西村音響店

Nakamichi 480

ページ作成:2023/5/08

 

概説

1979年(昭和54年)に登場した、Nakamichiの正立透視型デッキで最もベーシックなシリーズの2ヘッド機。

他社でいう初級~中級機クラスの大きさの筐体に、Nakamichi内製メカと回路を納めています。逆さ向きの針式ニードルメーター、マニュアルテープセレクター、キャリブレーション機能は非搭載と、装備や機能はシンプルです。

2ヘッド方式のベーシックモデルでありながら、テープの走行はクローズドループデュアルキャプスタンです。このような構造はとても珍しく、Nakamichiと最初期のソニーにしか採用されていません。

テープ操作ボタンが独特で、押すと押されっぱなしの状態になるという、ボタンと言うよりはスイッチという表現の方が近いでしょうか。オートシャットオフはもちろん働きますが、スイッチは元に戻りません。そのため、カセットを入れ替えた途端に動作を開始してしまいます。連続で何本も巻戻しをするなら便利かもしれませんが、初見では戸惑う部分です。

480番代というとNakamichiの中では廉価感が否めないですが、音質は全く申し分なく、逆に廉価機だからと甘く思って聴いてみると驚くほどです。管理人が所有している、同じ2ヘッドのLX-3と比べると、音の味付けは素直で意外と癖が少ない点も良いです。LX-3の方がやや派手なので、好みによっては480の方が聴きやすいかもしれません。

現存数は少ないですが中古相場も比較的安く、Nakamichiのデッキに入門する方にお勧めしたいと思います。録音ではバイアス調整ができないなど不便さがありますが、再生機としては申し分ありません。

 

Nakamichi480の構造&搭載機能

ヘッド 2ヘッド方式(録再ヘッド:センダスト系RP-9E型ヘッド)
メカニズムの駆動 ロジックコントロール・カムモーター駆動
キャプスタンの回転 電子ガバナー式DCサーボモーター
テープの走行方式 クローズドループデュアルキャプスタン
カセットホルダの開閉 手動式(たるみ取り機能あり)
スタビライザー なし
テープセレクター
手動(再生EQ切替は別スイッチ)
ノイズリダクション
ドルビーB
ドルビーHX-Pro
なし
選曲機能 なし
メーター 針式ピークレベルメーター(0dB=ドルビーレベル200nWb/m)
ライン入力 RCA端子1系統
ライン出力 RCA端子1系統(レベル固定)
キャリブレーション機能 なし
カウンター 機械式3デジットカウンター
その他の機能
  • メモリーストップ機能

 

Nakamichi480の利点&欠点

◎2ヘッドながらクローズドループデュアルキャプスタン 
◎2ヘッドでも廉価さを感じさせない音質
○味付けは少な目ですっきり目のNakamichiサウンド
○Nakamichiのベーシックモデルながら内製メカを搭載
△Nakamichiでは少数派の固定レベルOUTPUT
△ヘッドホン端子は大音量のまま調整不可
△操作ボタンが独特で慣れにくい

 



 

録音サンプル

テープ:RECORDING THE MASTERS
ノイズリダクションOFF
音源:Nash Music Library

【フュージョン・ロック】容量53.3MB

【ファンキーポップ】容量58.2MB

96kHz-24bitのためデータ容量が多くなっています。ご注意ください。

 

外観の詳細画像

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【カセットホルダ】
リッドの窓は大きくテープの様子もよく見えます。シンプルな形状のリッドです。左下にあるヘッドホン端子は大音量すぎて実用性はイマイチです。音量調整不可。

【メーター・デッキ操作部】
メーターの照明は580番代に少し似ています。録音レベルは左ch右ch独立のスライドボリュームです。Nakamichiにしては珍しく、OUTPUTのボリュームがありません。

【テープ操作ボタン】
ボタンというよりはスイッチです。普通のデッキと大きく変わっているのは、テープエンドで自動的に停止状態になってもスイッチは復帰しません。そのままカセットを入れ替えると途端に動作してしまいます。

【Dolby・ポジション切替スイッチ】
テープセレクターは手動式です。ノイズリダクションはドルビーBのみです。

【ヘッド周り】
2ヘッドながらクローズドループデュアルキャプスタンという珍しい構成です。当時の3ヘッドデッキと遜色ない高性能・高音質なヘッドです。センダスト系のため中高音域の表現は滑らかですっきりしています。
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デッキの内部

オープン・ザ・キャビネット

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【電源部・ロジック部】
電源は非常にシンプルで、正電源用と負電圧用に1個ずつ平滑コンデンサがあるのみです。ロジック部にはマイコンが使われておらず、抵抗と単体トランジスタがずらっと並んでいます。

【アンプ部全景】
録音/再生の切り替えは、メカがワイヤーを引っ張って機械的にスイッチを動かて行います。

【録音用アンプ】
ノイズリダクション用のICはUA7300PC型で、ドルビーC登場初期まで使われます。隣の半固定抵抗は録音レベルの調整用です。ここは右ch用で、左ch用も近くにあります。

【メーター駆動回路】
写っている半固定抵抗はメーター調整用です。普通、Nakamichiのデッキは0dBで1.0Vの出力になる設計ですが、この480番代に限っては0dB=600mVという設計になっています。OUTPUTのレベルが固定である点を考慮したものと思われます。

【メカニズム】
Nakamichi内製のメカです。後年の廉価モデルでは社外製メカになって信頼性がやや低くなります。内製メカ搭載の廉価機という点もポイントです。

【メカニズムの底部】
メカ背後のスペースもある程度確保されており、脱着が比較的容易で整備性も良いです。

 

メカニズムの分解画像


 

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【前面パネル取り外し】
メカ部分を脱着するには前面パネルを外す必要があります。480はパネル側に何もついていないため、取り外しは比較的簡単です。

【メカニズム脱着】
メカの後ろにスペースがあるので、特に知恵の輪をすることなく脱着ができます。

【カセットホルダ取り外し】
整備の方法は同じタイプのメカニズムを搭載しているNakamichのデッキと同じです。480は廉価モデルに位置付けられますが、しっかりと内製メカが使われています。

【キャプスタン取り外し】
キャプスタン用のゴムベルトを見ると、折り目が付いていました。長期間動かしていなかった状態の個体に多いです。ゴムの表面も弾力を失っており、交換が必要な状態でした。

【メカニズム完全分解】
今回はオーバーホールを行うので、メカ部分は完全に分解しました。固着でピンチローラーが上昇しない状態でしたので、オーバーホールをして原因となっている古いグリースを完全に除去します。

【部品洗浄中】
比較的小さい部品はボウルにまとめて入れて一気に洗います。古くなって硬化したグリースは暫く浸け置きしないと落ちないことも多々あります。残っていると再び固着する原因になるので、しっかり洗います。

【部品洗浄後】
パーツクリーナーは冷たいので直後は結露ができます。完全に乾いた状態で組み立てるため、洗浄後は少なくとも一晩は寝かせています。

【交換したゴムベルト・アイドラー】
経年したゴムベルトはやはり形が悪くなっています。アイドラーゴムも表面がつるつるしていて要交換の状態でした。

 

 

撮影に協力してくださった方
・愛知県 カトウ様(2023年3月撮影)

 

 

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