概説
これぞSONYのカセットデッキ最高峰。スリーセブンファミリーの二代目であるTC-K777ESです。1982年(昭和57年)に発売されました。
初代777に用いられた技術を更にブラッシュアップし、ブラックボディとなって登場。奇しくも初代では内蔵できなかったドルビーCも標準搭載されました。
録再ヘッドはS&Fからレーザーアモルファスに変更され、一新された音となりました。超低域から超高域まで力強い表現力を持ち、低域は初代よりも力強く、高域は解像度やスピード感のある音となっています。録音ヘッドと再生ヘッドの独立懸架型は変わらず、微調整によって録再時のアジマスエラーを限りなく少なくすることができます。ただし耐久性に関してはS&Fヘッドより劣っており、レーザーアモルファスヘッドを搭載した機種で摩耗している個体が少なくありません。
777ESの音を生み出すのに要となる再生EQアンプ回路は、こちらも初代で採用された、ソニー内製のデュアルFETを使用したツインモノラル&DCアンプ。さらに777ESでは、ノイズリダクションを使用しない時には同回路を通さず、直接ライン出力用のバッファー回路に送る設計となっています。音の純度をより保つための設計と言えそうです。
メカニズム部分は初代777から引き続き、スリーセブン専用のユニットを搭載しています。モーターはブラシレスDCモーターのみ。再生中はトルクを調整するクラッチ機構と合わせて安定した巻取り、早送り/巻戻し時は静粛かつ高速に回転します。キャプスタンの回転は、常に正確な速度を維持できるクォーツロックサーボです。しかし、駆動用トランジスタからの発熱が多い問題は初代と変わらず、夏場の連続使用は過熱してしまうため心配です。
後継のTC-K777ESⅡの登場が1986年頃ですから、少なくとも4年ほどは製造されたことになります。スリーセブンファミリーの中で最も長い期間です。(初代777は1年余り・777ESⅡは1.5~2年ほど)この長い生産期間が完成度の高さの表れと言ってもよいでしょうか。
スリーセブンファミリーは、どの機種にも違った良し悪しがあり、一概にこれが一番とは決めがたいです。ただ、強いて完成度の高さで言えばこの777ESではないかと思います。ソニーの全カセットデッキの中でも、完成度の高さは1位2位を争うと言っても差し支えありません。
TC-K777ESの構造&搭載機能
ヘッド | 3ヘッド方式(録音/再生:独立懸架型レーザーアモルファスヘッド) |
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メカニズムの駆動 |
ロジック制御 (ソレノイド駆動) |
キャプスタンの回転 | ダイレクトドライブ (クォーツロック方式) |
テープの走行方式 | クローズドループ・デュアルキャプスタン |
カセットホルダの開閉 | 手動 |
スタビライザー | なし |
テープセレクター | 手動 (FeCrテープ対応) |
ノイズリダクション | ドルビーB/C |
ドルビーHX-Pro | なし |
選曲機能 | なし |
メーター | デジタルピークレベルメーター (0dB=250nWb/m,MANUALピークホールド機能付き) |
ライン入力 | RCA端子1系統 |
ライン出力 | RCA端子2系統(固定レベル出力・可変レベル出力) |
キャリブレーション機能 | バイアス調整,録音感度補正(左右独立) テストトーン周波数:400Hz,8kHz |
カウンター | リニア分数カウンター |
その他の機能 |
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TC-K777ESの特徴
◎ソニーの最高峰・音に一切の妥協がないフラッグシップ
◎再生アンプは内製デュアルFETによる増幅・ツインモノラル・DCアンプ回路
◎徹底的に拘り抜かれた音。超低域から超高域まで全ての音を力強く表現
◎メーターの目盛が細かい(40セグメント)
◎モーターはすべてブラシレスタイプ。 (ブラシ付きモーターのような寿命がない)
○録音感度補正が左右独立で可能
○独立懸架ヘッドのため同時録再時のアジマスエラーを少なくできる(調整も別々に追い込める)
△ヘッドの耐久性が弱い
△本体からの発熱が異常に多い(夏場の連続使用は避けた方がよいレベル)
△電気系統のトラブルが起きやすい(はんだクラックによるグランド不良・リレーの不具合など)
△ヘッドホン端子が不便(アッテネータによる5段階調整しかできない。音量もかなり大きい。)
TC-K777ESの関連機種
- TC-K777(先代モデル)
- TC-K777ESⅡ(後継モデル)
録音サンプル
テープ:RECORDING THE MASTERS
ノイズリダクションOFF
音源:Nash Music Library
【フュージョン・ロック】容量53.1MB
【テクノポップ】容量58.1MB
96kHz-24bitのためデータ容量が多くなっています。ご注意ください。
外観の詳細画像
デッキの内部
オープン・ザ・キャビネット
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デッキの分解画像
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その他の画像
参考周波数特性
【TYPEⅠ】RECORDING THE MASTERS (現行テープ)
【TYPEⅡ】SONY UCX (1984年・二代目)
【TYPEⅢ】SONY DUAD (1978年・二代目)
【TYPEⅣ】SONY METALLIC (1979年)
テストテープによる再生周波数特性
※ヘッドの状態やデッキの調整状態など個体差により、必ずしも同じ測定結果にはなりません。あくまで参考程度にお願いします。
YouTube動画でも紹介しました
撮影に協力してくださった方
・愛知県 「とらきち」さん (2023年7月)