西村音響店

Nakamichi DRAGON

 

概説

自動で再生ヘッドのアジマス調整を行うNAAC(Nakamichi Auto Azimuth Correction)を搭載した究極のカセットデッキ。

高音域の鳴り方(恐らく位相)を検知してモーターが再生ヘッドを動かします。再生中も常に鳴り方が監視されており、アジマスがずれていると判断した場合は即座に再調整が行われます。どんなデッキで録音されていても、常に100%に限りなく近い音質で再生するところがDRAGON最大のセールスポイントです。

キャプスタンはD.D.モーターを2基搭載し、左側と右側で独立して回転の制御を行っています。クローズドループデュアルキャプスタンに変わりはありませんが、左右の回転速度の差を絶妙にコントロールすることで、テープの張力(テープがヘッドに当たる圧力)が最適になるようにされていると思われます。

そして忘れてはいけないのが、DRAGONはオートリバースデッキであること。ナカミチのオートリバースデッキといえば、カセットテープ自体を回転させる超変態デッキが強烈です。DRAGONは回転しませんが、マルチトラックヘッドを使うことでリバース再生を可能にしています。

ただし、オートリバースが使えるのは再生時のみといった制約もあるほか、元々の構造が1wayに特化した設計であるので、リバースはおまけ程度に考える方がよいでしょう。

最後にDRAGONの素晴らしいところは、1982年頃から10年以上にわたって生産されたこと。普通は2~3年でモデルチェンジを行いますが、型番を変えず10年以上生産された例は少数です。長年の生産ということで途中で回路設計の改良も行われており、年式によって差異があるところもDRAGONの面白さです。

 



 

外観の詳細画像

サムネイル画像をクリックすると拡大画像をご覧いただけます。

Nakamichi DRAGON カセットホルダ・メーター
【カセットホルダ・メーター】
カセットホルダの開閉は手動式。余計な機構は付けないという考えなのか、超高級デッキにも関わらず手動式である。メーターは縦軸で、ドルビーレベルが0dBに設定されている。
Nakamichi DRAGON デッキ操作部
【デッキ操作部】
一方、キャリブレーションはテープの性能を100%引き出すために必要な事から搭載されている。それにしても、各テープポジションで操作するツマミを独立させてしまうのは流石ナカミチ。一切の妥協がない。
Nakamichi DRAGON 磁気ヘッド
【磁気ヘッド】
固定ヘッドタイプのオートリバースデッキなので、再生ヘッドは4トラックである。ヘッドの配置の関係で、録音ではオートリバースが使えない。
Nakamichi DRAGON 1993年製
【製造後期のDRAGON】
こちらは1993年製のDRAGONである。外観は全く同じであるが、時代にあわせて回路設計の変更・改良が施されている。音質も初期と後期で少し違う。

 

デッキの分解画像

サムネイル画像をクリックすると拡大画像をご覧いただけます。


【メカニズム前面】
NAACが搭載されているからメカニズムも特殊では?と思ってしまうが、特段変態な構造はしていない。ナカミチのデッキで多く使われているメカニズムである。

【メカニズム背面】
DRAGONはダイレクトドライブということで、モーターの駆動回路が背面に付いている。水晶振動子も付いているので、クォーツロックで制御していると思われる。

【NAACの動作ユニット】
DRAGONの代名詞でもあるNAACのユニットである。ここのモーターが回転するとワイヤーに連動して再生ヘッドが動く仕組み。しかし実は1000ZXLも、動くヘッドが違うだけで全く同じユニットが搭載されている。

【キャプスタンホイール】
ゴムベルトが掛かっていないがこれで正常である。DRAGONは左と右で独立してキャプスタンを回転させる仕様になっている。

【回転センサー用コイル】
D.D.モーターが2基搭載されているので、回転センサーも2つ付いている。

【D.D.モーター】
もちろん駆動用のコイルも2つ付いている。ただしDRAGONはフォワード・リバース関係なく、常に2基のモーターが動作している。アカイのGX-R99・GX-R88もモーターが2基搭載されているが、どちから片方しか動作しない。

【メカニズムを前側と後側で分離】
分解方法は他のナカミチのデッキと殆ど変わらない。この構造をベースに、機種に合った機能・装備を付けて毛を生やしていく形となっている。

撮影に協力してくださった方
・千葉県 「NAGISA」さん (製造初期)
・奈良県 熊木様 (製造後期)

 

 

Return Top