西村音響店

純金もどきのカセットテープ◆カッコいいけど気になる中身は?

純金もどきのカセットテープ◆カッコいいけど気になる中身は?

みなさん、こんにちは。西村音響店でございます。

今回は、カナダ製の純金で作られたようなカセットテープのお話です。

以前にアメリカのATR Magnetics社のクロームテープをご紹介しましたが、同じタイミングでカナダも調べておりました。

カナダにも未だにテープを生産している企業があり、カセットテープでアメリカ大陸が賑わっているなぁと感じます。

 

さて、気になる黄金のカセットテープですが、一体何者でしょうか!?一緒に見ていきましょう。

 


 

目を疑う黄金のハーフ

ATR Magnetics社のクロームテープを輸入するついでに、ほかにも周辺にテープを販売しているところはないか探しておりました。するとカナダにあるじゃないですか!

そして商品の1つに、この純金もどきのカセットテープがあったという次第です。

デザインはご覧の通り。

純金でもなく、金メッキでもなく、普通のプラスチックに色を塗っただけだと思います。しかしこれほどまでに美しい金色に仕上げられているとは、目を疑ってしまいます。

 

金色テープに合わせたケースもセットになっています。ただし、インデックスカードは付属していません。

自分でカスタマイズすることをメインにして販売している感じで、単品では最低限のモノが付属するだけです。インデックスカードや、ラベルシールは、自分でデザインして注文します。

価格はCA$5.50で、およそ450円。ただし注意しなければならないのが、この価格はハーフのみの値段であることです。テープの値段は別で追加されます。

今回は往復50分にしたので、+CA$0.50。最終価格は1本CA$6.00、およそ500円でした。テープの長さは自分で選べます。最大で往復124分まで選択できますが、124分のテープって…

最小は0分です。つまりテープ無し。その次は往復1分(片道30秒)です。

 

 

金があるならプラチナもある

もう一本、こちらも目を疑うような美しい色をしています。プラチナのカセットテープです。

価格はハーフのみでCA$5.00、およそ410円。金よりも少し安めです。

こちらも例によって、インデックスカードとラベルシールは付属しません。テープの長さも自分で選択します。長めに往復100分にしてみました。昔は国産で100分テープが売られてましたね。

100分のテープ価格はCA$2.10。ちょっと割高です。もしかしたら、120分のような薄いテープになっているのかもしれません。

最終価格はCA$7.10で、580円ほどでした。

 

この映り具合を見ていただければ、光沢の凄さが伺えると思います。

ただ1点、欠点があります。それは指紋が付きやすいこと。眼鏡拭きなどで拭いてあげないといけませんね。指紋が目立つカセットテープって、なかなか珍しいのではないでしょうか。

 

 

気になるテープの性能は?

デザインはこれ以上説明するまでもありません。しかし、気になるのはテープの性能や音質です。

今回は2台のデッキ(A&D GX-Z7100EV・SONY TC-K333ESJ)を使って、じっくり見ていきましょう。どちらのデッキも、性能チェックはキャリブレーション機能を使った方法と、ホワイトノイズを使った方法の2種類で行います。

 

A&D GX-Z7100EV

このデッキでは、LEVEL・BIASのツマミを±0にすると、マクセルUDⅠに調整が合うようになっています。

 

これを踏まえて、金色テープでキャリブレーションしてみましょう。

BIASのツマミは、ほぼ最小の位置になりました。かなり浅くする必要があるようです。なんとか合ったという感じでしょうか。

でも、これはこれでOKです。

なぜOKかというと、BIASのツマミを動かしてもレベルが変動しないためです。これは、テープに合ったバイアスが掛かっているということを表しています。

逆にBIASのツマミを動かすとレベルまで一緒に変動してしまう場合は、バイアス不足、もしくはバイアスが多すぎることになります。

 

では、往年のテープから最も近い性格のものを探してみましょう。

みなさん、どのテープだと思いますか?

TDKのAD? SONYのHF? マクセルのUD?

