概説
1986年ごろに登場したオートリバースデッキです。1985年登場のGX-R60からマイナーチェンジされ、型番にEXが付きました。
上位モデルのGX-R70EXで搭載されている、電子式ボリューム、録音レベルの自動調整(CRLP機能)、リニア分数カウンターが省略されています。それでもdbxノイズリダクションはしっかり搭載。1984年ごろ登場のGX-R66から続く、AKAIのミドルクラスオートリバースデッキの基本形は変わっていません。
録音/再生ヘッドはツインフィールドスーパーGXヘッド。AKAIのオートリバースではお馴染みです。強い耐摩耗性をもちながら、3ヘッドと殆ど変わらない音質を実現します。録音面ではバイアス調整ができず不足感がありますが、再生では文句なしの音質です。
製造から35年以上経過した現在では、半導体部品の故障が懸念されます。上位モデルのGX-R70は電子式のボリュームのため、故障するとなす術がありません。GX-R60は一般的なボリュームなので逆に長寿命です。
3つの機能が省略されているほかは、メカニズムからアンプまでGX-R70と全く同じです。ツインフィールドヘッドの凄さをぜひ体験してほしい1台です。
GX-R60EXの音質
徹底的に分解する。
GX-R70EX、GX-R60EX、ともに同じ構造のメカニズムが使われています。
この種のメカニズムでは、故障して動かなくなるケースは少ないです。しかし、潤滑油(グリース)の劣化は進むにつれて、動きが鈍くなります。すると、部品に余計な力が加わって悪い場合は破損してしまうリスクもあります。ですから、一見問題なく動いていても、分解整備はぜひ行っておきたいものです。
GX-R70EXから省かれた部分
外から見た違いは、電子式ボリュームではなく、通常のスライド式ボリュームに変わっている点などがあります。
では、本体の内部では、どのような違いがあるのでしょうか。
まずは、前面のパネルを外した、緑で囲んだ部分です。ここには本来、電子式ボリューム用のボタンがある基板が配置されます。よく見ると、基板を差し込むための穴であったり、ネジ用の穴があったりします。R60EXではこれらが省略されて、奥にスライド式のボリュームが設置されています。
また、上位機種のR70EXには、録音レベルの設定を記憶する機能があります。その機能のための回路が、緑で囲んだ部分です。R60EXは機械的なボリュームなので、記憶用の回路は必要ありません。画像を見ると、電子部品が実装されていないことが見て取れます。そもそもスライダーの位置で物理に記憶できます。
大きなアンプの基板にも、省略されて閑散としている部分があります。
配線の管理に注意。
R60EXを分解整備をする際に気を付けるのは、メカニズムの背部にある配線です。モーター、スイッチ、センサーなど、メカニズムの動作に関わるものがここの基板に集まっています。いくつか外さなくてはならない線があるので、後から分かるようにマーキングが必要です。
音が左側しか出ないトラブル
基板のはんだ付け部分に亀裂(クラック)があったことが原因で、音が出なくなってしまったトラブルです。
具体的なこのような状態です。メーターが左しか振れていません。
動画では録音スタンバイの状態ですが、テープ再生時も左側しか音が出ません。ただし再生時のみ、メーターが両方振れるという不思議な現象が発生していました。
その発生原因が、画像の部分にありました。赤で囲んだ部分です。
ここにはメーター表示用の回路があって、アンプの基板からケーブルを伝って入力されます。つまり、ここに音が入力されなければ、メーターが振れないということです。また、ライン入力の音声は、一旦この部分を経由して再びアンプ基板に戻る構成になっているため、音も出ないというわけです。
赤の部分をさらに拡大してみましょう。はんだ付けの部分に注目してください。
よく見ると、左から3番目と一番右のはんだに亀裂が入っているのがわかります。
音が出ない症状というと、反射的に電子回路を疑ってしまうかもしれませんが、このような簡単な原因であることもあります。いきなり深刻に疑わず、まずは簡単な原因から探っていくのが良策です。