西村音響店

Nakamichi ZX-7

ページ作成:2024/8/12

 

概説

1981年に発売されたナカミチの中堅機種。ZXシリーズの第1弾として登場しました。

このデッキのポイントは、何と言ってもあらゆる調整が手動である事。再生EQの切替やテープセレクタが手動である点はもちろん、キャリブレーションも録音感度およびバイアスを左右独立で行えます。各テープポジションで調整つまみが並んでおり、全部で12個です。DRAGONにも同様に装備されています。

これくらいなら他社でに見かける手動操作が主体のデッキですが、ZX-7で最も注目すべきなのは、録音ヘッドのアジマス調整までキャリブレーション機能を装備しているところです。インジケーターを見ながら、自分でアジマス調整を追い込みます。自分の腕でナカミチのディスクリート3ヘッドの能力を最大限に発揮させるという、かなりのマニア仕様です。

周波数特性も異次元で、ノーマルテープでも25kHzまで伸びる高域特性を持っています。音質については高域を重要視しているようで、高域の音が太くエネルギッシュです。P-8L型のクリスタロイヘッドは、0.6ミクロンギャップの恩恵だけに高域が物凄く伸びますが、極端に音が硬い事もなく、オールドナカミチを象徴する音がします。

一方、残念な点として操作性と利便性があります。キャリブレーションの調整つまみはチープ感が強い樹脂製で、つまみの遊びもあって微細な調整では少々気になります。また、電源スイッチとEJECTボタンが、同形状で隣り合わせになっているため、誤操作を招きます。実際使っていて何度か間違って押しました。

カセットデッキ全体の中でも使い方が難しく、テープに対する知識が要求されるデッキと言えます。しかし、このデッキを自由自在に操ることが出来るようになったら、間違いなく玄人入りです。

翌年にはダイレクトドライブの新採用をはじめ、各所をブラッシュアップさせたZX-9が登場します。

 

Nakamichi ZX-7の構造&搭載機能

ヘッド 3ヘッド方式(録音:R-8L型クリスタロイ 再生:P-8L型クリスタロイ)
メカニズムの駆動 ロジックコントロール・カムモーター駆動
キャプスタンの回転 PLLサーボ式DCモーター
テープの走行方式 クローズドループデュアルキャプスタン
カセットホルダの開閉 手動式(たるみ取り機能あり)
スタビライザー なし
テープセレクター
手動(再生EQ切替は別スイッチ)
ノイズリダクション
ドルビーB/C
ドルビーHX-Pro
なし
選曲機能 なし
メーター LEDピークレベルメーター(0dB=ドルビーレベル200nWb/m)
ライン入力 RCA端子1系統
ライン出力 RCA端子1系統(レベル可変)
キャリブレーション機能 録音感度(400Hz)・バイアス(15kHz)・録音ヘッドアジマス
カウンター 4デジットカウンター(減算機能付き)
その他の機能
  • メモリーストップ機能
  • フェード機能

 

Nakamichi ZX-7の特徴・利点・欠点

◎設定が何から何まで全て手動
◎録音ヘッドのアジマスまで追い込めるディスリート3ヘッドの利点を最大限に発揮
◎25kHzまでの広い周波数範囲
○高域重視の音質(高域が過激)
○キャリブレーションは左右独立調整
 (テープポジションごとに操作ツマミを装備)
△初心者には難しくて扱えない
△操作感がイマイチ(特にキャリブレーション時のツマミがチープ感あり)

 


 



 

録音サンプル

テープ:RTM C-60(現行品)
ノイズリダクションOFF
音源:Nash Music Library

【フュージョン・ロック】容量53.0MB

96kHz-24bitのためデータ容量が多くなっています。ご注意ください。

 

外観の詳細画像

サムネイル画像をクリックすると拡大画像をご覧いただけます。


【カセットホルダ】
カセットホルダは手動式。電源スイッチと同じボタン形状で、実際間違えて電源を落としてしまった事が何度かありました。誤操作を招く注意ポイントで、もう少し何とか配慮して欲しいところです。

【ハウジングランプ】
元々は電球でしたが、球切れのためLEDに交換しました。オーナー様の要望で青色にしています。抵抗内蔵のLEDを使えば、そのまま配線を接続するだけで取付可能です。(少し配線の取り回しがキツいですが)

【前面中央】
メーター、テープ操作ボタン、フェードボタンです。680番代のFLメーターがお好きな方もいらっしゃると思いますが、ZXシリーズは単色のLEDメーターとなってしまいました。

【前面右側】
各種切替スイッチに、キャリブレーションの調整つまみが並んでいます。アジマスキャリブレーションの調整つまみは、キャリブレーションスイッチがOFF状態だと隠れるようになっています。不便なのは、スイッチをOFFにしないと消音のままになってしまう事です。

