概説
1980年ごろのビクターの中級クラスにあたるモデルです。上の機種に、KD-A66、KD-A77がラインナップされています。
KD-A55は、録音と再生を共有して使う2ヘッド方式で、センダストという金属を使ったヘッドを使っています。ビクターでは「センアロイヘッド」と呼んでいます。
デザインで一番特徴的なのは、カセットテープのメカが右側にあるところで、ビクターの個性が光っています。他のメーカーでは左側が多いので、一段と目立ちます。左側に慣れていると、右側にあることに違和感を覚えてしまうかもしれません。どちらにしても、慣れれば普通に使えるでしょう。
ほかに、KD-A55の特徴的な部分を上げると、メーターの針が上下逆になっているところでしょうか。初めて見た時は、とても印象に残りました。普通は、下から上に向かって針が伸びています。KD-A55は逆で、大昔のトラックか何かに付いていたのか分かりませんが、つり下げ式のワイパーを想わせます。
1980年と古いデッキながら、曲のスキップと頭出しも可能です。1980年後半以降になると当たり前の機能になりますが、KD-A55は仕組みが少し違います。扉を開けてヘッドがある部分を見てみると、スキップと頭出しに使うための専用のヘッドが装備されているのです。選曲モードになると専用ヘッドがテープと接触して、曲と曲の空白部分を探します。選曲機能の初期型ともいえるかもしれません。年代が進むとこの方式は廃れて、再生ヘッドを軽く接触させる方法に変わります。
多くが左側もしくは真ん中にカセットテープのメカがあるので、初めて手にすると、とてもインパクトを与えてくれる1台だと思います。
ヘッドの数では、一応3ヘッドです。
普段は下がっていて、頭出しボタンを押すとこのヘッドだけが上がります。真ん中と左の大きいヘッドが、録音再生ヘッドと消去ヘッドです。消去ヘッドまでセンアロイヘッドを使っているところも魅力的です。大抵は黒色のフェライトヘッドが使われます。
消去ヘッド、録再ヘッド、サーチ用ヘッド、数だけでみれば3ヘッドデッキですが、残念ながらKD-A55は2ヘッドデッキの仲間です。
メカニズムをぜんぶ分解しました。
デッキが古いので、部品数も多いのかなと思ったら意外と多くありません。
コンパクトに設計されていると思います。2つのモーターと、3つのソレノイドを使う構成で、1980年代前半のカセットデッキには多い構造です。
KD-A55の中身。
カバーを開けて中をのぞいています。配線があちらこちらに行き来しているのは、古いカセットデッキには多くみられます。それでもKD-A55は少ない方でしょう。高級なデッキになるほど、さらに複雑になるので配線の管理が大変です。一回忘れると、もう戻せないかもしれません。
ゴム部品の交換。
年数が経てばベルトが悪くなりますので、新品に交換します。悪くなっても一応再生は出来たりするのですが、悪くなったままですと再生速度が不安定になる可能性があります。特に、音が少し低くようになっていると感じたら、お早めのベルトを交換をおすすめいたします。
画像に写っている平べったいベルトは、キャプスタン用のベルトで、もう1本カウンターを回すための細いベルトがあります。こちらは、伸びたり切れたりしてカウンターが回らなくなると、テープが回ってないとKD-A55が認識して独りでにテープを止めてしまいます。KD-A55のベルトはキャプスタン用とカウンター用の2本です。
ゴムベルトの交換だけではなく、もう1つ忘れてはいけないのがアイドラー用ゴムの交換です。アイドラーは、モーターの動力を貰ってリールを回転させる部品のことで、ここに使われているゴムが悪くなると、巻戻ししても最後まで巻き戻ってくれないなどの症状が出ます。ベルトと一緒でゴム製ですから劣化します。