概説
1990年、赤井電機が最後に世に送り出したフラッグシップカセットデッキが、このGX-Z9100EVです。型番に9100が付くモデルとしては3代目にあたります。
サイドウッドが樹脂製パネルに変更となったほか、ボタンやツマミの形状が丸みを帯びたデザインになるなど、外観にも変化があります。さらに、いままでワンランク下の7000番台のモデルにはサイドウッドが省略されていました。しかし、GX-Z7100EVになって同じ樹脂製パネルが装着されました。残念ではありますが、フラッグシップモデルとの差別が薄れてしまったように思います。
外観も小規模ながら変化がありますが、中身はフルモデルチェンジ級の変更がされています。アンプの回路は全く別物の設計になり、音質は前モデルと大きく違います。しかし正直にお伝えすると、進化したのか退化したのか判断ができかねるような変化です。
ノイズリダクションは変わらず、ドルビーのBタイプ・Cタイプを搭載。ただし1つ変更点があります。ノイズリダクション用のICが、日立製からソニー製に変わりました。ソニー製のICは様々なメーカーで採用されています。そのため、他のデッキで録音したテープも互換性がとれやすくなっているのではないかと思います。参考までに、ソニーのデッキとAKAIのデッキは相性がよくありません。ドルビーを掛けると音に違和感が強く出ます。
録音/再生ヘッドにも大きな変化がありました。搭載するヘッドは、AKAIで長らく採用されてきた摩耗に非常に強いスーパーGXヘッドです。しかしGX-Z9100EVではさらに進化し、録音ヘッドと再生ヘッドがそれぞれ独立してマウントされる、ディスクリートヘッドとなりました。特に録音時では、アジマスずれを最小限に抑えられるメリットを発揮します。
電子回路基板1枚1枚に個室を設ける、「セパレートブロック・コンストラクション」という構造は変わりません。GX-Z9100EVではシャーシが銅メッキ仕様となっています。ワンランク下のGX-Z7100EVは普通のシャーシですので、ここはまだ差別化の部分が残っています。
キャプスタン回転のクォーツロック制御の有無も変わりません。GX-Z9100EVはクォーツ、GX-Z7100EVはコンデンサと抵抗(CR回路)で構成するFGサーボ方式です。
周波数特性も改良されています。メタルテープ使用時は、最大23,000Hzまで信号を切り落とすことなく録音ができます。CDに録音できる周波数範囲をゆうに超えます。CDからの録音では若干オーバースペックに見えますが、余裕のある録音ができると思えば納得です。これだけの性能であれば、レコードからの録音で本領発揮することと思います。
録音性能で選ぶなら、このGX-Z9100EVはぜひお勧めしたい1台です。ただ、個人的にはワンランク下のGX-Z7100EVもお勧めしたいと思います。少しお手頃なうえに、録音性能は変わりません。ただしGX-Z7100EVでは、アンプの回路が全く違うために音質も異なります。
総合的にみれば、両者の相違点は音質くらいといってよいかもしれません。となれば、GX-Z9100もGX-Z7100も序列は付けがたいと思う次第です。
外観の詳細画像
デッキの内部
デッキの分解画像
【メカニズム全分解】 メカニズムの構造は1982年のGX-F71の世代から変わらない。 |
【取り外したアンプ基板】 配線が1階と2階を行き来しているため、基板を外すには時間がかかる。配線を通すための小さな穴が各所に開いていて、建物でいう階段である。 |
・埼玉県 「eagle39」さん (製造初期の9100EV)