西村音響店

STK5441電源ICの修理 SL-HF3000向けの開発

 

ベータデッキの故障の定番であるSTK5441電源ICの修理ですが、SL-HF900につづき、現在はSL-HF3000向けの開発をしています。

基本となる回路の構成は完了し、いよいよSTK5441を取り外して、
実験用の回路だけで動作をさせます。

このステップでの実験で特に注目するのは、実際に動作をさせてどれくらい電流が流れるか、素子の温度がどれくらい上がるかです。

乾電池などで動かす電子工作などでは、大きな電流が流れないため、素子の温度は、気にする程でもないと思いますが、大きな電流が流れる回路ほど、半導体の発熱量が多くなるため、温度も重要なチェック項目です。

それでは、STK5441の取り外しから、外部の電源装置で動作させるところまでをご紹介します。

 

まずは、こちらがSL-HF3000から取り外した電源部分です。やはりベータプロだけあって回路が複雑なので、消費電力も多いです。ヒートシンクは、SL-HF900と比べてかなり立派なものです。

 

ヒートシンクを取り外し、STK5441の取り外しにかかります。すでに故障していたら、別に気にせず半田を吸い取っても大丈夫ですが、今回は正常なSTK5441ですので、熱で破壊しないように慎重に半田を吸い取ります。

5V用のレギュレーターは適当なところにねじで固定しておきます。ただし、このレギュレータの金属部分は+端子なので、絶縁用のゴムを忘れてはいけません。

 

取り外しに成功しました。まだ単体で正常かどうかは確かめていませんが、正常であれば別の機体で使うことにします。

 

ミノムシクリップで接続するので、導線を出しておきます。赤が+20V、黄色が+12V、白が+9V、黒はGND、緑はカットオフ用の信号です。

 

さて、STK5441を取り外した状態で、電源につなぐと、例の壊れた時の状態と同じになります。12Vと9Vが印加されていない状態です。

 


電源装置を接続しますが、同じ電圧で実験するため、ブリッジダイオードから出力される電圧を測定しておきます。

21.5Vと出ていますので、電源装置の出力電圧も同じに設定します。

 

12Vと9V、それぞれ電圧と電流をモニターするために、計器を接続します。電流は特に重要ですが、電圧も大きな電流が流れたときに、電圧が極端に降下しないかを見ます。

 

半導体の発熱を考慮して、安全のために扇風機を使います。もちろん半導体自体にも保護機能があったりしますが、いきなりの過剰な発熱は危険なので、最初は風で冷却しながら行います。

 

いよいよ通電です。電源OFFの状態で、試作の電源回路に21.5Vを印加します。

すると、LEDとVUメーターが点灯します。電源をONにする前に、電圧をかけないと動作しません。

実際には電源ON時にカットオフ用の信号により、ほぼ同時に電源ICがONになります。最終的にはカットオフ信号で制御させるようにします。

 

電源ONで何も動作していない状態で、入力電流は0.5Aです。今回は大きな電源装置を使っていますが、小さなものだと許容量の半分を使ってしまいます。

ちなみにこの電源装置は、通っている大学からいただいたものです。

 


出力側は、12Vは0.3A程度、9Vは少し多めで0.6Aです。

9Vのほうが負荷が大きいです。

実際に動作も行いました。動画に記録しましたので、ご覧ください。



その後、扇風機を止めて暫く動作させ、素子の温度を確認したところ、12Vはまだ手で触れましたが、9Vは触れないくらいになっていました。やはり9Vは負荷が多いようです。

 

こんな感じで、いよいよ本格的になって来ましたが、この次は映像にノイズが出ないかの確認です。ひとまず、動作だけ無事にできて一安心です。
 

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