僕の愛読書・阿部美春 著『カセットデッキ』◆この1冊から本質を学ぶ

 

皆さん、こんにちは。こんばんは。西村音響店の西村です。

いつも音響店のブログを見てくださり、ありがとうございます。


 

 今回は、本のご紹介です。恐らくこの本が無ければ、このブログの内容が薄っぺらいものになっていたことでしょう。

 

 日本放送出版協会から出版された、阿部美春 著『カセットデッキ』という専門書です。

 昭和55年当時の定価で1,200円ですから、現代で考えると良い値段の本ですね。

 

 カセットデッキ修理自体は、試行錯誤で何とかできそうかもしれません。ですが、僕がこれで修理をやってきた経験では、何とかならないです。

 自動車教習所でも、学科と実技の2つに分かれていますよね。それと同じで、実技の基礎に座学があることによって、修理でもより良い仕上がりになると考えています。

 業種によってはひたすら試行錯誤の方が良い場合もあるかもしれませんが、カセットデッキは座学と実技の両立が大切だと思っています。

 

 

講義中もひたすら読んでいた。

 幸いにも通っている大学の図書館に同じ本が置いてありました。僕が住んでいる市の図書館や、大小さまざまな古本屋を探してみましたが、どこにもありませんでした。ですから、本当に幸運でした。

 その本を借りて、時間さえあれば読み、講義がちょっと退屈だなと思ったら読む。そんな風に熟読していきました。何周したかは曖昧ですが、少なくとも10周はしたと思います。それでも、まだまだ理解しきれていません。

 

 図書館の本ですから、当然ながら返却期限があります。ですから、「一旦返してから、その翌日にまた借りる。」というのは極端ですが、何度も返しては再び借りていました。

 ただ、それですと面倒臭いですし、いずれ大学を卒業したら図書館は利用できなくなってしまいますので、本も読めなくなってしまいます。ですのでこの機に探して購入しました。

 昭和55年(1980年)の出版ですから、40年近く前の書籍になります。さすがに古すぎて入手困難かと思ったら、現代は本当に便利ですね。幸いなことにオークションで簡単に入手できました。

 

この本でカセットデッキのいろはを覚える

 この阿部美春さんの本では、デッキとテープの両方の知識が学べます。

 

「ワウフラッターとは何ぞや?」

「初透磁率とは何ぞや?」

「メタルテープでどのくらいバイアスが必要?」

 

 …様々疑問が出てきますが、この本で解決できます。

 ただ、内容が少し専門的で分かりにくい部分もあるかもしれません。

 ましてや初透磁率というキーワード自体、そうそう使わないと思います。ワウフラッターは覚えておくといいですね。日本語に直せば回転ムラです。音揺れに敏感なピアノ系の曲であれば0.02%台であると、カセットなのに殆ど音揺れを感じません。中には0.01%台という、カセットの中では異次元の性能を持つデッキも存在します。

 

少し話が脱線しました。

 

 この本1冊でカセットテープとデッキの全般は学べますが、特に重要な部分が、カセットデッキの基本構造です。

 カセットデッキは、メカニズム、制御回路、アンプ回路という3つで構成されています。ロジックで動作を制御しているデッキは殆どこの構成です。操作が機械的なものになると、制御回路を省略できるケースもあります。

 大きくこれら3つの要素があって、各要素をさらに細かく分類していくと、やがて小さな部品にたどり着きます。

 例えば、アンプ回路を細かく分類するのであれば、再生アンプ、録音アンプ、バイアス発振器、…という風に、アンプ回路といっても種類があります。さらに再生アンプを分類しようとすると、DCアンプ、ディスクリート構成のアンプ、オペアンプを使った構成のアンプ、…という風に、細分化が可能です。

 

 これまで、この本に助けられたことは言うまでもありません。「なぜカセットテープの録音にはバイアスが必要なのか?」という疑問も、この本で理解できました。ただ、この疑問は少し電磁気学の知識が必要で、他の本からも力を借りましたが、ここまで奥深い疑問も解決できます。

 

