ビクターDD-5◆はじめての機種を修理するときに意識していること

 

こんにちは。西村音響店でございます。

今回のテーマは、ジャンク品カセットデッキの修理です。修理の様子を紹介するブログも良いですが、少し変わった視点でお話しします。

 

「はじめての機種を修理するとき、何に気を付けたらいいの?」

 

お客様からデッキをお預かりして修理していると、未経験の機種でご依頼いただくことがあります。

もちろん大歓迎です。新しいデッキに触れると良い刺激になりますし、勉強になります。

 

今回は、はじめての機種を修理するときに、いつも意識していることをご紹介します。すべてのデッキに言える、いわゆる心構えのようなお話です。

自分で修理したいという方は、はじめての機種が殆どだと思います。ぜひ、今回の内容が参考になれば幸いです。

 

修理するデッキはこちら。

Victor DD-5(1980年製)

定価59,800円ながら、音揺れの少なさは10万円クラス並みという、少々異端なデッキです。

ワウフラッターは0.021%。しかも、シングルキャプスタンで、です。

 

 

メカの構造を推測する。

いきなり分解してしまうと、組立ての時に後悔することになります。まずはデッキを色々操作してみて、動作音や部品の動きから、構造を推測します。

例えば、テープの操作ボタンを押すと、何かしらの動作音が聞こえてきます。

動作音から、ヘッドを上昇させる動作、ブレーキを解除する動作を、どのように行っているかを見ることができます。

大きく2つのパターンに分けられます。

ボタンを押したときに、「ガチャンッ!」「ダンッ!」という大きな音を発したら、ソレノイドを使っているタイプです。

小さく「ウィーン」という音を発したら、モーターで作動を行っているタイプです。

メカニズムが固着している場合でも判別可能です。再生ボタンを押してもまったく音がしなければ、ソレノイドのタイプ。「ウィーン」という音がすれば、モーターのタイプです。


 

動作音をチェックした後は、部品の動きを見ます。
例えば、ソレノイドの動きを観察してみましょう。

 

再生ボタンを押すと、

一瞬両方のソレノイドが動いた後、右側だけすぐに戻る。

 

一時停止ボタンを押すと、

両方下がったまま。

 

巻戻しと早送りは、

左側だけ動く。

これらの情報から、左側はブレーキの解除、右側はヘッドの上昇とピンチローラーの作動を兼用していることがわかります。

 

テープの操作ボタンを色々押してみると、メカニズムの構造がわかるような情報が出てきます。

ここでのポイントは、がちゃがちゃ弄ってみることです。弄って予習しておくだけでも、作業効率が変わってきます。

 

 

メカが一発で外れないときは、一旦固定する。

メカニズムを降ろす作業は、カセットデッキを修理するうえで必須な工程の1つです。ところが、取り外す作業をしていると、基板やほかの部品と干渉して外れないことがあります。

「よし、外れる」と思いきや、ヘッドの配線(矢印の部分)が引っかかり、外れませんでした。

そのような時は、もう一度メカニズムを固定します。デッキによっては、上下逆さまにする必要があるためです。

 

今回の場合、ヘッドの配線が底部を潜らせており、逆さまにして配線を引っ張り出す必要がありました。

底部を開けて作業を行う必要がなくとも、デッキを降ろしている最中以外は固定しておいた方がよいです。うっかりデッキを傾けてメカニズムがずるずると動き、どこかに当たってしまう可能性も否定できません。

カセットデッキの中でも、メカニズムは最も精密な部分です。衝撃はできるだけ避けたいところです。

安全第一で、外れなかったら一旦固定する癖をつけています。

『急がば回れ』です。

 

 

分解する前に、写真、動画、マジックで記録する。

ご自身で修理をしている方にとっては、当たり前の事かもしれません。ただ、たかが記録の作業とはいえども、幾つか押さえておきたいポイントがあります。

 

