西村音響店

YAMAHA KX-T900

ページ作成:2023/4/17

 

こちらのデッキはレンタルカセットデッキとして貸出サービスを行っています。
詳細はこちら

 

概説

1988年頃にヤマハから発売された、高機能ダブルカセットデッキ。

一見ダブルカセットデッキに見えますが、KX-T900は同時に2本のテープを録音/再生ができます。普通は1本ずつしか録音/再生ができず、無理やり操作しても片方のテープは自動的に停止してしまいます。

1つの筐体に、まるで2台のカセットデッキが入っているような仕様となっており、『ツインデッキ』と呼ばれます。入出力端子もDECK1用とDECK2用で独立して装備されています。

カセットデッキが2台ないと不可能な事も可能にしてしまう、ヤマハのツインデッキ。例えばチューナーを2台用意すれば、2つのラジオ番組を同時にエアチェックすることも叶います。また、2本同時に同じ音を録るパラレル録音もできます。大事な録音を行う際に2本のテープを回すことで、冗長性を高めるといった使い方です。

そしてデジタル技術が凄まじい発展を遂げた今日、KT-T900の特殊仕様はテープのデジタル化にも便利な機能として活用できるかもしれません。パソコンやオーディオインタフェースなどを2台用意すれば、同時に2本のテープをデジタル化することが可能。大量のテープがあっても半分の時間で作業できてしまうという、思わぬメリットを見出してきました。

もちろんダブルカセットデッキの機能も備えており、テープ同士のダビングももちろん可能です。さらにKX-T900は、2台分のカセットデッキの回路がそのまま実装されていることで、ノイズリダクションの設定を変更してダビングすることもできます。(例:ドルビーC録音のテープ→ドルビーB録音でコピーする)

高機能がセールポイントでありますが音質も決して悪くなく、機構自体はオーソドックスなオートリバースデッキながらも良い音がします。『NATURAL SOUND』とあるようにヤマハらしい自然ですっきりした音です。

特殊な仕様ながらも後継でKX-T950という機種が登場し、短命で終わることはなかったようです。

なおKX-T900はカラーが2色あり、ここで紹介している「ブラック」と、ヤマハ独自の色である「チタン」があります。

 

YAMAHA KX-T900の構造&搭載機能

ヘッド 回転2ヘッド方式(アモルファスヘッド)
メカニズムの駆動 ロジックコントロール・ソレノイド+キャプスタンモーター駆動
キャプスタンの回転 DCサーボモーター
テープの走行方式 オートリバース
カセットホルダの開閉 手動式
スタビライザー なし
テープセレクター
自動
ノイズリダクション
ドルビーB/C
ドルビーHX-Pro
あり
選曲機能 あり
メーター ピークレベルメーター(0dB=0VU 160nWb/m)
ライン入力 RCA端子2系統(DECK1/DECK2で独立装備)
ライン出力 RCA端子2系統(DECK1/DECK2で独立装備)
キャリブレーション機能 なし
カウンター リニア分数カウンター,テープ残量表示
その他の機能
  • ダビング機能(通常速度・倍速)
  • ダビング機能は、ボタン一つで自動的にテープ先頭まで巻戻してから始めるオートモード、その位置からダビングを始めるマニュアルモードがあります。

  • ブランクスキップ
  • 無音を一定時間検知すると自動的に音が記録されている部分までスキップ

  • イントロスキャン
  • 曲の頭だけ次々に再生する

  • リレー録音/再生
  • 片方のテープが終わったら自動的にもう一方のテープの録音/再生を開始する。

 

YAMAHA KX-T900の利点&欠点

◎同時に2本のテープを再生可能
 (DECK1/DECK2は完全独立で操作可能)
◎1つの筐体に2台のデッキが入っている設計
○2本同時再生はテープのデジタル化にも便利 (時短が可能)
○ダブルデッキながら音質もそこそこ良い
△カセットホルダのリッドが簡単に外れない
 (何カ所もの爪で固定されている。クリーニングの時に若干不便)
△DECK1/2のテープを同じ端子で聴くことができない
△ヘッドホン端子は1つのみ
 (スイッチでDECK1/2を切り替える。かえってこの方式の方が使いやすいかも)

 

関連機種

  • KX-T950
    このデッキの後継機種

 



 

 

録音サンプル

テープ:RECORDING THE MASTERS
ノイズリダクションOFF
音源:Nash Music Library

無圧縮音源はこちら

【フュージョン・ロック】容量53.9MB

【ファンキーポップ】容量58.7MB

 

96kHz-24bitのためデータ容量が多くなっています。ご注意ください。

 

外観の詳細画像

サムネイル画像をクリックすると拡大画像をご覧いただけます。


【DECK1部分】
再生方向を切り替えるボタンは、カセットホルダに付いています。その下に、録音レベルのスライドボリュームがあります。

【DECK2部分】
ツインデッキの仕様ということで、録音レベルのボリュームも独立しています。右下にはタイマースイッチがありますが、『DUAL REC』という機能はツインデッキならでは。電源ONで2本同時に録音をスタートさせる機能です。

【ディスプレイ・操作部】
カウンターもメーターも操作ボタンも、ツインデッキなので2台分あります。そのおかげでボタンやスイッチの数は多いです。

【ディスプレイ表示の変化】

【デッキ背面】

【入出力端子】
これがツインデッキ最大の特徴です。端子がデッキ毎に装備されているため、別々の配線で音声を伝送します。その反面、配線を分けなくてはならず、DECK1とDECK2の音を切り替える時には別途セレクターやミキサーが必要です。

【ヘッド部分(DECK1側)】
オーソドックスな回転式ヘッドのオートリバースです。アモルファスヘッドが採用されています。

【ヘッド部分(DECK2側)】

 

 

デッキの内部

オープン・ザ・キャビネット

画像にマウスオン(タップ)してください。


 

サムネイル画像をクリックすると拡大画像をご覧いただけます。


【ロジック部】
1つの筐体に2台のデッキですから、回路も2台分搭載されています。ただマイコンだけは中央にある1つのみで、制御はこれだけで2台分を担っているようです。

【電源部】
ロジック用とアンプ用で回路が分かれています。アンプ用の平滑コンデンサにはELNA製のオーディオ用が使われています。

【アンプ部全体】
向かって左半分にDECK1用、右半分にDECK2用の回路が実装されています。複雑に見えますが、電子部品の並びをよく見ると同じ回路が2組実装されている事が分かります。

【DECK1用アンプ拡大】
音声信号が通る部分にはオーディオ用コンデンサが使われており、音質にも気を配っていることが伺えます。

【DECK1メカ背面】
キャプスタンモーター+リールモーターの構成です。メカはオーソドックスなもので、他社のオートリバース機でも耳するような動作音を発します。

【DECK2メカ背面】

【ノイズリダクション用ICも2組】
2本同時に録音/再生するには、ノイズリダクションも同時に働かせる必要があります。そのためICも2つ付いています。ちなみに普通のオートリバース機は1つしかありません。
【】

 



 

 

 

参考周波数特性

画像にマウスオン(タップ)すると周波数軸が線形に変わります。

【TYPEⅠ】RECORDING THE MASTERS (現行テープ)


 

テストテープによる再生周波数特性


 

※ヘッドの状態やデッキの調整状態など個体差により、必ずしも同じ測定結果にはなりません。あくまで参考程度にお願いします。

 

 

 

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