西村音響店

TEAC V-6030S

最終更新:2023/06/29

 

概説

1990年代中頃にTEACから発売された、3ヘッドデッキの中堅モデルです。V-8030Sの下位モデルで、ダイレクトドライブが省略されている点が異なります。

V-8000SやV-7010といったデッキから外観が大きく変わりました。フルモデルチェンジに相当するような変更です。特に操作部のレイアウトが、ごっそり左右逆になった点が大きな変更点です。テープの操作ボタンが右側、録音関係のボリューム・スイッチ類が左側というレイアウトです。前の世代に慣れていると、イジェクトボタンを押したつもりが電源がOFFになってしまった…という事もあるかもしれません。(管理人も何度かやらかしました)

メカニズムは先代と変わらず、社外製(サンキョー製)のものが搭載されています。ダイレクトドライブではないので、構造としてはV-5000・V-5010と同じです。録再ヘッドはコバルトアモルファスのコンビネーションヘッドです。

TEAC自慢の左右独立キャリブレーションは引き続き搭載。ドルビーSについては、TEACの中堅モデルにようやく搭載されたような形です。これまでは最上級機のV-8000Sと入門機のV-2020Sにしか搭載されておらず、少し極端な展開となっていました。

デッキの天板を開けて内部を見ると、V-8030SとV-6030Sの残念な点であるコストダウンが強く感じられます。特にアンプ部分の電子部品は、オーディオ用ではなく汎用品が多用されており、先代と比較するとグレードダウンされていると言わざるを得ません。さらに電解コンデンサについては台湾製のものが採用されているなど、少しばかりのコストダウンではなさそうです。

外観だけ見ればとても高級感がありますが、デッキ背面を見ると”MADE IN TAIWAN”の表記があります。台湾製ということで、台湾のメーカーの電子部品が使われている事にも納得せざるを得ません。結果、デッキから出力される音にも表れてしまっているように思います。

管理人自身、カセットデッキの中ではTEACが最も好きなメーカーですが、この世代のデッキについては残念な部分が多く感じられるのが正直な感想です。

 

V-6030Sの構造&搭載機能

ヘッド 3ヘッド方式(録音/再生:コバルトアモルファス・コンビネーションヘッド)
メカニズムの駆動 ロジック制御 (カムモーター+ギヤ駆動)
キャプスタンの回転 DCサーボモーター
テープの走行方式 クローズドループ・デュアルキャプスタン
カセットホルダの開閉 パワーローディング(弛み取り機能あり)
スタビライザー あり
テープセレクター
自動
ノイズリダクション
ドルビーB/C/S
ドルビーHX-Pro
あり
選曲機能 あり
メーター デジタルピークレベルメーター (0dB=250nWb/m,デジタルピーク表示あり)
ライン入力 RCA端子1系統
ライン出力 RCA端子2系統(LINE IN,CD DIRECT IN)
キャリブレーション機能 あり 左右独立調整(テストトーン周波数:400Hz・11kHz)
カウンター リアルタイムカウンター
その他の機能
  • RTZ(Return to Zero:ワンタッチでカウンター0000の位置まで早送りor巻戻し)
  • CDシンクロ機能(CDデッキとの連動機能)

 

V-6030Sの利点&欠点

◎TEACらしからぬ華やかなデザイン 
◎左右独立のキャリブレーションは変わらず搭載
○TEACミドルクラスにもドルビーSが搭載された
△音質はイマイチ(個人的な感想ですが従来と比べるとあまりすっきりした音ではない)
△先代と比較するとコストダウンが著しい
(銅メッキシャーシ非採用や回路の簡素化など)
△V-8030Sとともに台湾製(電子部品も台湾製の物が多数使われている)

 

V-6030Sの関連機種

 



 

録音サンプル

テープ:RECORDING THE MASTERS
ノイズリダクションOFF
音源:Nash Music Library

【フュージョン・ロック】容量53.2MB

【テクノポップ】容量58.1MB

96kHz-24bitのためデータ容量が多くなっています。ご注意ください。

 
 

