西村音響店

A&D GX-Z9100

ページ作成日:2018/11/2
最終更新日:2025/12/27

 

概説

1988年に登場した、A&Dブランド最上級モデルのカセットデッキです。GX-Z9000の後継モデルとして登場しました。薄型デザインから一転して、厚みのある堅牢な容姿へとモデルチェンジしました。フラッグシップモデルの証となるサイドウッドも引き続き装着され、さらに艶出し加工を行ってさらに高級感を増したモデルになっていると思います。

薄型のボディから、高さ15cmのデザインへと進化したのは、電子回路基板1枚1枚に個室を設けるレイアウトを採用したためで、「セパレートブロック・コンストラクション」といいます。基板を密室に閉じ込めることで、電源トランスから発出されるハムノイズなど、空中から混入する有害ノイズを抑制する工夫をしています。なお、GX-Z9100ではシャーシが銅メッキ仕様となります。

GX-Z9000で搭載されていた、ヒスノイズが皆無になるdbxノイズリダクションは残念ながら搭載されていません。ドルビーのBタイプ・Cタイプの2種類のみの搭載となりました。ただ、元号が昭和から平成に変わると、どのメーカーもdbx搭載のモデルを廃していきました。

GX-Z9100からは新機能として、録音レベルとバイアス調整を補助するキャリブレーション機能が搭載されました。これで耳で聴きながら調整をしなくても、メーターで視覚的に調整状態を確認できます。なぜGX-Z9000に搭載されていなかったのかが不思議です。

他にも、CDダイレクト端子、ドルビーHX-Pro(ON/OFF可能)、16曲までの複数の曲を一度にスキップできる機能、1/2のスピードで再生する機能などと、数々の新機能を搭載して登場しました。

今まで薄型のデザインが多かったAKAIですが、ごついA&Dへと変わっていきました。昭和から平成へ時代が移るころ、各社とも厚みのあるデッキが多くなっていっているので、カセットデッキにも何か流行というものがあったように感じます。

 

GX-Z9100の構造&搭載機能

ヘッド 3ヘッド方式(録音/再生:スーパーGXヘッド)
メカニズムの駆動 ロジックコントロール(カムモーター駆動)
キャプスタンの回転 ダイレクトドライブ (クォーツPLLサーボ)
テープの走行方式 クローズドループデュアルキャプスタン
カセットホルダの開閉 パワーローディング
スタビライザー あり
テープセレクター 自動(ノーマル・ハイポジ・メタル)
ノイズリダクション ドルビーB/C
ドルビーHX-Pro ON/OFF切替可能
選曲機能 あり(複数曲スキップ可能)
メーター デジタルメーター(0dB=250nWb/m)
ライン入力 RCA端子2系統(LINE-IN, CD-DIRECT)
ライン出力 RCA端子1系統
キャリブレーション機能 あり(400Hz, 10kHz)
カウンター 分数表示
その他の機能
  • メモリーストップ(カウンター00.00で巻戻しを自動停止)
  • RECキャンセル(録音を中断し、その曲の始めまで巻戻し)
  • A-Bリピート(指定区間だけ再生)
  • 半速再生・消去(一部分だけ消去したい時に便利な半速モード)
  • ディスプレイ消灯

 

GX-Z9100の特徴

◎GX-Z9000からのフルモデルチェンジ(セパレートコンストラクションを採用)
◎摩耗知らずのスーパーGXヘッド
◎クォーツPLLサーボ・ダイレクトドライブ
◎メカ構造は従来のままカセットスタビライザーを追加
○マニュアルキャリブレーション機能
○グロス仕様のサイドウッド

 

関連機種

 



 

音質サンプル

テープ:マクセルUDⅠ(1987年)
ノイズリダクションOFF
音源:Nash Music Library

【フュージョン・ロック】48kHz-24bit 容量26.2MB

—–

【フュージョン・ロック】★他機で録音したテープ 録音デッキ:TEAC C-3  48kHz-24bit 容量34.4MB

無圧縮音源ファイルのためデータ容量が多くなっています。ご注意ください。

 

 

