西村音響店

Pioneer CT-1000

ページ作成日:2025/12/21


 

概説

 

 

CT-1000の構造&搭載機能

ヘッド 3ヘッド方式(録音/再生:ユニクリスタルフェライト)
メカニズムの駆動 フェザータッチ式(ソレノイド駆動)
キャプスタンの回転 PLLサーボモーター・ベルトドライブ
テープの走行方式 クローズドループデュアルキャプスタン
カセットホルダの開閉 カセットホルダレス・ダイレクトイン方式
スタビライザー なし
テープセレクター 半自動(TypeⅠ/TypeⅡは自動切換、FeCrは手動切替)
ノイズリダクション ドルビーB
ドルビーHX-Pro なし
選曲機能 なし
メーター アナログVUメーター(ピークインジケータ付き)
ライン入力 RCA端子2系統+マイク入力
ライン出力 RCA端子2系統
キャリブレーション機能 録音感度キャリブレーション(400Hz信号)
カウンター 機械式
その他の機能
  • 録音レベルリミッター
  • メモリーストップ
  • ピッチコントロール

 

CT-1000の特徴

◎パイオニア初の3ヘッド高級機
◎ノッチが刻まれているユニークなボリューム
○カセットホルダが無いタイプ
○輪郭がカッチリした音質
○フェザータッチ式メカ操作
○録音感度キャリブレーション可
○MPXフィルタ入り切り可能
△制御用のトランジスタが壊れやすく、しかも絶版品
△テープを駆動するアイドラーゴムの交換が難しい

 

関連機種

  • CT-800(同世代の下位機種)
  • CT-700(↑同上)
  • CT-A1(メカ構造に共通点が多い)

 

 



 

音質サンプル

テープ:RTM
ノイズリダクションOFF
音源:Nash Music Library

【フュージョン・ロック】96kHz-24bit 容量53.0MB

—–

【フュージョン・ロック】★他機で録音したテープ 録音デッキ:TEAC C-3 48kHz-24bit 容量34.4MB

無圧縮音源ファイルのためデータ容量が多くなっています。ご注意ください。

 

外観の詳細画像

サムネイル画像をクリックすると拡大画像をご覧いただけます。

【前面左側】
’70年代のパイオニア製正立型デッキで印象が強い、カセットホルダレスのメカ。下位機種はメカ全体を覆うシャッター式でしたが、CT-1000はヘッド部分のフラップカバーになっています。
【前面右側】
下位機種よりも操作部の数が多くなっており、よりメカメカしさを醸し出しています。
【ピッチコントロール・電源SW】
’70年代後期~’80年代初頭の高級機にはピッチコントロールがよく付いています。電源スイッチはトグル式で、これも同時期にラインナップされたデッキとは一風変わった部分です。
【CrO₂ポジション自動切換】
クロームテープの検出孔を認識する機能がついており、自動でイコライザやバイアスがセットされます。下位機種にも同機能が付いていますが、CT-1000は手動でもCrO₂ポジションに入れられる点が異なります。(ノーマルテープにCrO₂用のバイアス電流を流せる)
【メカ操作ボタン】
フェザータッチ式で、操作感はガチャメカながらメカ動作は電気的に行う、ロジックメカへの過渡期に多い設計です。CT-800では横にレバーを動かす操作形態でしたが、その正体はこのようなフェザータッチ操作です。
【カセットを装着する様子】
【機械式カウンター】
メモリーストップSWをONにすると巻戻しが0000で自動停止します。さらに巻戻しと再生を同時に押下しておくと、0000まで巻戻し後に自動再生ができます。
【メーター・インジケータ】
文字盤にdBと書いてありますが挙動はVUメーターです。下位機種にはVUとPEAKを切替えできたり、エキストラなメーターを追加するという変態要素がありましたが、CT-1000は王道にVUメーターのみです。インジケータは、ピークレベル、録音、CrO₂ポジション、ドルビーNRの表示です。
【ボリューム】
これは画像では伝わらない要素ですが、回すとゴリゴリとした感触があります。ノッチが刻まれている様で、どれくらい回したかが直感で分かるようになっています。必要性の有無は別として、なかなか面白いギミックです。
【セレクタースイッチ類】
ポーズレバーは、再生や録音を押下した状態のまま、テープの走行/停止を操作できるものです。CrO₂テープは自動で切り替わりますが、手動でも切り替えが可能です。FeCrは必ず手動切り替えになります。MPXフィルタはこの時代は強制ONになる機種が多いですが、CT-1000はON/OFFできます。
【録音感度キャリブレーション】
400Hzのテストトーンを使って録音感度を補正できます。TEST 400HzのスイッチをONにするとテストトーンが出力され、OUTPUTレベルが固定されます。
【ヘッド部分】
ユニクリスタルフェライトヘッドです。超弩級デッキCT-A1の前期型にも搭載されています。フェライト系らしい硬めでキレのある音質が特徴です。CT-1000は少しドンシャリ目な音質に調整されています。

 

デッキの内部

オープン・ザ・キャビネット

画像にマウスオン(タップ)してください。

 

