西村音響店

Pioneer CT-A9

ページ作成日:2025/12/21


 

概説

 

 

CT-A9の構造&搭載機能

ヘッド 3ヘッド方式(録音/再生:リボンセンダスト・コンビネーション型)
メカニズムの駆動 ロジックコントロール(3モーター・ベルト駆動・サイレントメカ)
キャプスタンの回転 クォーツPLL・ダイレクトドライブ
テープの走行方式 クローズドループデュアルキャプスタン
カセットホルダの開閉 パワーローディング(オートローディング機能付き)
スタビライザー なし
テープセレクター 自動
ノイズリダクション ドルビーB/C
ドルビーHX-Pro なし
選曲機能 あり
メーター デジタル式
ライン入力 RCA端子1系統
ライン出力 RCA端子1系統
キャリブレーション機能 Auto-BLE(バイアス量3段階から設定可)
カウンター 4ディジット・テープ残量表示
その他の機能
  • テープリターン(ワンタッチでカウンター0000まで巻戻し)

 

CT-A9の特徴

◎Pioneerの中でも屈指の完成度の1台
◎電源にシャントレギュレータ回路搭載
◎デジタルメーターは35セグメントで詳細に表示
◎Pioneer独自のリボンセンダスト搭載
◎ワウフラッター0.018%
◎バイアス電流量を選択できるAuto-BLE
○カセットホルダに置いただけで自動的にクローズ
△メカ構造・回路設計の集積度が高く整備は高難易度()
△シャントレギュレータ搭載のため本体が熱くなりやすい

 

関連機種

 

 



 

音質サンプル

テープ:RTM
ノイズリダクションOFF
音源:Nash Music Library

【フュージョン・ロック】96kHz-24bit 容量52.8MB

—–

【フュージョン・ロック】★他機で録音したテープ 録音デッキ:TEAC C-3 48kHz-24bit 容量34.5MB

無圧縮音源ファイルのためデータ容量が多くなっています。ご注意ください。

 

外観の詳細画像

サムネイル画像をクリックすると拡大画像をご覧いただけます。

【前面左側】
左上にイジェクトボタン、その下に電源スイッチです。少し戸惑いそうな配置です。イジェクトボタンは開くときにしか聞かず、ボタンを押しても閉まりません。元々自動で閉まるギミックを搭載している事と、軽く押せば閉まる動作をするので、必ずしも要るわけではありませんが…
【前面右側】
各種の操作部が集中しています。主要である停止・再生・録音のボタンは、メカのすぐ横に大きく配置されています。マニアックな機能ほど小さいボタンになります。
【カセットホルダ】
電動開閉式ですが、CT-A9はカセットホルダに入れると自動的に閉まります。光センサーが仕込まれており、これによりカセットの挿入を検知しています。AIWAにも同様のギミックを搭載したデッキがありますが、あちらは機械的なスイッチで検知している点が異なります。
【ボリューム】
録音ボリュームは、マスターとプリセットで分かれているタイプです。左右のバランスを微調整したい時や、フェードイン/アウト時に便利なタイプです。出力ボリュームは、RCA出力とヘッドホンで別々のボリュームになっています。別々に調整できるのはカセットデッキ全体で見ても珍しい例です。
【レベルメーター】
35セグメントあり、細かくかつ広範囲のレベルを表示します。ソニーの777並みの分解能かと思います。強いて惜しい点を挙げるのであれば、3本のバーを1セグメントとして点灯するところです。(セグメントが多くあるような演出)
【メンテナンス用フラップドア】
テープ走行部分が手入れしやすいように、手で開くフラップドアが付いています。これにより楽に手入れを行うことができます。後年の機種では廃止されたために、手入れが非常にしづらくなりました。
【録再ヘッド】
Pioneer十八番のリボンセンダストヘッドです。異素材の複合ではなく純粋なセンダストヘッドであり、コアも多積層構造となっています。次期モデルのCT-A9Dではアモルファスヘッドに変更されるため、独自性は若干薄れる流れとなります。
【】

 

