概説
1996年(平成8年)に発売されたドルビーS搭載の低価格ダブルカセットデッキです。
ダブルカセットデッキの基本機能でもある、ダビングやリレー再生はもちろん、2本のテープに同じ音を同時に録音することもできます。そのためにノイズリダクション回路も、DECK-AとDECK-Bでそれぞれ設けられています。(2本同時再生はできません)
メカニズムはTCM-190が搭載されています。廉価機によく使われる製造コストを抑えたメカで、動作レスポンスはTCM-200と比べるとワンテンポ、ツーテンポ遅いです。壊れやすい弱点もあり、信頼性の面でも劣ってしまいます。ここは廉価モデルなので致し方ありません。しかし唯一、上位機種に付いていない機能が、60分テープを約40秒で巻き切ってしまう超高速早送り/巻戻しです。ボタンを2度押すことで超高速モードになります。
録再ヘッドはハードパーマロイです。上位機種のTC-WR965Sにはレーザーアモルファスヘッドが使われているため、ヘッドで差別化がされています。主に音質と周波数特性で差が出ますが、耐摩耗性に関してはそこまで差が無いのかもしれません。実際のところ、レーザーアモルファスでも摩耗しているヘッドを何台か見かけました。
オートキャリブレーション付きで、デッキが自動的にテープの磁気特性に合わせてバイアス調整と録音感度の補正をしてくれます。ドルビーSを使う上でキャリブレーションは欠かせないため、エントリーユーザーにも優しいです。さらに録音レベルの調整まで自動で行ってくれる機能もあり、誰でも簡単に高音質な録音を楽しめます。
ドルビーS搭載デッキは他社ですと大抵は高級機に搭載されていますが、自社でノイズリダクション用のICを作っているからか、低価格のドルビー搭載デッキをラインナップできたのかなとも思います。電子部品も大部分が表面実装部品で構成されていて、基板を表からは見るとガランとしています。
実際に管理人がメカや基板をすべて取り外した状態から組立ててみましたが、驚くほど短時間で組立てが出来てしまいます。デッキの性能はまずまずですが、製造コストを抑える面ではとても考え抜かれていると感じました。
TC-WE805の後は、TC-WE825Sに変わり、さらにTC-WE835Sという機種も存在するようです。恐らく2000年あたりまでドルビーS搭載のダブルカセットデッキを製造していたのかもしれません。
TC-WE805Sの構造&搭載機能
ヘッド | 回転2ヘッド方式((録音/再生:ハードパーマロイ) |
---|---|
メカニズムの駆動 |
ロジック制御 (モーター+ギヤ駆動) |
キャプスタンの回転 | DCサーボモーター |
テープの走行方式 | オートリバース |
カセットホルダの開閉 | 手動 |
スタビライザー | なし |
テープセレクター | 自動 |
ノイズリダクション | ドルビーB/C/S |
ドルビーHX-Pro | あり |
選曲機能 | あり(複数曲スキップ・プログラム再生対応) |
メーター | デジタルピークレベルメーター (0dB=250nWb/m) |
ライン入力 | RCA端子1系統 |
ライン出力 | RCA端子1系統 |
キャリブレーション機能 | オートキャリブレーション |
カウンター | リニア分数カウンター |
その他の機能 |
|
TC-WE805Sの特徴
◎録音の調整をほぼ全自動で行える
○2本同時に同じテープを作れる(2本同時録音)
○低価格のドルビーS搭載デッキ
○超高速の早送り/巻戻し
△メカニズムが壊れやすい
録音サンプル
テープ:RECORDING THE MASTERS
ノイズリダクションOFF
音源:Nash Music Library
【フュージョン・ロック】容量53.0MB
96kHz-24bitのためデータ容量が多くなっています。ご注意ください。
外観の詳細画像
デッキの内部
オープン・ザ・キャビネット
サムネイル画像をクリックすると拡大画像をご覧いただけます。
デッキの分解画像
サムネイル画像をクリックすると拡大画像をご覧いただけます。
オートキャリブレーション信号音
参考周波数特性
【TYPEⅠ】RECORDING THE MASTERS (現行テープ)
【TYPEⅡ】SONY XⅡ (1993年)
【TYPEⅣ】SONY ESⅣ (1979年)
テストテープによる再生周波数特性
※ヘッドの状態やデッキの調整状態など個体差により、必ずしも同じ測定結果にはなりません。あくまで参考程度にお願いします。
YouTube動画でも紹介しました
撮影に協力してくださった方
・神奈川県「リッチー」さん (2023年10月)