概説
1984年ごろに登場したミドルクラスのオートリバースデッキです。一番のチャームポイントはテンキー。カセットデッキにテンキーを付けてしまった変態デッキです。
このテンキーの使い方は2つ。1つは、曲順を指定するときに使います。現代の言葉に言い換えるならプレイリストでしょうか。好きな曲順で再生するときにテンキーで何曲目かを入力します。
今はもうスマホで簡単にプレイリストを作れますが、それをカセットテープでやってしまいます。選曲のためにデッキが一所懸命にテープを巻く動作を眺めると、テープでランダム再生するもんじゃないなという気持ちになります。そもそも、プレイリストごとに1本1本テープを作る方が主流だったのではないでしょうか。
もう1つはイントロスキャン機能で使います。曲の頭だけ再生しながら次々に送っていく機能で、何が録音されているか確認するのに便利です。GX-R66ではテンキーで再生する秒数を指定できます。他にもイントロスキャン機能が付いているデッキはありますが、再生秒数を指定できるのはGX-R66だけです。
ただ、残念ながら必要な機能かといわれたら…ちょっと答えに困ってしまいます。実際にそうだったためか、1985年登場のGX-R70とGX-R60では廃止されてしまいました。変態機能はとてもは面白いですが、残念ながら短命に終わってしまうようです。
ボディーカラーは、「ブラック」「シルバー」の2色が展開されました。
GX-R66の音質
徹底的に分解する。
R66のメカニズムの特徴は、キャプスタン用と、メカニズム動作用の、2つのモーターで構成している点です。少し厄介な構成となっています。
特に、キャプスタンを回すモーターが、テープの巻取りも兼用している部分がネックです。動力の断続を行う機構が必要になる分、部品点数も多くなって、構造が複雑になります。
一般的な2つのモーターで構成されているメカニズムは、キャプスタン用と巻取り用で構成されています。ヘッドの上昇動作だけ、ソレノイドを使った機構で再生するときにキャプスタン用モーターから動力を貰います。このようなタイプは、それほど複雑な構造にはなりません。
再生時と早巻き時で、リールの回し方が違う。
再生するときは、左右についている黄色のアイドラーという部品がリールを回します。
この方法は、キャプスタンから動力を貰っているため、リール用のモーターを回す必要がありません。つまり、モーターから発生するスパークノイズを防ぐことができます。
早送りや巻戻しの時は、真ん中の部分の奥に見える歯車が高速回転させます。
組み立て時、光学センサーに異物が付着しないように注意。
GX-R66では、メカニズムの動作制御に珍しく光学センサーを使っています。
メカニズムが今どの状態かを判断する方法には様々あります。部品の凹凸を利用してスイッチを押したり、ロータリエンコーダーを使ったり、等々あります。
黄色で囲んだ部分にセンサーがあります。ちょうどこの部分に、歯車側には穴が開いています。
センサーの上に歯車の穴が位置している時が、テープが停止の状態です。再生状態から停止ボタンを押すと、センサーが歯車の穴を検知するまで、モーターが歯車を動かすという仕組みです。
ここで組み立てる際に光学センサーに汚れやグリースなどを付着させると、穴を検出できなくなります。すると、モーターが暴走してしまいます。
歯車の噛み合わせだけでなく、センサーにも気を配る必要があります。
メーターが故障するトラブル
メーターを表示する回路にあるトランジスタの故障が原因で、常に振り切れた状態になったり、ランダムに振れたりという症状がありました。
こちらが故障したトランジスタです。試しにこのトランジスタから出る信号をスピーカーに接続すると、ノイズまみれでした。ノイズがメーターを振らせてしまったと考えられます。
さらにこのトランジスタは、リーダーテープを検出するセンサー回路にも使われています。後に同回路もトランジスタが原因で、センサーが誤作動する症状がでました。特に、頭出しモードで早送りすると、勝手に裏面の選曲をしてしまう症状が厄介でした。連続再生を有効にしておくと、絶え間なくその動作を繰り返してしまいます。
テンキーがあるが故、ボタンの数が多い。
GX-R66の特徴はなんといってもテンキーです。
基板を取り外してみると、ボタンの多さが目に留まります。緑で囲んだ3×3の配列になっているのがテンキーの部分です。
全部でボタンは29個です。カセットデッキの中では断トツで多いでしょう。
後から増設?された電解コンデンサー
GX-R66の電源回路基板の裏側を見てみると、1000uFの電解コンデンサーが後付けされています。
ほかのカセットデッキでも、後付けされている電解コンデンサーは見かけます。