概説
1985年に発売されたGX-R70のマイナーチェンジ版とも言えるカセットデッキです。
マイナーチェンジ前と比べると大きな変化はありませんが、1986年に発売されたGX-93、GX-73を意識したデザインに変わるなど小変化があります。パネルに印字された文字の字体から、このようなことが読み取れます。
中身も大きな変化はありませんが、電子部品が高性能なものに変更されています。特に電解コンデンサーは一目で判別できます。キャビネットを開けた時に、黄色のコンデンサーが姿を現したらGX-R70EXです。(チェンジ前のGX-R70は黒色です。)
もちろん、GX-R70EXとなってからも、ノイズリダクションで最も効果の高いdbxを搭載している点や、2ヘッド方式でも3ヘッド並みの音質を期待できる「ツインフィールド・スーパーGXヘッド」は健在です。
録音と再生を1つの磁気ヘッドで賄う一般的なオートリバースデッキの中で、GX-R70EXはトップに位置することに相応しい1台でしょう。
GX-R70EXの音質
メカニズムを分解するには
GX-R70EXの分解は、前⇒後ろ⇒前の順で進めていくと効率的です。この分解方法は、ワンランク下のグレードのGX-R60でも有効です。
分解で気を付けるべきところは、配線のはんだ付けです。リーダーテープ検出用のセンサー、録音防止用のスイッチ、開閉スイッチ、これら3つは分解に際して外さなくてはなりません。
メカニズムには配線を集約するための小さな基板が付いてます。たくさんの配線がありますが、この中から外すべき線だけを外していきます。この工程が少々手間になりますが、ここさえ成功すればさほど難しくありません。組立てる際に元通りに接続しますので、配線に印をつけます。
故障事例:電源を入れてもまったく操作ができない
構造的にはあまり故障はしにくいGX-R70EXですが、ボタンを押しても全く操作ができない故障事例がありました。その原因が写真のように、もともと歯車に付いていた金属の接点が外れてしまったものによるものでした。
この金属の接点は、コンピューターに現在のメカニズムの動作状況を知らせるための信号を作り出す重要な部品です。これが外れてしまったことにより、コンピューターの動作が狂ってしまい、まったく操作が出来なくなったという状態に陥りました。
経年で接着が剝がれてしまっただけですので、もう一度接着しなおせば修理ができます。より強固に接着するために、しっかり脱脂洗浄した上、強力な瞬間接着剤を使って貼り付けます。
ピンチローラーが変形すると音揺れの原因に。
先ほどの操作できない故障で、実は常にピンチローラーとキャプスタンが密着された状態になっていました。これが影響して、ピンチローラーの表面に窪みができてしまいました。
実はこの窪みが再生に大きな影響を及ぼします。修理を終えて再生の動作はできるようになっても、この窪みがあることで、音が周期的に揺れます。特に、ピアノ系の曲では目立ちやすいです。
このような場合は、ピンチローラーを交換するしか方法がありません。新品に交換する、もしくは同じ機種のデッキから移し替えるの2択です。仮に研磨するにしても、ローラーの直径をかなり小さくすることになり、再生に影響を及ぼす恐れがあることからお勧めは出来ません。
交換する電解コンデンサーは120以上。
デッキ本体の奥行は短いですが、交換する電解コンデンサーは非常に多くあります。カセットデッキに使われる電解コンデンサーの数はおよそ100個が平均であるところ、GX-R70EXは120個以上あります。
電解コンデンサーが多くなる要因としては、dbxを搭載しているか否かではないかと推測しています。ノイズリダクションは、集積回路(IC)で処理が行われることが殆どです。ですが、ICのみでは使えず、抵抗、コンデンサー、コイルといった受動素子と組み合わせて使います。そのため、ノイズリダクションの種類が増えると、どうしても部品数は増えてしまいます。