西村音響店

SONY TC-K777ESⅡ

ページ作成:2023/05/02

 

概説

1986年(昭和61年)に発売されたソニーのフラッグシップカセットデッキ、777(スリーセブン)の三代目。

TC-777ESⅡの大きな特徴は2基の電源トランス。制御系とオーディオ系でそれぞれの電源トランスを設けています。このようなツイントランス仕様は、ソニーの中では777ESⅡだけです。参考までに他社のツイントランス仕様は、ヤマハはK-1xw、アイワはXK-009やXK-S9000などがあります。

外観は先代の777ESと殆ど変わりはありませんが、内部の回路設計は大きく変わっています。特にオーディオの回路は、777ファミリーの3台でそれぞれ異なる形となりました。そのため音作りもそれぞれで違います。777ESⅡは、777ファミリーの中では最もキレのあるように感じます。よりデジタルサウンドに近づけた音になっていると思います。

その他の変化としては、TYPEⅢポジションの廃止、5段階アッテネータから無段階のボリュームへの変更、ハブ駆動軸の小改良、弛み取り機能の追加があります。いずれも777ファミリーでは777ESⅡだけの特徴です。

ソニーの最高級機スリーセブンは、このTC-K777ESⅡをもって終わりを迎えることになりました。なお直接的な後継機種ではあませんが、型番の『7』は1994年のTC-KA7ESで復活することになります。

 

関連機種

  • TC-K777(初代スリーセブン)
  • TC-K777ES(二代目スリーセブン)

 

TC-K777ESⅡの構造&搭載機能

ヘッド 3ヘッド方式(独立懸架型レーザーアモルファスヘッド)
メカニズムの駆動 ロジックコントロール・ソレノイド駆動
キャプスタンの回転 クォーツロック・ダイレクトドライブモーター
テープの走行方式 クローズドループデュアルキャプスタン
カセットホルダの開閉 手動式(弛み取り機能付き)
スタビライザー なし
テープセレクター
手動
ノイズリダクション
ドルビーB・C
ドルビーHX-Pro
なし
選曲機能 なし
ライン入力 RCA端子1系統
ライン出力 RCA端子2系統(固定・可変)
メーター ピークレベルメーター(-4dB=0VU 0dB=250nWb/m)
キャリブレーション機能 あり(録音感度補正は左右独立) 400Hz・8kHz
カウンター リニア分数
その他の機能
  • ピークホールド機能

 

TC-K777ESⅡの特徴・利点&欠点

◎ソニーの最高級機
◎電源トランスを2基装備
(ロジック用とオーディオ用で別々のトランス)
◎777ファミリーで唯一OUTPUTレベルとヘッドホン音量を無段階調整可能
(先代は5段階のアッテネータ)
○録音感度補正は左ch右ch独立調整可能
○セグメントが細かいピークレベルメーター
△スリーセブンの中で唯一FeCr非対応
△ヘッドが摩耗に弱い

 



 

音質参考動画

テープ:RECORDING THE MASTERS
ノイズリダクションOFF
音源:Nash Music Library

【フュージョン・ロック】容量53.6MB

【ファンキーポップ】容量58.5MB

96kHz-24bitのためデータ容量が多くなっています。ご注意ください。

 

外観の詳細画像

サムネイル画像をクリックすると拡大画像をご覧いただけます。


【カセットホルダ】
先代のTC-K777ESとほぼ同じですが、777ESⅡは『3HEAD LAZERAMORPHOUS』の文字が金になっています。

【メーター・テープ操作ボタン】
こちらも先代と大差ありません。この個体はカウンター表示が故障していました。(通常は.00と表示)

【FLディスプレイの表示変化】
フェリクローム非対応ですが、「TYPEⅢ」の点灯箇所は残ったままです。先代と同じFLディスプレイを使用しているのでしょうか。

【製造番号と電源コードの西暦】
この個体は電源コードに「1986」とありました。

【ヘッド周り】
この個体はTC-KA7ES用のヘッドに交換されていました。物理的には換装できますが、スリーセブンに金メッキヘッドが付いている光景には一瞬目を疑ってしまいました。。
【】

 

 

デッキの内部

オープン・ザ・キャビネット

画像にマウスオン(タップ)してください。


 

サムネイル画像をクリックすると拡大画像をご覧いただけます。


【電源部】
777ESⅡの目玉は2基の電源トランスです。それに合わせて電源回路も777ESⅡだけの設計となっています。

【ロジック部】
ここもスリーセブンファミリーの中で777ESⅡだけ異なる部分です。メカニズムは先代と同じですが、カセットを挿入した際にテープの弛みを巻き取る機能が追加されています。

【モーター駆動回路】
ブラシ付きモーターを一切使わないのがスリーセブンのメカです。777ESⅡでは駆動用回路の設計が変更されていて、従来の単体トランジスタを用いた駆動から専用ICを用いた駆動となっています。リールモーターの回転動作も先代とは若干異なります。

【アンプ回路】
スリーセブンのアンプは各世代で違います。777ESⅡは左chと右chで独立したオペアンプで増幅する点が特徴です。コンデンサも隅から隅までオーディオ用で統一され、三代目でも気合いが入っています。

【メーター・キャリブレーション関係】
普通、メーター調整用のトリマーが左右で1個ずつあるだけですが、777ESⅡは信号レベルを3つの範囲に分けて、それぞれで調整できるようになっています。(先代は2つの範囲)細かいセグメントと正確さが売りであるスリーセブンのメーターです。

【メカニズム】
スリーセブン専用のメカです。先代と殆ど同じですが、ハブ駆動軸は777ESⅡだけ違います。軸の先端が金属製となり、回転時の軸の振れが少なくなってより安定性が増しています。

【デッキの底部カバーを開けた状態】
【】

 



メカニズム動作音

  • カセットホルダ開閉
  • 停止→再生→停止
  • 早送り・巻戻し

 

参考周波数特性

画像にマウスオン(タップ)すると周波数軸が線形に変わります。

【TYPEⅠ】RECORDING THE MASTERS (現行テープ)



※ヘッドの状態やデッキの調整状態など個体差により、必ずしも同じ測定結果にはなりません。あくまで参考程度にお願いします。

 

撮影に協力してくださった方
・埼玉県 キクチ様(2023年2月撮影)

 

 

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