西村音響店

Victor TD-R621

ページ作成:2025/1/27

 

概説

 

Victor TD-R621の構造&搭載機能

ヘッド 回転2ヘッド方式(録再ヘッド:ファインアモルファス)
メカニズムの駆動 ロジックコントロール・カムモーター駆動
キャプスタンの回転 DCサーボモーター
テープの走行方式 オートリバース
カセットホルダの開閉 手動式
スタビライザー あり
テープセレクター
自動
ノイズリダクション
ドルビーB/C
ドルビーHX-Pro
強制ON
選曲機能 あり(前後1曲)
メーター LEDピークレベルメーター(0dB=0VU 160nWb/m)・デジタルピーク表示付き
ライン入力 RCA端子2系統(LINE IN, CD DIRECT)
ライン出力 RCA端子1系統
キャリブレーション機能 バイアス調整のみ
カウンター 4デジットカウンター、テープ残量表示
その他の機能
  • メモリーストップ機能
  • リピート再生
  • ブランクスキップ
  • ディスプレイ消灯機能

 

TD-R621の特徴

○再生アンプにはFET適用のDCアンプ方式を採用(オートリバースでは少数派)
○リバース速度は回転ヘッド式にしては結構早い
○メカの基本構造は3ヘッド機と同じ
○上級機よりも音質の癖が少なく場合によっては聴きやすいことも(上級機は低音が強め)

 

TD-R621の関連機種

  • TD-V631
    ほぼ同じアンプ設計ながら3ヘッドの兄弟的存在

 



 

録音サンプル

テープ:RTM C-60(現行品)
ノイズリダクションOFF
音源:Nash Music Library

【フュージョン・ロック】容量53.0MB

96kHz-24bitのためデータ容量が多くなっています。ご注意ください。

 

外観の詳細画像

サムネイル画像をクリックすると拡大画像をご覧いただけます。


【前面左側・カセットホルダ】
手動で開閉するタイプです。テープ方向のインジケータはカセットホルダに内蔵されています。リバースモードの切替スイッチは、カセットホルダの左側にあります。

【カセットスタビライザー】
リッド側にスタビライザーが付いているのが、Victorの特徴です。1988年のデッキから採用されています。

【前面中央】
ぱっと見は3ヘッドの721などと同じですが、HX-ProのON/OFFが無かったり、代わりにオートリバース用の機能スイッチになっていたりします。3つ並ぶ大きなスイッチも、3ヘッドでは入力切替なのが、リピート機能とブランクスキップ機能のスイッチに変わっています。

【前面右側】
RECボリュームのノブは特大サイズです。この方が微妙な調整がしやすいメリットがあります。反面スペースを取ります。その下にバイアス調整つまみとバランス調整つまみです。

【本体背面】
入力はLINE INとCD DIRECTの2系統です。この頃のデッキはこれが一般的ですが、3ヘッドの機種では更にDIRECT端子が付き、3系統の入力端子が装備されます。

【ヘッド部分】
ヘッドはアモルファスです。回転式ながら反転速度は結構速く、感覚的に1秒以内で動作してくれると思います。本来はリーダーテープを検知して反転するクイックリバースに対応していますが、この個体はセンサーが破損して使えなくなっています。

 

 

デッキの内部

オープン・ザ・キャビネット

画像にマウスオン(タップ)してください。

 

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【メカ部分・上部】
メカはVictorオリジナルのサイレントメカです。上級機種と同じタイプのメカが装備されています。

【キャプスタンモーター部分】
ベルトが2丁掛けであるのが大きな特徴です。これは3ヘッド版のTD-V631も同じで、違うのはベルトの掛け方です。オートリバースではフライホイールを互い違い方向に回転させるため、6の字状にベルトを張ります。

【メカ部分・底部】
フライホイールの厚みもあり質量もあります。ワウフラッターはカタログ値で0.05%(WRMS)となっています。

【電源トランス・制御系回路】
この基板が裏返しに付いており、電源トランスも基板の下に付いています。メカの配線を外すために、本体の底部を開ける必要がある点が少し手間がかかるポイントです。

