西村音響店

YAMAHA TC-800GL

ページ更新:2023/3/14

 

こちらのデッキはレンタルカセットデッキとして貸出サービスを行っています。
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概説

1976年(昭和51年)ごろにヤマハから発売された、デザインが非常に個性的なカセットデッキです。

唯一無二のこのデザインは、イタリアの工業デザイナーであり建築家でもある、マリオ・ベリーニ氏によって生み出されました。本体に記されたベリーニ氏のサインがその証です。

1970年代中盤にはメカニズムを斜めにして配置する、スラントメカニズムの設計が各社で流行していました。当時流行りのスラントメカニズムの特徴を活かし、本体ごと角度が付けられたデザインはTC-800GLの象徴となっています。TC-800GLには2色のバリエーションがあり、当ページで紹介しているブラックの他、アイボリーも選択が可能でした。

TC-800GLはデザインのユニークさだけが特徴ではなく、音質面でも機能面でも他のデッキの追従を許しません。

音質面では、TC-800GLのヘッドにはハードパーマロイを採用。滑らか且つ力強い中高音を奏でるサウンドで、後のK-1に続くようなヤマハサウンドが確立されているように感じます。当時の高級デッキで主流だったフェライトヘッドは、耐摩耗性には大変優れるものの、ノイズの多さによるSN比が弱点です。TC-800GLはパーマロイヘッドの利点を重視しつつも、高硬度化して耐摩耗性の弱点を補っています。

機能面ではピッチコントロール、AC電源・乾電池・12V-DC電源の3電源対応、フェリクロームテープ対応、etc…、屋内でも屋外でもあらゆるシーンでの録音再生に応えるマルチパーパスなデッキでもあります。

ユニークなデザインながらも、中身はしっかりとした高級カセットデッキ。マリオ・ベリーニ氏とヤマハが世に送り出した名機です。

 

関連機種

【TC-800】幾つかの機能を省略した廉価版
【Nakamichi 600/600Ⅱ】TC-800GLと同じく本体ごと角度が付けられたデザインを採用

 

TC-800GLの構造&搭載機能

ヘッド 2ヘッド方式(スーパーハード・パーマロイヘッド)
メカニズムの駆動 機械式(ガチャメカ)
キャプスタンの回転 DCサーボモーター
テープの走行方式 ワンウェイ・シングルキャプスタン
カセットホルダの開閉 手動式
スタビライザー なし
テープセレクター
ノーマルとハイポジは自動、フェリクロームは手動
ノイズリダクション
ドルビーB
ドルビーHX-Pro
なし
選曲機能 なし
ライン入力 RCA端子1系統
ライン出力 RCA端子1系統(可変・メーターも連動)
メーター VUメーター(-3dBと+4dBのPEAKインジケーター付)
キャリブレーション機能 なし
カウンター 機械式3デジットカウンター
その他の機能
  • 乾電池(単2×9本)・12V電源にも対応
  • ピッチコントロール機能
  • メモリーストップ機能(巻戻し時カウンター000で自動停止)
  • 録音レベルリミッター機能

 

TC-800GLの利点&欠点

◎偉大なデザイナーが手掛けた端麗な外観(欧風な雰囲気)
◎3つの電源に対応し、屋内外どちらの使用にも考慮されている
○’70年代でもヤマハサウンドは顕在(中高音まですっきり伸びクリアネスのある音)
○’70年代の機種ながらピッチコントロール機能付き
△外装が樹脂製
△スライドボリュームの操作が通常と逆(左側が大、右側が小)

 



 

自己録再音源

テープ:RECORDING THE MASTERS
ノイズリダクションOFF
音源:Nash Music Library

96kHz-24bitのためデータ容量が多くなっています。ご注意ください。(53.9MB)

 

外観の詳細画像

サムネイル画像をクリックすると拡大画像をご覧いただけます。


【ベリーニ氏のサイン】
TC-800GLの秀逸なデザインを生み出した、マリオ・ベリーニ氏のサインが1台1台にあります。サイン付きのカセットデッキは前代未聞です。

【カセットホルダ】
カセットを挿入する時は、カチッと音がするまでカセットを奥に押し込みます。取り出す時にEJECTボタンを押すと、カセットホルダが開くと同時にカセットが手前に迫り出してきます。

