概説
少し遅れて1991年、ドルビーSを搭載しV―4ケタ世代のハイエンドモデルとしてV-8000Sが登場しました。当時の標準価格は105,000円。V-7000とは3万円の差です。この3万円の差はドルビーSの有無…だけではなく、実はV-8000Sのキャビネットには防振対策が施されており、重量がV-7000と比べて少し重くなっています。カラーはゴールド1色のみです。
TEACのカセットデッキの魅力である、左右独立調整ができるキャリブレーション機能は、相も変わらず顕在です。そのため必然的にツマミが多くなってしまうのも、TEACのデッキではよくある事だと思います。V-8000Sはハイエンドの民生機とはいえ、ツマミやボタンの数が増えると、どこかTASCAM(業務用)の雰囲気が漂ってきそうです。1990年代になってモダンな外観になりましたが、昔からのTEACのごつい雰囲気は引き継がれているように思います。
ハイエンドモデルではありますが、音質はとても真面目です。これといった特徴がない音が特徴、良く言えば、非常にフラットな特性で癖のない忠実な音であると言えます。また、デッキ側の癖が少ない分、テープ側の癖が出やすいという一面もあります。現行品のRECORDING THE MASTERSでは高音域がクリアに。基準テープであるTDK SAになると、今度はフラットすぎて逆に少し驚きました。そしてSONYのテープなら、きっとドンシャリな音になるでしょう…
管理人自身も素直な音質が好きで、Vー4ケタ世代のTEACもお気に入りのシリーズです。V-8000Sをこれらのデッキで録音したテープを他のデッキで再生すると、そのデッキの特性や音質の癖が分かって非常に面白いです。色々なデッキやテープの癖をはっきり理解できるくらい、比較の基準にはもってこいなデッキだと思います。管理人の個人的な感想では、1990年代のザ・リファレンスデッキと思っている1台です。
1992年になると、型番に10が足されたV-7010、V-5010、V-3010が発売されました。カセットホルダリッドの形から、愛好家の中では鉄仮面と呼ばれるデッキです。しかしV-8000Sはマイナーチェンジが行われないまま、鉄仮面に変化することなく併売されました。V-8000Sのモデルチェンジは、1994年のV-8030Sまで待つことになります。
V-8000Sの構造&搭載機能
ヘッド | 3ヘッド方式(録音/再生コンビネーション型・コバルトアモルファスヘッド) |
---|---|
メカニズムの駆動 |
ロジックコントロール・カムモーター駆動 |
キャプスタンの回転 | クォーツロック・ダイレクトドライブモーター |
テープの走行方式 | クローズドループデュアルキャプスタン |
カセットホルダの開閉 | パワーローディング |
スタビライザー | あり |
テープセレクター | 自動 |
ノイズリダクション | ドルビーB・C・S |
ドルビーHX-Pro | 常にON |
選曲機能 | あり(複数曲スキップ可) |
メーター | ピークレベルメーター(-1dB=ドルビーレベル)・デジタル表示機能付き |
キャリブレーション機能 | あり(左右独立調整可) 400Hz・10kHz |
カウンター | リニア分数 |
その他の機能 |
|
V-8000Sの利点&欠点
◎左右独立調整可能なキャリブレーション機能
◎ドルビーSを搭載
◎スタビライザー付きなのにカセットのリールがよく見える
○音質の味付けや癖がない
○防振対策された重量キャビネットを装備
○RTZ機能が便利
△同時期の高級機と比べると音のレンジが少し狭く感じる
△高級機にしては少し平凡な音質
△サイドウッドではない
△カセットホルダリッドが樹脂で少し安っぽい
音質参考動画
テープ:RECORDING THE MASTERS
ノイズリダクションOFF
音源:Nash Music Library
無圧縮音源はこちら
【フュージョン・ロック】容量53.5MB
【ファンキーポップ】容量58.8MB
96kHz-24bitのためデータ容量が多くなっています。ご注意ください。
外観の詳細画像
デッキの内部
オープン・ザ・キャビネット
サムネイル画像をクリックすると拡大画像をご覧いただけます。
デッキの分解画像
サムネイル画像をクリックすると拡大画像をご覧いただけます。
その他の画像
参考周波数特性
【TYPEⅠ】RECORDING THE MASTERS (現行テープ)
【TYPEⅡ】TDK SA (1992年)
【TYPEⅣ】TDK MA (1990年)
※ヘッドの状態やデッキの調整状態など個体差により、必ずしも同じ測定結果にはなりません。あくまで参考程度にお願いします。
YouTube動画でも紹介しました
・大阪府 ワタナベ様(2022年4月撮影)