概説
1980年に発売された、ソニーの最高級モデル。TC-K777の型番から「スリーセブン」とも。
下位機種のTC-K555と比較すると、スリーセブン専用の設計がなられているなど、外だけでなく中まで最高級機に相応しい構成となっている。
ノイズリダクションは、ドルビーBのみを搭載。外付けのユニットNR-500を接続することで、ドルビーCも使用可能になる。本格的にドルビーCが搭載される1981年の寸前に発売されたため、デッキには内臓されていない。TC-K555は1981年の発売のため、ドルビーCが内臓されている。
録音/再生ヘッドには、センダストとフェライトを組み合わせた「S&Fヘッド」を搭載。発売から間もなく40年が経過しようとしているが、ヘッド表面に凹凸が生じているものは見かけず、大変摩耗に強いヘッドであることが窺える。
摩耗に強いヘッド、録音キャリブレーション、分解能の多いメーターの組み合わせによって、録音デッキとしても力を発揮する。特にヘッドの摩耗によって、録音ヘッドと再生ヘッドのアジマスに誤差が生ると、デッキが持つ録音性能を100%発揮することはできない。だからこそ、録音には摩耗に強いヘッドが必要である。
カセットリッドの開閉は機械式であるが、イジェクトボタンを押すと、ゆっくりと前にせり出し、そしてゆっくりとリッドが使用者に向い合せる。同じリッドを開く動作でも、高級機には演出という要素が欠かせない。
TC-K777で再生すると、透き通った美しい高音域が「これがスリーセブンの音だ」と、デッキが僕たちに覚えさせられる。
TC-K777の音質
スリーセブン専用のメカニズム
電子回路だけでなく機械的な部分(メカニズム)まで専用設計にするなど、ミドルクラスのTC-K555と大きく差別化が図られている。価格も4万円以上の差があり、一層特別なモデルあることが窺える。
多く採られている方法は、電子回路で差別化を図る方法、機能の一部を省略する方法、シャーシ(枠組み)を銅メッキにする方法といったものがある。これらの方法で差別化した場合の価格差は2~3万円となっている。
メカニズムを完全分解する
TC-K777のメカニズムは、部品点数の総計は多いものの、ある程度のまとまり(アッセンブリー)で分解することができる。
まずは大きく4つに分解する。カセットリッド、キャプスタン、リール、ヘッドブロックに分けることができる。このように分解したあと、さらに各部分を細かく分解してメンテナンスを行う。
故障の原因はグリースにあり。
画像は、ピンチローラーを上下作動させるためのレバーである。デッキが動かなくなる原因の多くは、グリースの固着である。
グリースとは、粘り気のある潤滑油で、液体と固体の中間の状態になっている潤滑油をグリースという。種類にもよるが、スリーセブンで使われているグリースの場合、劣化すると水分が蒸発し、接着剤のように固まる。
そのため、仮にベルトのみを交換して修理できたとしても、劣化したグリースを完全に落とさなければ再び故障してしまう。
こちらは、カセットリッドの可動部分である。再生不可能となる故障のほかにも、カセットリッドが開かない事例もある。
このような場合も、原因はグリースの固着である。完全に固着してしまった場合、力業でも部品を外すことができない。無理に外そうとせず、まずはパーツクリーナー等で少しづつグリースを軟化させることが先だ。
部品一つ一つには必ず役割がある
この部品は、左側(供給側)の巻取り軸についているものである。接着剤が劣化し、金属板が外れている。
この部分は補修しなくともデッキは動くが、それでは不完全。バックテンションが効かないため、再生中にテープが蛇行するなどして痛めてしまう。また、テープのヘッドの密着(ヘッドタッチ)が悪くなり、音質にも影響する。
修理をするときは、この部品はどの役割を担っているのか?を常に考えながら作業することが大切だ。
バックテンション = 再生中に送り出し側のリールにブレーキをかけて、テープに張力を与えること