 そのほか、基本構造だけでなく、デッキの調整方法まで記載されており、理解しておけばカセットデッキがより面白く感じるようになると思います。

 厳密な調整方法については、その機種の技術資料(サービスマニュアル)を参考にするとよいですが、その前に調整の基本を覚えておくことが必要です。そもそも、基本が分かっていないと技術資料を読んでもわかりません。さらには、技術資料すらに入手できないことも考えられますので、基本をしっかり押さえて応用することも大切だと思います。

 インターネットで検索するとPDFファイルで載っていたりしますが、少しグレーかもしれません。この場で「ネットに落ちてますので使ってください。」とは申し上げにくいです。

 

 僕が特定の機種にこだわらず、新たな機種に挑戦しても修理を行えるのは、カセットデッキの本質を理解しているからこそだと自負しています。

 

カセットを極めたい方はぜひ目を通したい1冊

 カセットデッキとテープに特化したこの本ですが、本当にカセットの事しか書いてありません。

 「カセットが好きで好きでどうしようもない!」という方は、ぜひ読んでほしい1冊です。

 ちなみに、僕はカセットの事については日々勉強中ですが、アンプの事は殆どわかりません。A級?B級?と訊かれても答えられません(苦笑)

 

 古い本ですので、一部書かれていない事項もあります。

 例えば、アモルファスヘッド。1980年の出版ですから、まだアモルファスヘッドは実用化に至っていません。このように記載されています。

 

”第4のコア材として最近,
非晶質(アモルファス)合金が注目されています。”(同書p.76より)

 

この一文から、カセットデッキの技術進歩を読み取ることができますね。

 

 それよりも大変なことが、古いので入手が難しいことです。根気よく探すしかないと思います。現代はインターネットがあるので、自らの足を使って古本屋を回る必要はないでしょう。定期的に検索をかけていれば、そのうち見つかると思います。

 

さいごに

 カセットデッキ・カセットテープについて、ここまで詳細に書いてくださった阿部美春 氏には、心から感謝を申し上げる次第です。ありがとうございます。

 すでに記録媒体のスタンダードではなくなったカセットテープですが、『録音』という文化を広めた歴史的なメディアの1つだと強く思っています。そんなメディアを、今後も風化させずに残していくのが僕の世代だと、改めて感じました。

 

最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

 

出典:昭和55年 日本放送出版協会 阿部美春著『カセットデッキ』

 

あなたはどっちがお好き?<GX-93とGX-Z9000のサイドウッドの違い>

 

皆さん、こんにちは。こんばんは。西村音響店の西村です。

いつも音響店のブログをご覧くださり、ありがとうございます。


 

突然ですが、あなたはどちらの木目がお好きですか?

 

Aを選びましたか?

それともBを選びましたか?

 

AとBの正体は、Aが1986年のAKAI GX-93、Bが1987年のA&D GX-Z9000でした。

両者は形が非常にそっくりですが、細かい部分を見るといくつか相違点があります。

今回はその中の1つである、サイドウッドについてお話しします。


 

いんとろだくしょん

まずは、GX-93とGX-Z9000について、簡単にご紹介しましょう。すでにご存知の方は飛ばしていただいてOKです。

 

発売年はGX-93が1986年、GX-Z9000が1987年です。

両者とも、3ヘッド構成で、キャプスタンの回転にはクォーツロックを採用した、赤井電機のフラッグシップモデルです。さらに、ノイズリダクションにはdbx搭載をしており、カセットテープの限界能力を超えた録音が可能です。

下位モデルには、GX-73とGX-Z7000がラインナップされました。こちらは、クォーツロック、dbx、サイドウッドが省略されて、中間(ミドル)クラスの位置づけです。

 

1987年に、赤井電機と三菱電機のダイアトーンブランドと組んだ、A&Dブランドが誕生します。これによって、今までAKAIブランドとして生産されてきたGX-93は、A&DブランドのGX-Z9000へと名を改めることになりました。

極論ではありますが、ブランド名を変えただけのマイナーチェンジに留まっていることを読み取れば、この頃から既に業績が苦しい状況になっていたかもしれません。最終的には倒産してしまいました。

 

仮に、次のモデルである1988年のGX-Z9100からA&Dとなれば、とても切りがよいです。しかし、GX-93の生産中にブランド名が変わるという展開になりました。

もし、ダイアトーンと組まなかったら、マイナーチェンジをしたとしてもGX-93EX?になっていたかもしれませんね。

 

