もクローズドループデュアルキャプスタンとなりました。

録音関係の調整は全自動です。ボタン一つで、録音感度の補正・バイアス調整・イコライザー調整を行います。なんと下位モデルのGX-F51にも搭載されており、オートチューニング機能をかなり推していたようにも見て取れます。

レベルメーターは、ピークレベルとVUを切り替えることができるのもAKAIのカセットデッキの特徴です。薄型ボディになってディスプレイが小型になった分、メーターが小さくなって少し見づらくなってしまったことが惜しいところ。
 
すっきりとした外観にオートチューニング機能を搭載した、Stylish &Intelligentな1台です。

 



 

外観の詳細画像

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AKAI GX-F71 カセットホルダ
【カセットホルダ】
前面パネルとの一体感がよい。テープを照らすランプは緑色。後年になると橙色になる。
AKAI GX-F71 テープ操作ボタン
【操作ボタン】
こちらも前面パネルとの一体感のために、凹凸がない形状となっている。電照式のボタンも◎。
AKAI GX-F71 光る電源ボタン
【光る電源ボタン】
この機種一番のチャームポイントはここ。電源を入れると光る。ただし麦球を使っているので、球切れで点かなくなることも。(このGX-F71も球切れしていて交換した)
AKAI GX-F71 背面
【デッキ背面】
入出力は1系統ずつ。出力端子のレベルはボリュームで調整することができる。

【録音/再生ヘッド】
アカイではお馴染み、殆ど摩耗しないスーパーGXヘッドを搭載。アカイのクローズドループデュアルキャプスタンを採用したデッキは、1970年代後半にも存在するそうだ。(GXC-760Dなど)

 

カバーに隠れているスイッチ・ボリューム

画像にマウスオンまたはタップしてください

 

デッキの内部

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【アンプ基板】
新たにドルビーCが搭載されたということで、特徴は8個のドルビー用IC。「ドルビーB × 2 =ドルビーC」という形が4セット搭載されている。

【キャビネットを開けた状態】
電源回路と制御系の回路が現れる。とにかく配線の数は多く、一言でいうと「わけわからん」状態。同世代の他のデッキでもこのような光景が見られるが、流石にここまでグチャグチャなのは恐ろしい。

【再生アンプ拡大】
画像右の方に再生ヘッドの配線が接続されている。録音ヘッドの配線は別の基板。そのため、ドルビーNRを使うにはわざわざ別の基板に信号を飛ばす必要がある。これが配線をより複雑にさせた要因かもしれない。

【ドルビーNR回路拡大】
ICの近くにある半固定抵抗を回すと、ノイズリダクションの動作特性が変わる。微調整が必要なほどシビアだったのだろうか。実際にGX-F71でドルビーC録音してみると、曲のジャンルによっては音に違和感が激しく出る。

【メーター・操作ボタン基板】
メーターの表示が小さい点が惜しい。オートチューニング機能を搭載するためにボタンが多くなり、メーターを配置するスペースが狭くなってしまった雰囲気を感じる。

 

デッキの分解画像

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【メカニズム】
GX-F71の世代からメカニズムが一新され、以降の3ヘッド機ではスタンダードとなった。

【カセットホルダを外した状態】
最終モデルのGX-Z9100EV/7100EVでも同じような構造をしている。ところが若干の違いがあり、GX-F71のメカは、回転センサーが右側の巻取り軸にしか付いていない点で判別できる。

【キャプスタン部分を切り離した状態】
このような分解方法も後年の3ヘッド機と同じ。ただしGX-F71は配線がコネクタ接続ではなく、直にハンダ付けである。そのため配線の印づけなど管理をしておかないと大変なことになる。

【メカニズム全分解】
GX-F90に搭載されている旧型メカニズムに比べると、分解の難易度は易しくなっていると思う。ただし、配線が直にハンダ付けなのはどちらも同じ。

 
撮影に協力してくださった方
・埼玉県 「tochan」さん

 

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