【アンプ基板全景】
3ヘッドのV631と似た雰囲気ですが、2ヘッドである分部品の実装数が少ないです。

【再生アンプ】
コストが削られがちなオートリバースデッキですが、上位機種と回路構成になっています。再生ヘッドの信号をカップリングコンデンサを介さず、直接オペアンプで増幅するDCアンプとなっています。

【ノイズリダクション回路】
日立製のICです。2チャンネル分の回路を内蔵しており、録再兼用のため実装は1個のみです。上級機種に搭載されている、ノイズリダクションのバイパス回路はありません。

【録音系回路】
この辺りも部品の実装状態を見ると、V631と概ね同じかと思います。バイアス調整用のトリマーは左右で1つずつしかなく、テープポジション毎に調整はできません。

【アンプ用電源回路】
上級機種ではハイグレード&大容量のコンデンサが与えられますが、6万円クラスのR621とV631は標準品です。

【メーターの裏側】
ここはV631と違う点になります。ノイズ対策用のシールドがありません。ただ個人的には無くても大きな問題はないと思いますし、タクトスイッチの反応が悪くなるこの機種で、多少なりとも交換作業がしやすくなるのは有難いです。

 



 

デッキの分解画像

 


 

サムネイル画像をクリックすると拡大画像をご覧いただけます。


【キャプスタンブロック取り外し】
このメカは土台ごと外してしまうので、分解がしやすいです。

【モーター基板取り外し】

【ギヤ割れ】
このメカを搭載したVictorのデッキの定番な故障です。多くは早送り/巻戻し用のギヤが欠けて回らなくなりますが、次いでヘッドを動かすギヤも割れて、結局両方とも交換することになります。

【ヘッドブロック取り外し】
他のメカと比べて異様にブロックが小さいです。

【ハブ駆動軸、カムギヤ、アイドラー取り外し】
基本的にはある程度のまとまり(アッセンブリ)で外せるので、作業性は良いと思います。ただヘッドブロック周りの組付けがやや複雑なのがVictorメカの傾向です。

【全分解完了】
部品点数が少ない点も作業性の良さに繋がってきます。メカの脱着が若干手間なところがありますが、もっと複雑なデッキと比べれば大した難易度ではないです。

【アイドラーゴム交換】
再生時にテープを回すアイドラーです。早送り/巻戻しはギヤ、再生はゴムという設計も特徴的で、これが要因で再生のみできる状態に陥ります。オートリバースなので、走行方向別にアイドラーゴムが2個付いています。

【カムギヤ裏の接点】
ギヤの裏に接点があり、4つある爪の導通パターンでメカの状態をマイコンが検知します。ロータリーエンコーダです。密閉タイプと剥き出しタイプがありますが、断然剝き出しの方がメンテしやすいです。

【メカ組立て中】
オーバーホールのご依頼でしたので、潤滑用の油脂類は新しくします。

【ギヤを交換】
早送り/巻戻しのギヤは歯数が17と中途半端で、ホビー用のギヤには無く専用品と言っても良さそうです。幸いにも中国で代替品が出回っており入手できます。ヘッドを動かすギヤは、ホビー用で十分代替できます。

【タクトスイッチ交換】
経年劣化で導通が悪くなり、ボタンを押しても違う動作になる現象が出ます。Victorのデッキは結構多く発生している印象です。
【】

 

参考周波数特性

画像にマウスオン(タップ)すると周波数軸が線形に変わります。

【TYPEⅠ】RTM (現行テープ)


【TYPEⅡ】TDK SA (1987年型)


【TYPEⅣ】Nakamichi MA (1988年頃)


※ヘッドの状態やデッキの調整状態など個体差により、必ずしも同じ測定結果にはなりません。あくまで参考程度にお願いします。

 

 

これまでの作業実績

2024年6月 佐賀県 nao様

 

 

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