西村音響店

SONY TC-KA7ES

最終更新日:2024/06/07

こちらの機種はレンタルサービスで貸出を行っています。詳しくはこちら

 

概説

1994年登場、ソニー最後のフラッグシップカセットデッキです。

前モデルのESJまでは、サイドウッドを装着して高級感を演出していました。しかしこのKA世代からは大きく変わり、側面はウッドではなく光沢感が強い金属パネルとなっています。ボタンやスイッチの配置は前世代のレイアウトを引き継いでいますが、前面パネルの上部に入った横一直線のキャラクターラインがポイントとなっています。

型番にKAが付くデッキは、KA3ES、KA5ES、KA7ESと3つのグレードがあります。もちろん「7」が最高グレードですが、「7」だけに与えられる特別仕様があります。特に金メッキが施されたヘッドは、KA7ESの代名詞的な装備だと思います。銅メッキシャーシも、これまでの最上位モデルに採用されてきたとおり、KA7ESにも与えられています。

音質はまるでCDと錯覚するような感覚です。特にCDから録音する時にKA7ESの真骨頂を発揮すると思います。CDから流れてくる信号を漏れなく拾って、カセットテープに収録するようなイメージでしょうか。前モデルから一新されたアンプ回路と、録音EQの無段階調整を交えたキャリブレーションもあって、CDの音をそのままそっくり忠実に録音できる点はKA7ESの凄いところだと思います。ドルビーSをONにして録音すると、カセットテープとCDの音の違いが殆ど判りません。

音質が素晴らしいデッキといえばナカミチもそうですが、ナカミチとはまた志向が違うと思います。若干ドンシャリに感じるところもありますが、ドンシャリでも不快感がなく、低音と高音のバランスが絶妙に取れていて凄いと思いました。

数あるカセットデッキの中で人気の高い1台で、驚くことに当時の定価を超えるような値段で取引されている事も多くなってきているようです。年々入手の難易度が高くなっていると思います。

カセットテープ全盛期の最後を飾った1台と言っても過言ではないKA7ES。しかし、時間と共に録音メディアがデジタルに取って代われていき、このKA代をもってソニーの高級カセットデッキの歴史に幕を下ろすこととなりました。

 

TC-KA7ESの構造&搭載機能

ヘッド 3ヘッド方式(録音/再生コンビネーション型・6N巻線レーザーアモルファスヘッド)
メカニズムの駆動 ロジックコントロール・カムモーター駆動
キャプスタンの回転 クォーツロック・ダイレクトドライブモーター
テープの走行方式 クローズドループデュアルキャプスタン
カセットホルダの開閉 パワーローディング
スタビライザー あり
テープセレクター
自動
ノイズリダクション
ドルビーB・C・S
ドルビーHX-Pro
ON/OFF切替可
選曲機能 あり(複数曲スキップ可)
メーター ピークレベルメーター(0dB=250nWb/m)
キャリブレーション機能 あり(録音感度・EQ・バイアス) 400Hz・3kHz・10kHz
カウンター リニア分数
その他の機能
  • メモリーストップ機能
  • オートプレイ機能(巻戻し終了後すぐに再生開始)
  • ディスプレイ消灯機能

 


 

音質

CAUTION!
非圧縮の音声データのため、容量がかなり大きくなっています。スマホなどのモバイル機器でお聴きの際は、Wi-Fiに接続することをお勧めします。

 

録音条件①

テープ:THE RECORDING MASTERS fox C-60
ノイズリダクション:OFF

【フュージョン系】 WAV 96kHz-24bit 53.2MB

【エレクトロ系】 WAV 96kHz-24bit 35.2MB

 

録音条件②

テープ:TDK MA (1990年)
ノイズリダクション:OFF

【フュージョン系】 WAV 96kHz-24bit 53.2MB

【エレクトロ系】 WAV 96kHz-24bit 34.5MB

 

音源:Nash Music Libraly

 

外観の詳細画像

サムネイル画像をクリックすると拡大画像をご覧いただけます。


【カウンターとテープ操作ボタン◆】
ソニーの上級モデルではお馴染み、前面左側にカウンターとテープ操作ボタン、そしてヘッドホン端子が配置されています。

【カセットホルダー◆】
電動開閉でスタビライザー付きです。ドアが完全に閉まってからスタビライザーがカセットを押さえつけるという動作が、前モデルと異なる点です。

【カセットホルダー開◆】


【メーターとボリューム・スイッチ類◆】
モニター切替スイッチがスリーセブンやESX・ESR世代の形状に似ています。ノイズリダクションはドルビーSにも対応しています。

【FLディスプレイの表示◆】

【キャリブレーション中の表示◆】
低音・中音・高音の3点でキャリブレーションを行えます。低音域は▶|◀のマークで調整状態が表示され、三角マークが消灯するように調整します。

【デッキ背面◆】
入出力端子は1系統ずつ。ESJ世代に引き続き、CDダイレクト端子は搭載されていません。
TC-KA7ES 銘板
【製造年と製造番号①■】
このKA7ESは、電源コードに「1997」の表記があります。パッドプレッシャーリダクションの突起が青色なので、いわゆる前期型にあたる個体です。

【製造年と製造番号②★】
こちらの個体は電源コードの西暦が「1995」となっています。前期の個体です。

【ヘッド部分◆】
形状はごく普通のコンビネーションヘッド。しかしKA7ESは、6N鋼の巻線を採用や、ヘッド側面に金メッキが施されています。下位モデルでは無く、KA7ESだけの特別仕様です。※ピンチローラーは交換済みのため純正とは異なります。