 

僕の持っている中で探してみたところ、TDKのDがそっくりな性格でした。

Dでキャリブレーションしてみると、このような感じ。

ツマミの位置が非常に近いです。バイアスはほぼ最小。

となれば、テープのグレートとしては、LN(ローノイズ)に相当するでしょう。

 

最後にホワイトノイズを録音して、特性を調べてみましょう。最も正確が似ていたDと比べてみます。

グラフの描き方もそっくりです。10~20kHzが少し凹んでいるのが特徴的ですね。

 

 

SONY TC-K333ESJ

次は録音イコライザー(EQ)調整ができるデッキです。

セッティングは、録音EQを【NORMAL】にセットし、LEVEL・BIASのツマミを±0にするとHF-Sに合うようになっています。

 

では先ほどと同じように、キャリブレーションをしてみます。

すると、今度はHF-Sに近いセッティングに。

HF-Sよりも若干バイアスが深めになりました。

ちなみにDはどんなセッティングになるのか?

バイアスが浅めになりました。GX-Z7100EVではDが最も性格が似ていたのに、TC-K333ESJではHF-Sの方が近いという、ちょっと分からない状況になっています。

もし、金テープがHF-S相当の能力を持っていれば、LHグレード、音楽用テープとして認めてもよいのですが…

 

録音EQが切換えできるということで、【LOW】にセットした場合でもキャリブレーションしてみました。

【LOW】でも【NORMAL】でも、▼に合います。どっちを選べばよいか迷うところですが、聞いた感じでは「LOW」の方が良さそうです。

迷ったときはこの曲を録音して決めます。どちらの方がハイハットが良く聞こえますか?

 
【EQ: LOW】

【EQ: NORMAL】

 

この曲がチェックに非常に有効な曲として、こちらの記事でご紹介しています。

調整がずれると、ドルビー録音ですぐさま音に違和感が出るので便利です。しかも無料で使えます。

 

実際に録音した音を聞いてみる

いくらデジタルデータで性能を語っても、最終的には人間の耳で聴きますから、実際に聴いて良いか良くないかを決めましょう。

幾つかのジャンルを録音してみました。

A&D GX-Z7100EV

ジャズ系(ドルビーC録音・約40秒)

ロック系(ドルビーB録音・約1分半)

テクノ系(ドルビーB録音・約1分半)

交響曲(ドルビーB録音・約1分半)

 

SONY TC-K333ESJ

ジャズ系(ドルビーC録音・約40秒)

ロック系(ドルビーB録音・約1分半)

テクノ系(ドルビーB録音・約1分半)

テクノ系(ドルビーB録音・約1分半)

 

電子楽器の音はちょっと苦しい感じでしょうか。音の輪郭が甘いような印象を受けます。交響曲については、このテープに限らずノーマルテープのヒスノイズが目立ちやすいです。ドルビーBでは少し厳しそうなのでドルビーCは必要ですね。

ロックが最もバランスが良さそうです。音源は載せていませんが、ボーカル入りの曲も行けそうです。高音域が強い曲でなければ、使い道はあると思います。上手いこと、ノイズリダクションを使ってあげることが、録音でのポイントになるでしょう。

デザインの派手さはあっても、テープが駄目で使い道なしだったら、ただのお洒落小道具になってしまいます。金、銀にとどまらず、色々なハーフのデザインを楽しむのもよいですが、やはり何かしら曲を録音できるくらいの音質は欲しいところです。

 

 

今回のまとめ

今回のテープはどう評価すればよいか難しいところです。性能はTDKのDテープ相当ということで、高性能・高音質とは少し離れている印象です。デザインやお洒落さを重きに楽しむというのが、このテープだと思います。

安堵したのは周波数特性で、バイアスを調整しても録音が変動しないという点は嬉しい部分です。適切なバイアスがしっかり掛かっている証拠です。

 

今も尚、国内で販売されているテープといえばマクセルのURがありますね。これも、新品で販売されているだけで嬉しいです。ただ、キャリブレーションをしていると、バイアス調整と同時に録音レベルのメーターが動くことがよくあります。

こういった面では、今回のテープも使えなくはないですし、個人的には使いやすいと思います。バイアスがかなり浅めになる部分が気がかりですけどね。

 

金のテープがカセットデッキに入って、リールが回っている様子を眺めながら聞くのは、個人的にはとても斬新な光景に映りました。往年のテープは、基本的には性能や音質重視で、ごっついデザインのテープが多いように感じます。デザイン重視のものもありましたが、少数派です。

海外でこのようなテープが沢山販売されていることから、「洒落を楽しむのがこれからの楽しみ方?」ということを想起させられました。

 

 

関連記事・リンク

 

録音EQの設定で迷ったときに使う曲(外部サイト)

 

ATR Magnetics クロームテープのレビュー

 

 

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