外観の詳細画像

サムネイル画像をクリックすると拡大画像をご覧いただけます。

【前面左側】
セパレートブロックコンストラクションを採用し、高さのある筐体に。無印はカセットホルダリッドがアクリル製で、改良型の9100EXは枠が金属製になります。
【カセットホルダ・開】
メカ自体は従来と同じなので開き方は特に変わりはありません。
【前面中央】
キャリブレーション機能が追加されたため、録音感度補正とバイアス調整のボリュームがあります。RECボリュームは内側と外側の軸でバランス調整するタイプに変わりました。
【前面右側】
テープの操作ボタンのレイアウトは9000から大きく変わっていません。ノイズリダクションのスイッチが右下にあるのも同じです。9100からはキャリブレーション、HX-PRO、CDダイレクトのスイッチが追加されました。
【ディスプレイの表示】
【キャリブレーションモード時】
【入出力端子】
CDダイレクト端子が新たに追加されました。この端子はインピーダンスが高くなっており、通常より倍くらい多めにボリュームを上げる必要があります。
【型番・製造番号】
【ヘッド部分】
従来のままスーパーGXヘッドで特に変更はありません。ただ同じGXヘッドでもアンプ回路はまったくの新規設計ですので、9000とは異なった音質になります。(それでも音が硬い特徴は残っている)
【カセットスタビライザー】
平らなソルボセインで面でカセットを押さえるスタビライザーです。しかしカセットハーフを押さえる圧力が偏りやすいためか、改良型の9100EXからはイボイボ状になって点で押さえるタイプに変更されました。

 

デッキの内部

サムネイル画像をクリックすると拡大画像をご覧いただけます。

A&D GX-Z9100 上層階(電源回路・制御系回路)
【電源回路と制御系の回路】
9100/7100の最大の特徴は「2階建て」。キャビネットを開けると見えるのが2階。デッキの下面を開けると、アンプがある1階にアクセスできる。A&Dのステッカーが貼られた電源トランスがカッコイイ。
A&D GX-Z9100 下層階(アンプ)
【アンプ基板】
緑色の四角い部品は、いかにも高級そうなフィルムコンデンサ。あちこちに実装されており、先代の9000よりも気合が込められているように感じる。ちなみに下位モデルの7100は、高級コンデンサの数が減らされている。
A&D GX-Z9100 下層階(バイアス発振回路)
【バイアス発振回路】
GX-Z9100からは新たにドルビーHX-Proが搭載された。スイッチでON/OFFを切り替えることもできる。
A&D GX-Z9100 再生アンプの拡大
【再生アンプ拡大】
先代の9000はオペアンプで増幅する回路だったが、9100では単体のトランジスタで構成する回路に回帰。音質も大きく変わり、9100では中高音を意識した雰囲気になっている。
GX-Z9100に使われている日立製ドルビーIC
【ドルビーNR用IC】
日立製のICで、先代の9000と同じものが使われている。ソニーのデッキで録音されたテープとは相性がイマイチ。

 

デッキの分解画像

 
サムネイル画像をクリックすると拡大画像をご覧いただけます。

【メカニズム脱着】
9100/7100系列共通の手順です。前面パネルと、デッキ底部を開けた状態で脱着します。さらにメカのすぐ後ろにある電源回路基板も一時的に避けておくと、スムーズにメカを下ろせます。
【メカ前側と後側を分離】
オーバーホールするために前側と後側に切り離しました。ここまで行わなくても動作できる状態に修理することは一応できますが、きっちり修理したければしっかり分解します。
【メカ前側・部品交換後】
消耗部品であるピンチローラーとアイドラーゴムを交換しました。メカ部品は完全分解して徹底的に洗浄しましたので、見た目も綺麗な状態で組み上げています。
【メカ後側・部品交換後】
カムモーターとキャプスタンモーターがある、後側のブロックです。元々は整備済みのオークション出品物だったのですが、整備状態が悪くゼロから組み直すことになりました。
【ヘッドブロック取り外し】
分解時の様子です。純正で付いているグリスは飴色のグリスですが、黒色に変わっているという事は前任者が恐らく分解しています。よく見ると元々のグリスが僅かに残っています。
【メカ前側分解】
メカベースの左下辺り(ピンチローラーアームが付く軸)に古いグリスが残っていました。グリスアップをするなら古いグリスをきっちり除去してから行ってほしいです。
【フライホイール】
GX-Z9100の電源トランスの裏
【電源トランスの裏側】

 

 

参考周波数特性

画像にマウスオン(タップ)すると周波数軸が線形に変わります。

【TYPEⅠ】マクセル UDI (1987年)


【TYPEⅡ】TDK SA (1987年)


【TYPEⅣ】TDK MA (1988年)


 

 

これまでの作業実績

2025年11月 千葉県 ササキ様

 

2020年7月 埼玉県 eagle39様

 

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