概説
1980年に発売された高さ約8cmの薄型カセットデッキです。
このデッキの最大の特徴は、カセットを縦に入れる正立透視型ながら、筐体の高さはたった8cmであること。ソニーでは、フルサイズコンポで8cmの高さを実現したデッキは3機種あるようで、うち2機種はリニアスケーティングメカのTC-K88とTC-FX606Rです。
正立透視型ながら高さ8cmを実現できたのは、高さを低くした専用の録再ヘッド。当時のソニーは、メタルテープに対応するためS&Fヘッドを採用していましたが、それをベースにFX7専用にヘッドを開発したという事になると思います。
音質は以外にも素直です。低域から高域まで癖なく表現してくれます。F&Fと比べると音の硬さは和らいでいますが、他社の純粋なセンダストヘッドや、パーマロイとの複合ヘッドと比べると少し硬さを感じます。ただ音の線は適度に太く力強さもあります。
これだけ薄型ながら、キャプスタンの回転はクォーツロック付きのダイレクトドライブで、0.05%(WRMS)という優秀な安定性を誇っています。フライホイールが、ポータブル型の生録機並みという事を考えれば、かなり優秀と言えると思います。
機能に関しては質素で、バイアス調整の機構も無く、シンプルに録再するだけのデッキです。テープセレクターだけは手動切替で、フェリクロームテープや、検出孔の無い最初期のメタルテープにも対応します。
他にこのようなデッキは見当たらないソニーの特色が濃い1台ではありますが、メカやヘッドが専用品のため、万が一の際に部品取りで延命する事が難しいのが難点です。また当時の売れ行きが芳しくなかったのか、中古で出回っている個体も少ないです。
正立透視型で薄型を極めたユニークなデッキですが、ソニーのデッキの中の異端児的存在でもあろうデッキです。
TC-FX7の構造&搭載機能
ヘッド | 2ヘッド方式(S&Fタイニーヘッド) |
---|---|
メカニズムの駆動 |
ロジックコントロール・ソレノイド駆動 |
キャプスタンの回転 | ダイレクトドライブ(BSLグリーンモーター・クォーツロック制御付き) |
テープの走行方式 | シングルキャプスタン |
カセットホルダの開閉 | 手動 |
スタビライザー | なし |
テープセレクター | 手動 |
ノイズリダクション | ドルビーB |
ドルビーHX-Pro | 非搭載 |
選曲機能 | なし |
メーター | デジタルピークレベルメーター(0dB=250nWb/m) |
キャリブレーション機能 | なし |
カウンター | リニア分数 |
その他の機能 |
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TC-FX7の特徴
◎正立透視型ながら高さ約8cmの極薄ボディ
◎クォーツロック制御ダイレクトドライブ
○フェリクロームテープ対応
○意外と素直な音質。D5Mデンスケに少し近い感じ。
△バイアス調整機能は無し
△専用ヘッドのため交換が効かない
音質参考動画
テープ:RTM C-60
ノイズリダクションOFF
音源:Nash Music Library
【フュージョン・ロック】容量52.5MB
【エレクトロ系】容量57.2MB
※96kHz-24bitのためデータ容量が多くなっています。ご注意ください。
外観の詳細画像
デッキの内部
オープン・ザ・キャビネット
本体底部
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デッキの分解画像
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メカ動作音
参考周波数特性
【TYPEⅠ】RTM (現行テープ)
【TYPEⅡ】SONY ROCK (1981年)
※ROCKはJHFと同じ磁性体のため同じ特性が出ます。
【TYPEⅢ】SONY DUAD (1978年)
【TYPEⅣ】SONY METALLIC (1979年)
※ヘッドの状態やデッキの調整状態など個体差により、必ずしも同じ測定結果にはなりません。あくまで参考程度にお願いします。
YouTube動画でも紹介しました
これまでの作業実績
2024年6月 近藤様