概説
1994年ごろに発売された、ティアックの最上位モデル。「ゴールド」「ブラック」の2色が展開された。
V-8000Sの後継となるモデルで、クォーツロックサーボ、ドルビーSは引き続き採用されているが、デザインが大きく変わった。V-8000Sの操作ボタンが左側、ボリューム類が右側というレイアウトに対し、V-8030Sではメーターを除いて左右を入れ替えた格好になっている。
また、本体の塗色も、ゴールドのV-8030Sについては色が濃くなって高級感がより増している。色だけでなく電照式のボタンも、V-8030Sのワンポイントになっている。
録音キャリブレーションも、もちろん左右独立して調整が可能。1970年代のデッキから続いている同機能は、ティアックの伝統といっても過言ではない。V-8030Sからコストダウンが図られた部分がある中、同機能は廃止されておらず、ティアックの拘りを感じさせられる。
音質は、癖もなく素直な音である。もし、低音が強かったり、あるいは中音が強かったりすると、曲のジャンルによっては聞きにくい音になってしまう。しかし、V-8030Sはそういった癖はなく、どのような曲でも聞きやすいオールラウンダーだ。
V-8000Sと比べると操作性では少々劣る部分があるが、デザインの美しさではV-8030Sに軍配を上げたい。ただし、TEACらしさという観点では、V-8000Sに少し負けてしまうのかもしれない。
V-8030Sの音質
テープが絡まってしまうトラブル
再生中に「ぐしゃぐしゃ」と音を立ててテープが絡まる現象は、誰しも恐怖に感じるトラブルの1つではないでしょうか。
その原因は、ピンチローラーの劣化と思うかもしれませんが、実は違います。大事なのは「バックテンション」です。
画像を見ていただくと、矢印で差したゴムベルトが脱落しているのがわかるかと思います。このベルトがテープ絡まらせる最大の原因です。
テープを左から右へ送る際、弛まないように張力を与えることが必要です。簡単な表現にすると、ほんの少しだけテープを引っ張ってあげるということです。
これが無くなってしまうと、テープが真っ直ぐ送られなくなり、絡まってしまうということになります。それでも直らなければ、テープパス調整にも原因がある可能性が高いです。
徹底的にメカニズムを分解
V-8030Sのメカニズムを完全に分解しました。
このメカは、ティアックに限らずヤマハでも使われている、サードパーティーのメカニズムです。万が一、部品を移し替えて修理する必要がある場合に、ドナーとなるデッキが見つかりやすいという利点があります。
保守面での利点がある反面、欠点もあります。精通している方(マニア)が見ると、コストダウンしていると判ってしまうところです。
サードパーティを利用した必殺技
V-8030SにスーパーGXヘッドを載せました。
こういったあり得ない組み合わせも、サードパーティならではです。
高級機には欠かせないクォーツPLL
V-8030Sのキャプスタン回転は、最もスピードの正確さがあるクォーツを使った方式です。
下位機種のV-6030Sでは、クォーツ無しのモーターになりますので、定期的に再生スピードの確認が必要です。
クォーツ方式のデッキも、念には念を入れて確認をした方がよいですが、調整が狂うことは滅多にないでしょう。
V-8030Sは実は台湾製。
これまで製造されてきたカセットデッキの大多数は日本製(MADE IN JAPAN)でしたが、1990年以降は海外で生産されたデッキも存在します。
最上位モデルのV-8030Sは日本製かとおもいきや、実は台湾製です。
台湾以外にも、マレーシア製のデッキも存在します。V-1030という機種がマレーシア製です。
電解コンデンサーも台湾製です。日本のメーカー品よりも品質が悪いというのは過言かもしれませんが、コンデンサーの頭部がやや膨張しているものを見かけることがあります。
電子部品交換で日本のメーカー品に交換します。
シンプルなアンプ回路
高級モデルなので、回路も複雑になっているかと思いきや、非常にシンプルです。
こちらは再生アンプの基板ですが、テープの音を出すのに必要なのは赤で囲んだ部分だけです。
シンプルな分、癖の少ない素直な音質になっていると思います。各々のテープが持つ音質の特徴を楽しむには、こういったデッキが向いているでしょう。
逆にデッキ各々の音質を楽しむには、回路構成の違いが影響してきますから、より複雑な回路になれば癖のある音が出ると思います。癖のあるという表現が少しマイナスな印象があるかもしれませんが、逆を言えば個性が強いということです。