【メーターとスイッチ類】
針では追従できない信号は、緑(-3dB)と赤(+4dB)のランプで知らせます。フェリクロームテープ対応という事で、手動でFeCrポジションに切り替えるスイッチがあります。

【スライドボリューム】
ボリュームの操作部もデッキ全体のデザインに溶け込むような、よりフラットに近い形状です。滑り止めが設けてあって操作性も良いです。ただ、動かす向きが通常と逆(左側に動かすと大きくなる)である点はやや違和感があります。

【本体底部・端子部分】
電源コードはラジカセに多いメガネ型のコードを使用します。入出力はRCA端子で1系統ずつ。INPUTとOUTPUTの間に不自然に空いている穴ですが、元々DIN端子を搭載する計画だったのでしょうか…?

【銘板】
「日本楽器製造株式会社」と「HAMAMATSU JAPAN」の文字が輝かしいです。デザインは欧風ですが、製造はヤマハの本拠地である静岡県の浜松でされたことが記されています。

【可動式台座】
この台座を開いて設置します。この800GLは持ち運びも考慮しているため、このように収納できる設計になっていると思われます。

【電池ボックス】
据置型のデッキと思わせながら、電池駆動も可能な点も800GLの大きな特徴です。

【乾電池の入れ方】
台座の部分に書いてあります。単2乾電池を9本使用します。持ち運びを考慮しているとはいえ、電池だけで重量がかなり増えます。さらに電池の本数も不思議で、8本で12Vではなく、9本13.5Vです。

【ヘッド部分●】
『スーパーハードパーマロイヘッド』と称されるヘッドで、パーマロイ最大の弱点である耐摩耗性を、素材の高硬度化によって補っています。それでもフェライトヘッドには敵いませんが、滑らかで艶のある音はパーマロイでしか得られない音です。

 

 

デッキの内部

オープン・ザ・キャビネット

画像にマウスオン(タップ)してください。


 

サムネイル画像をクリックすると拡大画像をご覧いただけます。


【電源部】
据置型デッキらしく、しっかりと電源トランスに大容量の平滑用コンデンサが実装されています。

【スライドボリュームの裏側】

【アンプ回路●】
ぎっしりと詰まった電子部品と配線。時代を物語っています。ぎっしりと詰まっていながら、再生アンプにはオペアンプが使われています。これまでは殆どディスクリート部品で構成されていたため、この頃はカセットデッキにICが使われ始めた過渡期と言ってもよいでしょう。

【ドルビーNR用IC●】
シグネティクス社製のNE545です。1970年代後半のデッキによく使われているICですが、TC-800GLが1976年発売ということもあり、最初期のドルビーNR用ICと思われます。

【メカニズム部分●】
アンプの基板を避けると、その下にメカニズムが見えてきます。フライホイールは直径75mmと大型です。カタログ値におけるワウフラッターは0.057%と、当時としてはかなり優秀です。

【フライホイールを取外した状態●】
カウンター用のゴムベルトを交換するために、幾つかの部品を分解している様子です。格好良いデザインの反面、整備のしやすさではやや劣ります。

 





 

参考周波数特性

画像にマウスオン(タップ)すると周波数軸が線形に変わります。

【TYPEⅠ】RECORDING THE MASTERS (現行テープ)


 

【TYPEⅡ】

申し訳ありません。ただいま準備中です。

 

【TYPEⅢ】SONY DUAD


 

【-20dBテストテープによる再生周波数特性】

※ヘッドの状態やデッキの調整状態など個体差により、必ずしも同じ測定結果にはなりません。あくまで参考程度にお願いします。

 

YouTube動画でも紹介しました

 

撮影に協力してくださった方
・愛知県 あっせい様(2022年11月撮影)
・広島県 ニシヤマ様(2022年11月撮影)●印の画像

 

 

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