デッキの内部

オープン・ザ・キャビネット

画像にマウスオン(タップ)してください。

 

サムネイル画像をクリックすると拡大画像をご覧いただけます。

【電源トランス】
容量48VAの物が付いています。シャントレギュレータは非常に電力を消費するため、トランスも大容量品になっています。
【制御系向け電源回路】
電源トランス近くの大きな電解コンデンサが付いている辺りです。
【システムコントロール回路】
電源トランスの右隣に縦に付いています。ここにあるマイコンはデッキの主要な動作の制御を行うものです。Auto-BLE用のマイコンは別にあります。
【アンプ基板全景】
【シャントレギュレータ回路①】
CT-A9一番のセールスポイントです。再生アンプの専用電源回路として設けられています。通常のシリーズレギュレータ回路と比べて更に高精度な電源供給ができます。その代わり欠点として、常に最大の電流がアイドリングしているため消費電力が多くなります。
【シャントレギュレータ回路②】
通電中は緑色LEDが灯ります。キャビネットの通風孔からでも覗くことができます。
【再生アンプ回路①】
合計で4段の増幅回路構成となっています。初段増幅はデュアルFETを使用し、信号伝送経路に一切コンデンサを介さないDCアンプ・ダイレクトカップリングです。
【再生アンプ回路②】
初段増幅用のデュアルFET、2SK389です。微小な信号を扱うプリアンプにおいて、安定動作を追求するためにシャントレギュレータを搭載したと捉えても差し支え無さそうです。
【アンプ向け電源回路】
再生アンプは先ほどの専用シャントレギュレータですが、それ以外はこちらの回路から電源供給されます。
【Auto-BLE回路】
2つのマイコンがAuto-BLEの制御をします。画像には写っていませんが、テストトーンのレベル調整も出来るようになっており、調整するとBLEの特性が変わります。
【ノイズリダクション回路】
日立製12058NTが使われています。ドルビーB・Cが1回路分入ったICです。時代が進むごとにドルビーICも集積化・小型化が進んでいき、昔のドルビーB単体のICと同じくらいのサイズで、BとCがパッケージングできるようになりました。
【メーター表示回路】
35セグメントというきめ細かいデジタルメーターを実現するために、制御範囲を3つに分割しているようです。そのため調整トリマーの数も多くなっています。特に制御エリアの境目の調整が肝で、誤るとセグメントが2つ同時に点く、もしくは歯抜けしたような光り方をします。
【ライン出力バッファ】
機種によってはドルビーICからライン出力する物もありますが、CT-A9は抜かりなくバッファ回路も搭載しています。
【】



 

デッキの分解画像


 

サムネイル画像をクリックすると拡大画像をご覧いただけます。

【修理前の状態】
ゴムベルトが加水分解してメカが全く動作しない状態でした。
【ベルトが加水分解①】
メカを駆動するベルトプーリーに、溶けたベルトのへどろが付着しています。
【ベルトが加水分解②】
キャプスタンベルトも加水分解していました。こちらは太いベルトのため、なかなか大変な事になっています。ベルトのへどろが大量に付着してしまうと、除去に30分以上要する場合があります。
【ダイレクトドライブユニット】
フライホイールはダイレクトドライブながら互い違いの形状にして質量を稼いでいます。駆動コイルは4極です。
【メカ部品洗浄①】
【メカ部品洗浄②】
【ピンチローラー・アイドラーゴム交換】
【】

 

 

動作音

 

 

参考周波数特性

画像にマウスオン(タップ)すると周波数軸が線形に変わります。

【TYPEⅠ】RTM


【TYPEⅡ】TDK SA (1984年)


【TYPEⅣ】TDK MA-X (1985年)


 

★バイアス電流設定によるAuto-BLEの特性の違いについて

 

※ヘッドの状態やデッキの調整状態など個体差により、必ずしも同じ測定結果にはなりません。あくまで参考程度にお願いします。

 

YouTube動画でも紹介しました

 

 

これまでの作業実績

2025年2月 ジェイジェイ様


 

Return Top