西村音響店

Nakamichi LX-3

ページ更新:2023/5/08

 

概説

1982年(昭和57年)に登場したブラックとシルバーのツートンがお洒落なLXシリーズ。LX-3は2ヘッド方式のモデルです。

LXシリーズは見ての通りデザイン性の高さが特徴です。700シリーズ譲りのスタイリッシュな外観となっています。テープが走り始めたら操作しない物は開閉式のカバーの中に納めて、カバーを閉じると大変すっきりとしたフロントフェイスになります。

もちろんNakamichiの事ですから、良いのはデザイン性だけではありません。性能の高さも流石です。このLX-3は2ヘッド方式ですが、ノーマルテープでも~20000Hzの周波数特性をクリア。超高域まで高い表現力を有しています。ドンシャリ傾向が少し強めですが、センダスト系のヘッドで高域は硬くなく聴きやすいです。

また、2ヘッドでクローズドループデュアルキャプスタンという点にも注目です。この構造はナカミチとソニーの最初期にしか採用されておらず、珍しい2ヘッドデッキとなっています。元々2ヘッド方式はデュアルキャプスタンでなくとも走行安定性を確保できますが、Nakamichiでは2ヘッドでもテープパッドを持ち上げてデュアルキャプスタンで走行させるという徹底的な拘りぶりです。

なお上位機種のLX-5は3ヘッド方式で、クリスタロイヘッドが与えられます。2023年5月時点でLX-5は未だ触ったことがありませんが、LX-5とLX-3はヘッドの素材が異なるため、音色もかなり違うと予想されます。2ヘッドと3ヘッドで、録音同時モニターの有無や、録音と再生で専用のヘッドが与えられることによる性能差はありますが、最終的な音色の部分では優劣や序列は付け難いと思います。

管理人自身、Nakamichiのデッキはこれまで幾つもの機種を触らせていただきましたが、最もしっくり来るのはLX-3でした。現在、プライベート用でLX-3を所有しています。

 

Nakamichi LX-3の構造&搭載機能

ヘッド 2ヘッド方式(録再ヘッド:センダスト系RP-9E型ヘッド)
メカニズムの駆動 ロジックコントロール・カムモーター駆動
キャプスタンの回転 電子ガバナー式DCサーボモーター
テープの走行方式 クローズドループデュアルキャプスタン
カセットホルダの開閉 手動式(たるみ取り機能あり)
スタビライザー なし
テープセレクター
手動(再生EQ切替は別スイッチ)
ノイズリダクション
ドルビーB/C
ドルビーHX-Pro
なし
選曲機能 なし
メーター LEDピークレベルメーター(0dB=ドルビーレベル200nWb/m)
ライン入力 RCA端子1系統
ライン出力 RCA端子1系統(レベル可変)
キャリブレーション機能 バイアス調整のみ
カウンター 4デジットカウンター(減算機能付き)
その他の機能
  • メモリーストップ機能
  • オートフェード機能

 

Nakamichi LX-3の特徴・利点・欠点

◎2ヘッドながらクローズドループデュアルキャプスタン 
◎ツートンの外観がスタイリッシュ
◎2ヘッドながらかなり高域が伸びる
 (センダスト系ヘッドなので艶のある高音。ただしドンシャリ傾向がやや強め)
○オートフェード機能が便利
 (REC LEVELボリュームが左右独立なので無いと使いづらい)
△前面パネルがオール樹脂製で高級感は少な目
△同クラスのデッキと比較するとSN比がやや悪い
△リッドの窓は貫通しているので埃が侵入しやすい

 

Nakamichi LX-3の関連機種

  • LX-5
    LXシリーズの3ヘッド機。こちらはクリスタロイヘッドを採用。
  • 480
    同じく2ヘッド・クローズドループデュアルキャプスタンの機種。

 



 

録音サンプル

テープ:RECORDING THE MASTERS
ノイズリダクションOFF
音源:Nash Music Library

【フュージョン・ロック】容量53.3MB

【ファンキーポップ】容量58.2MB

96kHz-24bitのためデータ容量が多くなっています。ご注意ください。

 

外観の詳細画像

サムネイル画像をクリックすると拡大画像をご覧いただけます。


【前面左側】
電源スイッチとEJECTボタンも前面パネルと一体になっているような形状です。「如何にもボタン(スイッチ)です」という雰囲気が全くありません。

【カセットホルダ拡大】
リッドの窓にはアクリル板などは無く貫通しています。これまた珍しいのですが、遮るものがないので埃の侵入が心配です。

【リッドを外した状態】
ハウジングランプはカセットホルダの上部に付いています。

【テープ操作ボタン】
操作ボタンもデザインによく溶け込んでいます。ボタンには少し傾斜が付いていて操作性も良好です。

【前面のカバー】
テープ操作以外はカバーの中に隠れています。カバーを押すと「カチッ」という音がして、ゆっくりと手前に開きます。これもLXシリーズの特徴的な部分です。

【ヘッド周り】
2ヘッドながらクローズドループデュアルキャプスタンを採用してる、かなり少数派の構成です。同一のヘッドで録音再生を行うため、自己録再でのアジマスエラーが物理的に生じないのも2ヘッドの大きな利点です。

 

 

デッキの内部

オープン・ザ・キャビネット

画像にマウスオン(タップ)してください。

 

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【電源・ロジック系】
デッキの制御にはマイコンが使われています。電源スイッチの真下付近にあるのはバイアス発振回路です。消去ヘッドの配線がここまで伸びてきています。

【オーディオ系回路基板】
オーディオ系の基板は逆さ向きに設置されていて、上部からは電子部品が見えません。なおLX-3はオーディオ系の基板が2枚あり、2段構造で設置されています。

【メカニズム】
内製のメカです。この後のBXシリーズやCRシリーズでは社外製メカになりますが、信頼性の面では内製メカの方が良いです。一回オーバーホールすれば安心して使えます。
【】

 



 

デッキの分解画像

 

サムネイル画像をクリックすると拡大画像をご覧いただけます。


【前面パネルを取り外した状態◆】
テープ操作ボタンとメーターのユニットは、前面パネルにマウントされています。

【メカニズム分解◆】
分解整備は同時期のNakamichiと同じですが、メカの脱着が少々面倒くさいです。メカの後部と、電源/ロジックの基板との間が狭く、干渉するために知恵の輪を行う必要があります。

【アンプ部◆】
基板は逆さ向きですが、トリマーの部分は穴で貫通しており、底部を開けなくても天板を外すだけで上から調整できます。

【ノイズリダクション回路◆】
ICは珍しい三洋製のLA2730型が使われています。2ヘッドで4個の構成なので、ドルビーCではICを2個連結した回路を組むタイプです。なお、ICの資料によると、Nakamichiでよく使われているμA7300PCとピン配置が同じだそうで、互換性があるのかもしれません。

 

参考周波数特性

画像にマウスオン(タップ)すると周波数軸が線形に変わります。

【TYPEⅠ】RECORDING THE MASTERS (現行テープ)


【TYPEⅡ】TDK SA (1981年型)


【TYPEⅣ】TDK MA (1979年型・初代)


テストテープによる再生周波数特性

 

※ヘッドの状態やデッキの調整状態など個体差により、必ずしも同じ測定結果にはなりません。あくまで参考程度にお願いします。

 

 

撮影に協力してくださった方
・東京都 タケムラ様(2019年2月撮影 ◆マークの画像)

※◆マークが付いた4枚の画像以外は管理人所有のLX-3です。

 

 

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