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【電源トランス】
【電源回路】
【メカ駆動回路】
メカを電気的に駆動するため、そのための回路が必要になります。ガチャメカのデッキには無かった回路です。いわゆるロジックメカの最初期は完全なディスクリート回路で制御しており、どこかのトランジスタが不調になった時の故障探究に苦労するのが定番です。思いもよらぬ変な動作をする事もあります。
【】
【再生ヘッドアンプ】
再生ヘッドの配線がこの基板モジュールに直接ワイヤラッピングされています。メカを取り外す時は配線よりも基板ごと外してしまった方が楽です。回路構成としてはバイポーラトランジスタによるシンプルな増幅回路と見られます。
【再生フラットアンプ】
再生アンプがもう1回路あります。フラットアンプと呼ばれる部分ですが、後年のデッキで言う2段目~3段目の増幅回路でしょうか。うっすら写っている再生レベルのゲイン調整トリマーとの関わりがが強そうな回路です。
【ドルビーNR回路】
完全同一な基板モジュールを4つ実装しています。回路を細かい単位で基板モジュール化しているのが、’70年代後期のパイオニアの特徴です。同一の基板のため、故障時は入れ替えて検証することも容易です。ドルビーNRの動作特性を調整するトリマーもあります。
【ラインアンプ回路】
この回路で肝となるのが、パイオニア独自のカセットデッキアンプICです。このICに必要な増幅回路がセットになっています。主にはライン入出力の増幅で使われます。オペアンプがまだ普及していない頃に、アンプICを先んじて実装しています。
【録音イコライザ回路】
可変インダクタ、コンデンサ、抵抗が陳列されている、録音イコライザ回路でよく見られる実装風景です。可変インダクタを調整することで、録音特性を自在にチューニングすることができます。
【バイアス発振回路】
バイアス発振回路はモジュール化されておらず、底部のマザー基板に実装されています。銀色のボックスがオシレータユニットですが、ブラックボックスなため万が一故障した時が大変そうです。
【メーター駆動回路】
【テストトーン発振回路】
【マイクアンプ】
【】



 

デッキの分解画像

 

サムネイル画像をクリックすると拡大画像をご覧いただけます。

【フライホイール】
形状を左右のホイールで互い違いの形状して径を稼いでいます。慣性は半径の二乗に比例するため大径化の効果は大きいです。TEACの1980年代のベルトドライブ高級機でも同じ手法が見られます。
【キャプスタンモーター分解】
PLLサーボを行うモーターで、内部に速度信号を発生させる発電機が入っています。
【PLLサーボ基板】
キャプスタンモーターの制御を行う回路です。クォーツ制御ではないためスピード調整用のトリマーがあります。80年代以降はクォーツ+PLLサーボが主流になりますが、’70年代は非クォーツのPLLサーボが高級機に多いです。
【ピンチローラー交換】
前後にスペーサーを入れて組立てられています。交換後のピンチローラーは微妙に幅が異なるため、スペーサーも変更して対応します。
【アイドラー】
早巻用と再生用で別々のアイドラーになっています。ここの部品交換はさほど難しくありませんが…
【リールモーター側のゴム軸】
このメカで最も厄介なのがこちら。モーターの軸側にゴムが付いており、小径かつ高速回転するため劣化が激しいです。しかも交換するには古いゴムを剥ぎ取り、似たような寸法のゴムを接着させる方法が必要です。CT-800も同様の構造です。
【ヘッドブロック取り外し①】
ぱっと見CT-A1と同じような形状のヘッドブロックで、付け替えが可能なのかもしれません。逆にリボンセンダストヘッドをCT-1000に付けられる可能性もあるという事でしょうか。
【ヘッドブロック取り外し②】
再生中にヘッドブロックが揺れないようにするための硬いスプリングが付いています。頑丈なプライヤーやフックでないと脱着が難しいです。
【ドルビーNR基板の付け替え】
不具合の疑いがあって再生側のドルビーNR基板を入れ替えるところです。下位機種は専用ICが使われているのに対し、CT-1000はディスクリート構成になっています。不具合の原因はハンダ不良で、幸いにも回路の故障ではありませんでした。

 

その他の画像

サムネイル画像をクリックすると拡大画像をご覧いただけます。


MA-Rを装着していますが、CT-1000はメタルテープの録音には対応していません。再生はCrO₂ポジションで可能です。

 

 

動作音

【メカニズム動作音】カセット装着・弛み取り機能→再生→停止→早送り→停止→巻戻し→停止

 

 

参考周波数特性

画像にマウスオン(タップ)すると周波数軸が線形に変わります。

【TYPEⅠ】RTM


【TYPEⅡ】TDK SA (1978年)


【TYPEⅢ】 (年)


テストテープによる再生周波数特性

 

※ヘッドの状態やデッキの調整状態など個体差により、必ずしも同じ測定結果にはなりません。あくまで参考程度にお願いします。

 

YouTube動画でも紹介しました

 

 

これまでの作業実績

2025年11月 福島県 ニイツマ様


 

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