【ヘッドをマイクロスコープで撮影●】

 

デッキの内部

オープン・ザ・キャビネット■

画像にマウスオン(タップ)してください。

 

TC-KA7ES 制御系回路基板

【制御系回路■】
マイコンが小型になって、裏側に表面実装される形となっています。カウンターやテープ操作ボタンを繋ぐケーブルも、フラットケーブルになっています。ただ、電子部品の配置などには何となくESJ世代以前の雰囲気が残っています。

【電源部とメカニズム部■】
本体の真ん中にドカッと電源トランスが配置されています。本体の重心バランスは非常に良いです。手で持ち上げてみると、車でいう重量配分50:50のような感じがします。
TC-KA7ES アンプ部

【アンプ部■】
アンプは前モデルから大きく変わり、ディスクリート部品だけでなくチップ部品も採用されています。表から眺めると普通の基板に見えますが、裏面が凄いことになっています。
TC-KA7ES 電源回路
【電源平滑回路■】
エルナー製の大きな平滑用の電解コンデンサが付いています。実はESJ世代では5600μFのコンデンサが使われており、KA7ESでは4700μFと容量が減らされています。
TC-KA7ES アンプ部に採用されているエルナーのシルミック
【再生アンプ部の高級電解コンデンサ■】
エルナーのハイグレードコンデンサ「シルミック」が採用されています。ちなみにKA3ESはニチコンの「MUSE」で、コンデンサでも差別化されているように思います。(KA5ESは未確認)
TC-KA7ES ドルビー回路
【ノイズリダクション回路■】
ドルビーB・Cは従来通りのIC、ドルビーSは垂直に実装されている小さな基板が行います。他社でもドルビーSを搭載しているデッキがありますが、チップ部品でドルビーSの回路を組んでいるデッキはソニーだけでしょうか。
TC-KA7ES メカニズム部
【メカニズム部■】
メカの構造はESG世代から変わりません。万が一の場合は、下位機種や前世代の機種から部品どりすることも不可能ではありません。しかしヘッドだけは特別仕様のため、ダメになってしまうと痛手です。
TC-KA7ES バイアス発振回路
【バイアス発振回路■】
ここに録音ヘッドと消去ヘッドの配線が来ています。基板にある半固定抵抗を見ると、各ポジションごとにバイアス電流量を調整できるようになっています。

【奥に録音ヘッドのアンプ■】
録音ヘッドのアンプは、ちょうど再生ヘッドのアンプ基板の下に位置しています。

 

オープン・ザ・底板■

画像にマウスオン(タップ)してください。

TC-KA7ES 録音アンプ回路の裏側

【無数に並ぶチップ部品■】
KA7ES(恐らくKA5ESも一緒)は、基板の裏にもぎっしり電子部品が実装されています。カセットテープ絶頂期の最後の華を飾った世代を象徴するようなレイアウトです。
TC-KA7ES 無数に並ぶチップ部品
【チップ部品をアップ撮影■】

 

デッキの分解画像

メカニズム360°■

 

サムネイル画像をクリックすると拡大画像をご覧いただけます。


【メカニズムのマウント部分■】
銅メッキのシャーシに固定する形になっています。メカの下側からネジで固定されているため、取り外すには底板を外す必要があります。

【カセットホルダを外した状態■】
金メッキヘッドが目立ちます。このKA7ESはアイドラーのギヤが交換されていました。ギヤの色は普通は飴色ですが、黒色に変わっています。新しそうでメーカーサポート終了末期に修理を受けているのかもしれません。

【全分解したメカニズム■】
最高峰モデルとはいえど、メカの構造は下位機種と同じなので、スリーセブンのような特殊性はないです。万が一の場合は、下位機種から部品どりしてくる事も不可能ではありません。

【メカニズム前側■】
これから部品を組み立てるところです。ヘッドを取り付ける前に、白色の停止中リールをロックする部品を付け忘れると、少々面倒なことになります。

【メカニズム後ろ側のギヤ類■】
幾つものギヤを使って動かす構造は、ESG世代から使われているメカの特徴です。ゴムベルトの取り付け用に突起が用意されているのは嬉しいですが、それでもモーターのプーリーに引っ掛けるのに少し苦労します。

【ゴムベルトは純正品?■】
このKA7ESは先述のように末期に修理を受けたためか、ゴムベルトの状態も良かったです。しかも某電子部品屋で販売されている汎用品と違い、かなり弾力があります。ノギスで太さを測ると1.3mmと、恐らく純正品ではないかと推測します。

【キャプスタン部分■】
KA3ESとほぼ同じですが、KA7ESは左側のフライホイールに余分に錘が付いています。また画像では分かりませんが、キャプスタンモーターの軸受け部分で、KA7ESは両側にサファイヤを使用している点も違うそうです。(下位機種は右側のみ)

 

これまでの作業実績

2023年12月 愛媛県 HH様 ★


2023年11月 愛知県 おなかのでたじじい様 ◆


2023年6月 宮城県 tatsusony様


2022年2月 大阪府 seisane様

2021年7月 栃木県 cデッキ勉強中様


TC-KA7ES 背面

2020年2月

2018年10月

 

※「●」印が付いている画像は当方所有のKA7ESで撮影したものです。

 

YouTube動画でも紹介しました

2023/11/13投稿 機材協力:おなかのでたじじいさん

 

2021/7/17投稿 機材協力:cデッキ勉強中さん

 



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