西村音響店

Nakamichi 581Z

最終更新:2021/12/11

 

概説

 

1981年頃のナカミチの3ヘッドカセットデッキです。

幅50cmのワイドボディと横一直線のイルミネーションが特徴のナカミチ580番台。この581Zは、当時登場したばかりのドルビーCを搭載したディスクリート3ヘッドのデッキとなっています。ただし、一応3ヘッドとなっているものの、なんと録音同時モニター機能はありません。通常、3ヘッド方式であれば必然的に搭載されている機能ですが、何故か581Zでは不可能な仕様となっています。

不可能な理由はノイズリダクションのICにあります。581Zでは録音同時モニターを実現するために必要な個数のICを搭載していません。当時の状況で同機能を実現するには8個必要ですが、581Zは4個搭載となっています。一方、582Zでは必要な個数を搭載しているため、一般的な3ヘッド方式と同様に録音同時モニターが可能です。

ところで、録音キャリブレーション機能については581Zと582Zどちらも搭載しています。400Hzと15kHzのテストトーンを使い、リアルタイムで低音と高音のレベルをメーターで確認しながら、録音レベルとバイアス調整が可能です。しかし581Zは、録音同時モニターが不可能なのに、キャリブレーションは可能という点は、とても謎(?)な仕様となっています。

録音同時モニターが使えず、使い勝手は実質2ヘッドのような感じとなっています。表現が少し良くないかもしれませんが、いわゆる『なんちゃって3ヘッド』なデッキです。582Zは純粋な3ヘッド方式のデッキですが、581Zは色々変態要素が詰まったカセットデッキ通としては面白い1台だと思います。

ちなみに管理人が初めてナカミチのカセットデッキに触れたのは、この581Zでした。

 




 

外観の詳細画像

サムネイル画像をクリックすると拡大画像をご覧いただけます。

Nakamichi 581Z 前面左側
【カセットホルダ】
カセットホルダは左側です。開閉は手動式。ヘッド調整のためにどこが何のネジかを堂々と記してあるあたりがナカミチらしいです。
Nakamichi 581Z カセットホルダ
【カセットホルダ・リッド】
少し特異な形をしています。カセットホルダだけが変に浮き立たず、デッキ前面全体で一体感のあるデザインになっている点が良いです。
Nakamichi 581Z テープ操作ボタン・キャリブレーション操作部
【テープ操作ボタン・キャリブレーション調整部分】
操作ボタンは中央にあります。早送りと巻戻しの並びが左右逆になっている点は、初めて見るとちょっと違和感がありますが、すぐ慣れると思います。キャリブレーションの時は、小さな穴の部分にマイナスドライバーを差し込み、奥にあるボリュームを回します。
Nakamichi 581Z スイッチ・ボリューム部分
【スイッチ・ボリューム類】
ボリュームの形状が特徴的です。目盛も見やすく個人的にはなかなか使いやすいです。赤の電源ボタンの隣に不自然なスペースがありますが、582Zではここにモニター切換スイッチが付きます。581Zでは録音同時モニターができないため、省略されています。
Nakamichi 581Z ヘッド部分
【ヘッド部分】
ヘッドはナカミチでお馴染みのクリスタロイヘッドです。ヘッドの数自体は3つですが、同時モニター不可能な点が2ヘッド方式と変わらないので、いわゆる「なんちゃって3ヘッド」な構成になっています。
Nakamichi 581Z イルミネーション
【イルミネーション】
581Z・582Zで個人的に最も格好いいポイントはこれです。通電中はこのように電球のイルミネーションが灯ります。暗くした部屋に映えること間違いなしです。
Nakamichi 581Z デッキ背面
【デッキ背面】
入出力端子は1系統ずつです。MPXフィルターのスイッチが背面にあります。ちなみにソニーのスリーセブン(ESⅡは違う)もMPXのスイッチは背面です。
Nakamichi 581Z 型番銘板
【型番表示】
録音同時モニターはできないが見た目は独立懸架の3ヘッドということで、「Discrete Cassette Deck」となっているのだと思います。

 

デッキの内部

Nakamici 581Z デッキ内部の様子

 

Nakamichi 581Z デッキ内部を底部から
【デッキ底部を開けた状態】
向かって右側が電源と制御系の回路基板、左側がアンプの基板です。

【録音と再生のモードを切り替える部分】
黄色で囲んだ部分。581Zは金属ワイヤーで物理的にスイッチを動かし、モードを切り替えます。ここのスイッチを動かすのにある程度の負荷が必要で、ゴムベルトが劣化すると録音だけできなくなる症状が出ます。582Zにはありません。
Nakamichi 581Z ドルビー回路基板
【ノイズリダクション回路】
581Zはドルビー用のIC4個で、ドルビーCに対応しています。登場初期のドルビーCということで、左右で2個ずつ使います。黄色で囲んだコンデンサは経年で壊れるケースがあり、正常にノイズリダクションが働かなくなります。
Nakamichi 581Z ドルビー回路基板の裏側
【ノイズリダクション回路基板の裏】
コンデンサーの後付けや、回路のジャンピングがされていました。この年代のデッキではしばしば見かける光景ですが、ナカミチは盛大に行われているように思います。

 

デッキの分解画像

サムネイル画像をクリックすると拡大画像をご覧いただけます。

Nakamichi 581Z メカニズム
【取り外したメカニズム】
メカニズムの構造はナカミチお馴染みのものです。
Nakamichi 581Z カセットホルダを外した状態
【カセットホルダを外した状態】
機械式のカウンターなので、右側のハブ軸にゴムベルトが掛かっています。
Nakamichi 581Z メカニズムオーバーホール
【メカニズムを全て分解した状態】
ナカミチのメカニズムは、ヘッドブロックが取り付く部分と、ハブ軸が取り付く部分で、地板が2枚になっている点が特徴だと思います。
Nakamichi 581Z 取り外したヘッド
【取り外した録音・再生ヘッド】
録音ヘッドと再生ヘッドはこのように外すことができます。もしヘッドの劣化なので、他のデッキ間で移植を行う場合は、丸ごと交換の方が安全だと思います。(ヘッド単体まで分解したことはありません)

【ピンチローラー】
長期間動かされていないと固着を起こしている可能性があるので、一旦分解して綺麗に清掃します。

【メカに付いている金属ワイヤー】
581Zのメカの特徴的な部分です。カセットホルダの開閉と録音モードへの切換えを、金属ワイヤーを使って行います。
Nakamichi 581Z 582Z ゴムベルト
【ゴムベルト】
メカニズムの構造はナカミチではお馴染みですが、ゴムベルトの本数は機種によって異なってきます。581Zと582Zの場合は、ご覧のように4本使われています。

 

撮影に協力してくださった方
・茨城県 シダ様(外観の画像 2021年7月撮影)



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