例えば、配線を基板から外すときです。後でどこに繋がっていたか判るように写真を撮ります。基板全体を写すのはあまり良くありません。

何処にどのコネクタを接続すればよいのか、わからなくなってしまいます。

意外に怖いのは、ピンボケです。手前側ははっきり見えるけど、奥側はぼやけて見えないとなってしまっては問題です。

黄色で囲んだ部分を拡大してみましょう。

ピンボケになっていて配線の色が良くわからず、最終的に配線の長さで推定したこともありました。こんなリスキーな手法は極力避けたいです。

写真家のように拘る必要はありません。ただ、基板の文字や部品が、一目ではっきりわかるように写真を撮ることは必要です。

 

僕が普段から行っている撮り方は、コネクタとその周辺だけ写す方法です。例えば、このように撮ります。

まるで囲んだ配線を外そうとする場合、その周辺にある目印となるものも一緒に写します。

近くにLINE INの端子があるので、これなら一目で場所が判ります。

 

 

写真や動画だけでも間に合いますが、それでも分からなくなったとき、マジックで付けた印がお守りになります。

特に、配線を取り外す作業でお守りが効いてきます。

再び同じ場所の画像です。見ていただくと、端子の根元のあたりに緑の点がついています。マーカーで付けた印です。配線の方にも同じ色で印をつけてあります。

なおかつ、写真にも印が写っているので、99%間違えることはありません。

実際に「あれ?どこやっけ?」という状況になったことがあります。その時は、配線についたカールの仕方で見分けていました。ひやひやします。リスクが高いのでお勧めできません。

 

配線の接続がわからなくなってしまうと、かなり焦ります。

メカニズムを外す程度であれば、それほど深刻にはなりません。問題は、基板を取り外すときです。

間違って配線を接続すると、何か焦げ付いた臭いがしたり、煙が上がったり、液晶が全部表示されたり…

場合によっては取り返しのつかないことになります。もちろん経験済みです。というよりも、トラウマと言った方が近いですね。

 

 

1つ部品を取り付けたら、手で動かしてみる。

はじめての機種は、意図せず組立ミスをすることが多いです。早くミスに気付けるように、1つ1つの部品を確認しながら進めます。

 

今回は、残り部品1つのタイミングで、組立ミスが発覚しました。

ソレノイドを手で動かしても、ヘッドが上下しません。正確には、ヘッドが上がったままになってしまった状態です。

 

このような時は、もう一度分解です。

せっかく組み立てたのに…という気持ちが強くなって、つい油をスプレーしたくなります。しかし、小手先技で直すと、またすぐに動かなくなってしまいます。

 

ちなみに、ヘッドが動かなかった原因は、ソレノイドの取り付け位置が少しずれていたためでした。

矢印のネジがソレノイドを固定しているネジです。これを緩めると、ソレノイド本体を上下にずらすことができます。DD-5に限らず、多くのデッキで可能です。

 

 

確信がつくまで電源ボタンは押さない。

電源ボタンを押す前には、配線の接続忘れや間違いがないか、何度も確認をします。

分解前に撮影した写真、コネクタや基板につけておいた印など、記録しておいたものと照らし合わせます。「よし!行ける!」と確信がつくまで、何度も確認です。

 

特に気を付けたいのは、同じ大きさ(ピン数)のコネクタが複数ある時。

やろうと思えば、この2つを差し替えることもできます。

もし差し替えたら…(怖くて出来ません)

 

間違えてデッキを修理不能にしてしまうことが、最も怖いです。

ナカミチの超弩級のデッキは、10回くらい確認しました。

電源ボタンを押すとき、鼓動が1.5倍くらい早くなっていたことは忘れられません。

 

 

まとめ

特定機種の修理方法を覚えるのではなく、修理の基本を心得ておけば、未経験のデッキでも攻略しやすいと思います。算数でいえば、四則演算のしかたを身に着けておくということです。

今回は、初めての機種に挑戦する場合に焦点をあてましたが、やったことのある機種でも油断大敵です。うっかりミスが怖いですね。ですので、いつでも初心を忘れず作業をしています。

 

過去に修理したデッキにAKAIやSONYが多いので、この2社が得意と思われるかもしれませんが、そうではありません。どのデッキでもWelcomeです。

難易度は関係ありません。直すか?直さないか?です。

 

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