参考:実際、海外向けのGX-Z9100は、AKAIブランドのGX-95として展開されました。

 

93と9000を比べてみる。

さて、ここからが本題です。

GX-93とGX-Z9000は形が非常によく似ています。似いますが、細かい部分を見ると相違点があります。

 

例えば、GX-93ではライン出力のボリューム調整が可能なのに対し、GX-Z9000では不可能である点が挙げられます。さらに見えない部分ですと電子部品も違います。

最もわかりやすいのは、ブランドのロゴですけどね。『AKAI』と『A&D』、だれがどう見ても違いが判るはずです。

 

 

もう一つ、目に見える部分での差が、サイドウッドです。木目まで差がある点は、僕も意外でした。

先輩のGX-93の方が、少し色が淡く、木目がはっきりとしています。一方、後輩のGX-Z9000は、色が少し濃いめの焦げ茶で、木目は控えめです。

 

もう一度、写真で比べてみましょう。下段にGX-Z9000、上段にGX-93を重ねて写真を撮影しています。

 

いかがでしょうか。

 

どちらの木目がお好きかは、好みが分かれるところであります。ちなみに、僕はGX-93の方が好みです。ただ、機種はGX-Z9000の方が好きなんです。

『A&D』のロゴが捨てがたいという理由があって、機種で選ぶならGX-Z9000ですが、ウッドはGX-93がよいという…我がまま言ってすみません。

 

今度は違う視点からの写真で比べてみましょう。左側にGX-93、右側にGX-Z9000を隣り合わせで配置しました。

ちょうど、本体を上から眺めた時の光景です。サイドウッドの細長い面ですが、ここでも木目の差がはっきり見てとれると思います。

少しGX-93の方が派手な印象があるかもしれません。落ち着いた模様がお好みでしたらGX-Z9000の方がいいですね。

 

最後は、ツーショットで比べてみましょう。

画像をクリックすると拡大画像を表示できますので、よーく見比べてくださいね。

写真が少し暗い影響もあると思いますが、遠くからだと、木目の差は分かりにくいかもしれません。

でも、木目だけに限らず、ブランドロゴの違いだけでも印象が違ってきませんか?

 

個人的には金色のエンブレムになっている『A&D』ほうがデザイン面でお気に入りですが、『AKAI』も老舗感が出ていて捨てがたいです。

 

2種類のサイドウッド、2種類のエンブレム、見比べて皆さんはどちらがお好きでしょうか?

もじお時間がありましたら、下のアンケートで教えていただくと嬉しいです。

 

他にも見えない部分で差があります

GX-93とGX-Z9000は、他にも電子部品に違いがあるなど、見えない部分にも差があります。

例えば、違いの1つに電解コンデンサーがあります。GX-93は耐圧16Vなのに、GX-Z9000では耐圧50Vになっており、両者では若干音質が違うと思われます。

もちろん、音の感じ方には個人差がありますが、僕が聴いた印象ではGX-Z9000の方が太い音のように感じました。耐圧が高いほど電流の流れが良くなりますので、その影響ではないかと考えています。

 

もう一つ違いを挙げるのであれば、ヘッドホンのボリュームを回すと、GX-93ではライン出力も調節されるところですね。

40年くらい前のデッキは、ボリュームでライン出力を調整できるものが多くありますが、皆さんはいかがですか? 「ボリュームで調整できた方が便利!」という方も見えれば、「別に固定でも不便ない。」という方も見えると思います。

ライン出力の調整が必要かどうかによっても、GX-93とGX-Z9000の選択が分かれるところかもしれません。

 

下位機種のGX-73とGX-Z7000ではありますが、違いを動画で解説してみました。



 

さいごに

今回ご紹介した、AKAI GX-93とA&D GX-Z9000は、形はほぼ同じでブランド名が変わるという、他には恐らく無い展開になったデッキです。

ブランドが変わるというと、トリオがKENWOODに変わったという例がありますが、A&Dは2社の合同ブランドですから珍しい部類に入るのではないかと思います。

摩耗知らずのGXヘッドを受け継いできた赤井電機ですが、年々苦しい状況になっていたことでしょう。それでも、他社が同じような形状の録再ヘッドを採用するなか、独自のGXヘッドを貫いたところには、流石テープデッキの老舗だと感じます。

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。