概説
ソニーの最高級カセットデッキ「スリーセブン」の三代目として登場したのが、このTC-K777ESⅡ。フェリクローム(TYPEⅢ)モードは搭載されなくなりましたが、堅牢なスリーセブン専用メカニズムと、最高の音質を目指したツインモノ構成のアンプ回路は健在です。さらに、TC-K777ESⅡは電源トランスを2つ搭載し、制御用の電源とオーディオ用の電源をそれぞれ別のトランスで供給します。録再ヘッドは、独立懸架型のレーザーアモルファスヘッド。テープに記録された音を余すことなくピックアップし、プリアンプ回路へ伝えます。スリーセブンはTC-K777ESⅡをもって最後となりましたが、型番に「7」の付くカセットデッキは、1995年ごろにTC-KA7ESが発売させることになります。
これからスリーセブンを試してみたいとお思いの皆さま、TC-K777(初代)、TC-K777ES(二代目)、TC-K777ESⅡ(三代目)、どれにしようか悩むという方もいらっしゃるかもしれませんが、後ろに飛び出した2機の電源トランスに魅力を感じたあなたには、このTC-K777ESⅡがおススメです。
メカニズムの分解
(画像が自動的に変わりますので、分解の様子をご覧下さい。)
1980年発売のTC-K777から採用されている、スリーセブン専用のメカニズムです。ブラシ付きのDCモーターを一切使っていないことが大きな特徴で、キャプスタンの回転、リールの回転、どちらもブラシレスモーターを使用しています。初代のTC-K777から構造は殆ど変わっていませんが、カセットテープ挿入時に自動的にたるみを取る制御が入れられたり、リール台に錘が付けられたりと、少し改良が施されています。
独立懸架型レーザーアモルファスヘッド
TC-K777ESⅡが搭載する録再ヘッドは、録音ヘッドと再生ヘッドが分離している独立懸架型のアモルファスヘッドです。分離していることによって、テープにしっかり密着させることができるので、より良い音質を得ることができるメリットがあります。
オーディオ回路
向かって左半分が再生用、右半分が録音用です。一般的に音の増幅にはオペアンプというICが使われていて、1つのICで左と右の音、一緒に増幅することができますが、TC-K777ESⅡは左chと右chが独立しており、別々のオペアンプで増幅させています。これをツインモノ構成と呼びます。
2機の電源トランス
TC-K777ESⅡの大きなチャームポイントでもある、本体背面に飛び出している2つの電源トランスです。カセットデッキは、メカニズムなどの機器の動作を制御する回路と、音を扱うオーディオ回路の両方が必要です。通常は1つの電源トランスで間に合ってしまいますが、このTC-K777ESⅡは別々のトランスで電源を供給させることで、さらなる電源の安定化を図っています。
カセットデッキの中で、メカニズムの動作は特に電力を消費します。一つの電源トランスで供給しようとすると、メカニズムに電力を奪われてしまうため、電圧降下が発生してオーディオ回路に影響を与える可能性があります。そこで、制御とオーディオを完全に分離すれば、電力の奪い合いもなくなるので、より安定した電源供給が可能となるのです。
中までピカピカの状態に。
TC-K777ESⅡのキャビネットには、放熱のための穴(通風孔)があります。しかし、ここから埃が入って内部に溜まってしまいます。そこで、本体の底面にあるカバーを外し、溜まった埃を一掃します。外観は綺麗でも、中まで綺麗してこそ、本当の美品の状態であると思います。
小さな部品までしっかり脱脂洗浄。
よりスムーズな動作を取り戻すためには、このような小さな部品の洗浄がポイントとなります。古いカセットデッキでは、固着して動かなくなってしまうことが多くあります。そういった場合は、固着した部分にエタノールやパーツクリーナーを垂らして固着をほどくことで修理ができます。しかし音響店では、全ての部品を脱脂洗浄し、新しいグリースを塗ることで、100%固着を解消することを目指しています。