概説
1983年ごろのナカミチの2ヘッドカセットデッキ。LX-5の下位機種にあたる。
ブラックとシルバーのツートンカラーが特徴的で、とても際立った外観となっている。また、使用に最低限必要な操作ボタン以外は、右側のカバーの中に収めており、ごてごて感のないスタイリッシュな格好をしている。
メカニズムはベルトで動作を行うタイプの構造で、動作音も静か。’80年代前半に多く採用されるプランジャータイプに比べて動作の反応はやや遅いが、ヘッドがテープに優しく接触するため痛めにくい利点がある。
2ヘッドとは言えどもNakamichiサウンドは健在。金管楽器の音の輪郭までしっかり拾っており、3ヘッドに引けを取らないように感じる。
一番の魅力は、2ヘッドでありながら、クローズドループ・デュアルキャプスタンを採用している点。2ヘッドというと廉価グレードの印象が若干あるかもしれないが、その常識をも覆しているのが、このLX-3であると言ってもよいだろう。
ただし物理的に2ヘッドでは録音同時モニターが不可能なので、同機能が必要であれば上位機種のLX-5がおススメ。LX-3でもバイアス調整は可能なので、十二分に良い音で録音ができる。
もちろん、テープポジションの選択、再生イコライザーの切換えは手動なので、玄人向けであることには変わりはないだろう。
700シリーズの血が流れているスタイリッシュなNakamichiである。
LX-3の音質
LX-3の中身
キャビネットを開けると、向かって左側に制御系の回路基板が、右側には録音系統と再生系統の回路基板が2枚構成に配置されています。
カセットデッキでは標準的なレイアウトですが、バイアス発振回路が制御系の回路基板にあるところが特徴的です。
緑で囲んだ部分がバイアス発振回路です。消去ヘッドのケーブルがこの部分に接続されています。
LX-3の録再ヘッド
ナカミチの録再ヘッドで特徴的なパッドリフターもしっかり装備しています。
クローズドループ・デュアルキャプスタンなので、消去ヘッドは小型のものが使われています。
フロントパネルを取り外す
フロントパネルを外すと、メカニズムが露出します。操作ボタンはフロントパネルに固定されているため、本体側に残っているのは、録音関係やノイズリダクションのスイッチ類のみです。
メカニズムの構造はナカミチの標準的なものですが、カセットホルダーに電球が付いているところが特徴です。固定の方法も、他のナカミチのモデルと同じく水平方向に固定されています。
メカニズムを分解する
前側と後側に大きく2つに分割することができます。
この構造を採用したデッキは他にもあるため、メカニズムの脱着ができればメンテナンスは比較的容易です。
ただし、部品の固定にはグリップ止め輪を使っている部分が多く、専用の工具が必要となります。無理に代用の工具で抉ったりすると、樹脂の軸部分が削れる恐れがあるので要注意です。
メカニズムの取り付けを動画で。
ドルビー用ICから発売年を推測する
LX-3のノイズリダクションは、ドルビーBとCに対応しています。そこで、基板にあるドルビー用のICを見てみると、合計4つ実装されているのが確認できます。
これは、ドルビーB用のICを2つ連結してドルビーCとしており、ドルビーCが登場して間もない頃に多い回路です。そのことから、LX-3は1982年ごろに設計されたものだと考察できます。
製造年を調べるには電源コードに印字された西暦を確認する方法が確実ですが、ドルビー用ICから推測するという方法もあります。
組立てミス?オークションでの購入は気を付けて。
ビンテージ品となっているカセットデッキを入手するには、ネットオークションが欠かせません。ただ、中には不良品も混じっている可能性があります。
この時にご依頼をいただいたLX-3は、リール台(巻取り軸)の組立てが不十分な状態でした。
早送り中の動作音が少し大きかったので気づきました。
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