外観の詳細画像

サムネイル画像をクリックすると拡大画像をご覧いただけます。

TEAC V-6030S 録音関係の操作ツマミ
【録音関係の操作部】
デッキ左側には、録音レベル、キャリブレーション、ノイズリダクションなどの主に録音に関わるものが集約されています。録音レベルのツマミだけは、金庫のダイヤルのような重量のあるツマミです。
TEAC V-6030S カセットホルダー
【カセットホルダ】
開閉はパワーローディングです。リッドは金属製でずっしり重く、先代のV-7010よりも重く感じるかもしれません。ちなみにエントリーモデルのV-1030は樹脂製です。
TEAC V-6030S メーターと操作ボタン
【メーターとテープ操作ボタン】
テープの操作に関係するものは右側に集約されています。V-8000やV-7010などのレイアウトをごっそり左右逆にしたような形です。メーターも同じような物に見えますが、V-8030S/V-6030Sでは信号に対するレスポンスが少し悪くなっています。
TEAC V-6030S デッキ背面
【デッキ背面】
CDダイレクト端子を装備しています。型番がV-(4桁)になってからは入力端子と出力端子が離れた配置となりましたが、V-8030とV-6030Sではさらに離れた。
TEAC V-6030S 製造年と製造番号
【製造年と製造番号】
この個体は電源コードに「2003」と印字されていましたが、コード自体が交換されていると思われます。具体的な製造期間はわかりませんが、1993~1997年頃と推定されます。

【ヘッド周り】
録再ヘッドは従来と同じくコバルトアモルファスヘッドです。ただアンプの回路設計が影響しているためか、先代のV-7010やV-5010と比べると、イマイチすっきり感が足りません。

 

デッキの内部

キャビネットオープン

画像にマウスオン(タップ)してください。


 


【電源トランス】
基板ごと垂直にマウントされています。その下にある制御系の回路基板も、トランスを避けるようにL字型になっています。

【制御系回路】
マイコンは裏側に表面実装されており見えません。大きな電解コンデンサが2個ありますが、ジャミコンというメーカーの台湾製コンデンサです。

【再生アンプ・メーター回路・ドルビーS回路】
再生アンプは画像の右下にある、配線コネクタが映っている辺りです。面積にしてここの基板のたった10分の1くらいでしょうか。V-8030Sも回路は同じで、かなり簡素な設計になっています。一方、面積の半分以上を占めているのが再生用のドルビーS回路です。

【アンプ用電源回路】
平滑用のコンデンサはYEC製の16V-2200μF。こちらも台湾製です。電源も先代と比較すると、かなり簡素なものとなっています。

【録音関係の基板①】
基板の奥側半分です。一番奥にキャリブレーション用のテストトーン発振回路があります。その手前にドルビーB/C用の回路です。

【録音関係の基板②】
基板の手前側半分です。ちょうど縦方向に真ん中を境界にして、左側が録音EQ回路、右側がバイアス発振回路となっています。なお、メタルポジションだけは、半固定抵抗でEQ調整もできるようになっています。

【録音用ドルビーS回路】
向かって一番左に垂直に立っています。先ほどの基板とはコネクタで連結されており、容易に脱着ができます。フィルムコンデンサもマイラータイプが多用されている点も、やはりコストダウンの影響でしょうか。

 

参考周波数特性

画像にマウスオン(タップ)すると周波数軸が線形に変わります。

【TYPEⅠ】RECORDING THE MASTERS (現行テープ)


【TYPEⅡ】TDK SA (1992年型)


【TYPEⅣ】TDK MA-EX


【再生周波数特性】ABEX TCC-161Bテストテープ

 

※ヘッドの状態やデッキの調整状態など個体差により、必ずしも同じ測定結果にはなりません。あくまで参考程度にお願いします。

 

撮影に協力してくださった方
・山形県 「cote211」さん(外装の写真・2020年12月,2022年11月撮影)
・福岡県 「1568」さん(デッキ内部、ヘッドの写真・2023年6月撮影)

 

 

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