概説
1978年(昭和53年)ごろのデッキです。メタルテープが間もなく登場する頃で、FeCrテープが最上位ランクだった時代の末期です。FeCrテープには手動のテープセレクタが必要ですが、CT-700はCrO₂テープに限り自動で切替えする仕様となっています。
さて、CT-700の特徴は言わずもがな3つのメーター。通常のメーター2つに加え、スイッチで機能を切り替えることができるメーターを搭載。特に録音時で役に立つメーターとなっています。
1つはバイアスメーター。2ヘッドなので録音同時モニターはできませんが、録音中にヘッドに流れているバイアス電流を測定してメーターに表示。BIASつまみを動かすとしっかり連動します。普通ならツマミの角度で判断すると思いますが、メーターを見て%単位で管理できるというものです。しかしこの機能に関してはそこまで実用的ではないようにも思います。(一部のマニアには受けるかも…?)
もう1つはダイナミックメーター。仕組みが少し難しいですが、瞬間的な信号レベルを表示しつつ、高域成分に関しては触れ方を大きくします。磁気テープは周波数が高くなるほど録音レベルの限界が低下しますが、例えば-10dBや-15dBと言ったレベルはメーターではなかなか確認が難しいです。そこで高域成分だけ大きく振らせて、例えば-10dBの信号を0dBで振らせるといった具合です。周波数によって補正具合が変化し、高い周波数になるほど補正量が増える設計となっています。
3つのメーターは非常に個性的でCT-700を象徴する装備ですが、全体的なデザイン性も良いです。メカ部分はカセットを直接装着するタイプで、再生中のカセットの見映えがとても良いです。また透明なカバーも付いているので、閉めておけば埃からヘッドを守る事ができます。大きなインジケーターも分かりやすくてGOODです。
また筐体は高さがあって実機を見ると体感的に大きく見えます。一つ一つの操作部分もサイズが大きく、操作性は意外と優れています。手の大きい方ほど操作性を実感していただけるかも…?
録再ヘッドは安心のフェライト系で、今回紹介しているCT-700でも摩耗は全く見られません。またフェライトヘッドというと音が硬いイメージがありますが、そうでもなく割と普通な音がします。なんとなくですがTEACのフェライトヘッド搭載機に雰囲気が近いです。TEACのデッキもフェライトヘッドなのに音の硬さが割と少ないです。
CT-700の後、3ヘッドのCT-710に変わりますが未だメタルテープには対応せず、CT-720まで待つことになります。
CT-700の構造&搭載機能
ヘッド | 2ヘッド方式(録音/再生:フェライトソリッドヘッド) |
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メカニズムの駆動 |
機械式 |
キャプスタンの回転 | DCサーボモーター |
テープの走行方式 | ワンウェイ・シングルキャプスタン |
カセットホルダの開閉 | カバーのみ(カセットを直接装着するタイプ) |
スタビライザー | なし |
テープセレクター | 手動 (FeCrテープ対応) |
ノイズリダクション | ドルビーB |
ドルビーHX-Pro | なし |
選曲機能 | なし |
メーター | 針式メーター (0dB=160nWb/m) |
ライン入力 | RCA端子1系統,マイク入力 |
ライン出力 | RCA端子1系統(ボリュームで可変) |
キャリブレーション機能 | バイアス調整のみ |
カウンター | 機械式3ディジットカウンター |
その他の機能 |
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CT-700の特徴
◎3連メーターの強烈な個性
◎カセットホルダレスで見映えが良い
○摩耗に強いフェライトヘッドを搭載
○バイアス調整が可能(当時のデッキでは少数派)
○3つ目のメーターでより瞬間的なピークレベルを確認できる
△整備の難易度は高め(すべてワイヤラッピング)
録音サンプル
テープ:RECORDING THE MASTERS
ノイズリダクションOFF
音源:Nash Music Library
【フュージョン・ロック】容量53.2MB
96kHz-24bitのためデータ容量が多くなっています。ご注意ください。
外観の詳細画像
デッキの内部
オープン・ザ・キャビネット
サムネイル画像をクリックすると拡大画像をご覧いただけます。
デッキの分解画像
サムネイル画像をクリックすると拡大画像をご覧いただけます。
参考周波数特性
【TYPEⅠ】RECORDING THE MASTERS (現行テープ)
【TYPEⅡ】TDK SA (1978年・二代目)
【TYPEⅢ】DENON DX5 (1978年)
【TYPEⅢ】SONY DUAD (1978年・二代目)
※ヘッドの状態やデッキの調整状態など個体差により、必ずしも同じ測定結果にはなりません。あくまで参考程度にお願いします。
YouTube動画でも紹介しました
撮影に協力してくださった方
・山口県「JapaFett」さん (2023年9月)