【カセットデッキ】クローズドループ・デュアルキャプスタンとは?


 

 こんにちは、こんばんは。西村音響店の西村です。

 カセットデッキの基礎を学ぶ「カセットデッキのいろは」シリーズ、今回は第18回目でございます。

 前回は、フェリクロームテープについてご紹介いたしました。Typw1、Type2、Type4とあって、なぜType3が無い?というテーマで、そのType3の正体はフェリクロームテープであるというお話でした。1980年代に入ってメタルテープが主流となってしまい、製造面や性能面で不利となったフェリクロームは姿を消していきました。

第17回はこちらからご覧下さい。

 

 さて、今回は比較的高いグレードのカセットデッキによくある”クローズドループ・デュアルキャプスタン”という言葉を取り上げましょう。

 カセットデッキは、3~4万円台の入門・初級クラスから、6~7万の中級クラス、9~10万の高級機、さらには12万以上の超高級機と、バリエーションは様々です。特に高級機は、今日でも人気が依然高く、中古屋やオークションで活発に取引されています。終了間際の競争は熱くなりますね。

 ところで、カタログやスペックなどの情報を見てみると、高級機にはよくクローズドループ・デュアルキャプスタンと書かれているのをよく見かけます。その、クローズドループ・デュアルキャプスタンとは一体何か、ご一緒に見ていきましょう。

 


 

テープの再生をより安定させるため。

 早速ですが、イラストで構造を確認してみましょう。エクセルで簡単にイラストを作ってみました。

 ポイントは、左側(サプライ側)と右側(テイクアップ側)、両方にキャプスタンとピンチローラーがあるところです。キャプスタンは両方とも同じ方向に回転していて、再生の際には両方ともピンチローラーを密着させます。

 この方式を採ることで、磁気ヘッドにテープがしっかり密着させることができ、さらには音揺れ(ワウ・フラッター)の低減効果を得ることができます。

 では、なぜクローズドループ・デュアルキャプスタンは、このようなメリットを得ることができるのでしょうか。実は、キャプスタンに仕掛けがあります。それは、右側よりも左側のキャプスタンが、ほんの少し直径が小さくなっていること。直径の大きさに僅かに差を与えることで、テープを外側へ引っ張る(張力を与える)かたちになり、磁気ヘッドにしっかりと密着させることができるようになります。

 

 もう少し詳しく解説してみたいと思います。どうして、テープに張力を与えることができるのか。 

 ここで自転車を例に挙げてみましょう。同じ速さで漕いだとき、26インチと27インチではどちらが速く走れるでしょうか。

 

 

 答えは27インチ。
 タイヤが大きい分、1回転で進める距離は長くなりますね。

 

 これをキャプスタンに当てはめてみましょう。先ほど、左側の方は直径がほんの少し小さいとご紹介したので、左側を26インチ、右側を27インチと想像してみて下さい。

 キャプスタンは常に同じ速さで回転していますが、左側は直径が小さいので、一回転で送れるテープの長さは右側よりも短いです。つまり、左側の方がテープを送る速度が僅かに遅いということになります。すると、テープは向かって左側へ引っ張られる形になり、シワシワになった紙をぴんと伸ばすように、張力を与えることができるのです。ぴんと伸ばされたテープはヘッドにしっかり密着でき、良い音質を得ることができます。

 

 

クローズドループ・デュアルキャプスタンは欠点もあるの?

 さすが高級機だけあって、美味しいメリットをいただけるクローズドループ・デュアルキャプスタン。しかし残念ながらメリットだけでなく、デメリットもあります。

 そのデメリットは、テープの送り方がとても緻密なため、テープが薄い120分テープや状態の悪いテープでは、走行トラブルを起こしやすいこと。安定したテープの走行を行うには、テープがキャプスタンとピンチローラーに、しっかりと密着されていることが求められます。密着力が低下すると、本来真っ直ぐテープが送られているはずが、急に蛇行し始めて音が周期的に籠ったり、テープに傷をつけてしまったりするなどの原因になってしまいます。

 そういった場合は、かえって構造が簡単なシングルキャプスタン方式のデッキがおすすめです。多少密着力が低下しても、テープに傷がついてしまう心配は少なくなります。

 もう1つのデメリットがあります。それはメンテナンスです。特に調整が難しく、テープが真っ直ぐ平行に送ることができるように調整をする必要があります。これをテープパス調整と呼び、左側のピンチローラーの位置を動かすことで、テープパスを調整することができます。ただし、この調整作業にはミラーカセットという特殊なテープが必要で難易度の高い作業になります。

 ミラーカセット無しでも、頑張ればある程度までは調整可能ですが、正確に調整したいのであれば、ミラーカセットを使うのが最善です。テープパスがずれてしまうと、テープが斜めに引っ張られるので、蛇行する原因になります。さらに、左側の回転に抵抗をかけるバックテンションなども安定走行には欠かせない要素であるなど、複数の要素が合わさってクローズドループ・デュアルキャプスタンの効果を発揮することができるのです。

 

 

 

まとめ

 いかがでしたでしょうか。クローズドループ・デュアルキャプスタンが採用される理由が、お分かりいただけたら幸いです。高級モデルをたくさん持っているのでしたら、必然的に同方式を採用したデッキが多くを占めていると思います。

 僕がカセットデッキに興味を持ちだした当初、デュアルキャプスタンではない初級モデルをよく使っていましたが、だんだんと高級モデルに手を出すようになって、今では殆どデュアルキャプスタンのデッキです。やっぱりピアノソロの曲には、クローズドループ・デュアルキャプスタンですね。

 最後に、予備知識をお一つ。デュアルキャプスタンには、「クローズドループ」の他にもう一つ同じデュアルキャプスタンの仲間があります。それは「バイディクショナル」。これはオートリバースのことを指します。バイディクショナル・デュアルキャプスタンは、テープを送る方向を切り替えるために、左側と右側のキャプスタンで回転方向が違います。

 デュアルキャプスタンというと厳密には二種類あるんですが、バイディクショナルという言葉はあまり聞かないので、デュアルキャプスタンと言ったらクローズドループの事が通じると思います。オートリバースは、キャプスタンは2つなんだけど、再生中は1つのキャプスタンしか使わないから、ある種シングルキャプスタンの仲間と捉えることもできでしまうので、ちょっと微妙なところですね。

 

 

ということで、今回はクローズドループ・デュアルキャプスタンのお話でした。

最後までお付き合いいただきありがとうございました。