【ヘッド部分】
Nakamichiお馴染みの構造で、録音と再生はクリスタロイヘッドです。アジマス調整つまみを回すと、録音ヘッドが僅かに動きます。ぱっと見では判らないほどですが、この僅かな差が音質に大きな影響を与えます。※ピンチローラーは交換済みです。
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デッキの内部

オープン・ザ・キャビネット

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【メカニズム①】
Nakamichiではお馴染みのサイレントメカです。ZX-7のキャプスタン駆動はベルトドライブで、1000ZXLも同じ方式です。ダイレクトドライブが採用されるのはZX-9からで、それまでは消極的だったようです。

【メカニズム②】

【メカニズム③】
本体底部から見たメカです。

【アジマス調整機構】
水色の映写フィルムみたいなケーブルが、本体前面の操作つまみからヘッドへ繋がっています。ケーブルで機械的にヘッドを動かす機構です。

【電源/制御系の回路基板①】
電源トランスは背面パネルに固定されています。基板上のNakamichiのロゴが入っているICが制御用マイコンです。1980年代に入ると、マイコンを使用したデッキが多くなります。

【電源/制御系の回路基板②】
結束バンドで締められている3つの電解コンデンサが電源平滑用です。管理人が所有しているZX-3とそっくりで似たような電源回路なのかもしれません。

【アンプ基板の裏面】
キャビネットを開けると、アンプ基板は裏返しに付いています。キャリブレーション機能が充実しているだけあって、基板の面積も大きいです。

【スイッチ基板】
再生EQのスイッチやノイズリダクションのスイッチが付いている基板です。

【アンプ基板の表面】
空中配線はなかなか多いですが、基板にはどこが何の回路か線で区切られていて、意外にも分かりやすくなっています。

【再生ヘッドアンプ】
ディスクリート構成の回路で、初段の増幅素子にはFET(2SK170)が使われています。

【録音ヘッドアンプ】
こちらはオペアンプが使われています。調べたところ東芝製の汎用オペアンプのようです。特段オーディオ用に高スペックという訳でもなさそうです。

【入出力端子・ヘッドホンアンプ】

【メーター駆動回路】
通常時とキャリブレーション時で、別々に調整できるようになっています。

【ノイズリダクション回路】
1981年にドルビーCが出たばかりという事で、ドルビーB用のICを2個連結して使う回路になっています。ドルビーICの個数が時代を物語っています。

【キャリブレーション調整つまみの裏側】
本来、アンプ基板についているトリマーを配線で延長し、外から弄れるようにしたような構造です。外から操作するキャリブレーション用のツマミは、実は半固定抵抗を動かしています。そのためか操作のフィーリングがイマイチです。

【電源/制御系基板の裏側】

 



 

デッキの分解画像

 

 

サムネイル画像をクリックすると拡大画像をご覧いただけます。


【メカニズム脱着】
脱着は結構面倒な方です。スペースに余裕があまり無く、本体のシャーシが阻んできます。前面パネルを外しているように見えますが、実際は避けてあるだけです。完全に外そうとすると配線が多く、凄く手間が掛かります。

【ツマミ類取り外し】
操作部分が多いので、外すツマミも沢山あります。特にキャリブレーションつまみは油断すると紛失しそうで要注意です。

【カセットホルダ取り外し】
メカの分解自体は、同じメカを搭載している他のNakamichiと変わりません。メカを下ろした後は、いつも通りという感じです。

【キャプスタンモーター取り外し】
フライホイールが見えてきます。ベルトドライブの高級機にしては、サイズはやや小さめです。もっと大きくすればワウフラ0.03%くらい狙えそうな気もしますが…

【メカ部分を2つに分割】
ヘッドやギヤ類が付いている前側と、リール駆動がある後側を分割します。

【ギヤ類取り外し後】

【ヘッド取り外し】
録音ヘッドを動かすケーブルが繋がっています。この辺りは680番代や1000ZXLも同じ構造です。

【ヘッドブロック取り外し後】

【キャプスタンモーター分解】
1980年前後の高級機に多く採用されているタイプのモーターです。内蔵された発電コイルで電流位相を検知しながらサーボを制御するため、温度変化で誤差が発生しにくいです。DDでなくとも優秀なモーターです。
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参考周波数特性

画像にマウスオン(タップ)すると周波数軸が線形に変わります。

【TYPEⅠ】RTM (現行テープ)


【TYPEⅡ】TDK SA (1981年型)


【TYPEⅣ】Nakamichi ZX (1981年頃・TDK MAのOEM品)


※ヘッドの状態やデッキの調整状態など個体差により、必ずしも同じ測定結果にはなりません。あくまで参考程度にお願いします。

 

YouTube動画でも紹介しました

 

 

これまでの作業実績

2024年7月 1568さん

 

 

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